不吉な事実
数分後、彼女を良からぬ予感が覆い尽くす。
女、女、女…見渡す限り女学生が闊歩している。
たまに見かけるのはお爺さん、そしてすぐにまた女。
女女女女爺女の割合だろうか。
彼女は信じなかった。
厭、信じたくなかった。
せめて後数分、校舎につくまでは淡い夢に浸っていたかった。
そう、彼女の就任した学校は女子校だったのである。
しかもこの女子校、校門までの坂道が急すぎる。
彼女の額の汗は、彼女のばっちりメイクを徐々に洗い流していった。
高橋弥生は新任教師としての挨拶を全校生徒の前で済ませると、更に2つの不吉な事実に気がついた。
まず、一つ目、女学生の顔面偏差値がとても高い。
自意識過剰まではいかないが、それなりに化粧をして、ファッションにも気を使っている高橋は、化粧っ化の無い高校生の中だったら確実にアイドルの座に座れるだろうと踏んでいた。
しかしだ。
このすっぴん美女ばかりの学校では完全に彼女は霞んでいた。
むしろ、これから毎日のサプリにコラーゲンとセラミドをプラスしないと、到底あの肌の張りには叶わない。
完全なる誤算だった。
そして、二つ目の不吉な事象、教師の平均年齢層が高い。
その平均、想定60歳。
彼女を激しい目眩が襲った。
数分前の輝かしい空想が走馬灯のように頭の中を駆け抜けて行く。
ジェニーズ系の男子生徒ばかりか、残業ロマンスが芽生えるはずの若手男性教師もいないなんて!
高橋弥生は自らモノクロの世界へ旅立った。