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タイトル

作者: 雉白書屋

 今、あなたは一行目を読んでいる。目線を左下に。

 ここは二行目だ。

 三行目を読み、次は四行目だ。

 これが四行目。上の予告は少しややこしいと思いつつ目線を下へ。

 五行目だ。まだ始まったばかり。何が起きるか楽しみだ。

 何がしたいのか、これはどういう話かと考えつつ、この六行目の端まで来た。

 ここは七行目。そろそろ何か起きて欲しい。

 と、八行目。残念、何も起きず。期待が高まる。

 さあ九行目だ。しかし、まだ何も起きず。

 十行目。何も起きず。平穏そのもの。

 そして一行目に移った。

 が、今のは脱字で本当は『十一行目に移った』と書きたかった。

 なんやかんやで十二行目。さあ、いよいよ何かが起きる気がしてきた。

 十三行目。何もなし。

 十四行目。肩すかしか。

 十五行目。今回も何も起きず。

 十六行目。今回も。

 十七行目。何も起きない。退屈だ。

 十八行目。文字数稼ぎ、いや行稼ぎだ。

 十九行目。何もない。まるで無人島の遭難者。もしくは何もない夏休みの日記。

 二十行目。こんなものか。つまらない。離脱しようか。

 二十一行目。他にやりたいことはいくらでもあるんだ。

 二十二行目。おや? 待てよ? おかしい気がするぞ。

 二十三行目。数えてみようか。

 二十四行目。一行ズレている! そう、もう事は起きていたのだ!

 二十六行目。そう、上のが二十五行目だ。十一行目の時にズレが生じたのだ。

 二十七行目。……だからなんなのだ。それがこの話の最大の盛り上がりか?

 二十八行目。だとしたらがっかりだ。ただの失敗じゃないか。

 二十九行目。読むのが苦痛だ。

 三十行目。おっと、もう三十じゃないか。

 三十一行目。ここらでやめようか。

 三十二行目。全然まだまだいけるけども。

 三十三行目。でもどうせ何も起きやしないか。

 三十四行目。いや、きっと何かやってくれるはずだ。

 三十五行目。四十だ、四十行目で何もなければ切ろう。

 三十六行目。でないと時間の無駄だ。損だ。

 三十七行目。いや、べつに大した損ではないか。どうせ短い話だろう。

 三十八行目。そろそろだな。

 三十九行目。さあ、来るぞ。いや、勝手にそう決めただけだけども。

 四十行目。

 四十一行目。本当に何も起きなかったな。もう終わりだ終わり。

 四十二行目。でも話はまだ続くようだ。

 四十三行目。損切りはすべきだ。あ、でも次は

 四十四行目。別に四が並んでいるから不吉とか何か起きるでもなかった。

 四十五行目。嘘でしょ。このまま行くの? いくつまで?

 四十六行目。しんどいなぁ。

 四十七行目。そろそろ何か起こしてよ。今さらな気もするが。

 四十八行目。バアアアアアアアアアアァァァァーン! とでも言ってみる。

 四十九行目。お、次はもう五十か。

 五十行目。この一個、文字がズレるの見返した時、気持ちが悪いなぁ。

 五十一行目。そうそう、間に挟む感じがさ。

 五十二行目。でもなんやかんやここまで来たな。

 五十三行目。どうせなら名言とか俳句とか書いてくれりゃいいのに。

 五十四行目。鳴かぬなら……的なね。

 五十五行目。鳴かぬなら食べてしまえホトトギス的なね。昆虫食だね。

 五十六行目。駄作だね、ホトトギス。

 五十七行目。この話自体も駄作かなホトトギス。

 五十八行目。いやいや、きっと何かあるさ。

 五十九行目。なかったらどうしよう。いや、どうもしないけど。

 六十行目。はい、一個下がるやつ。

 六十一行目。序盤に僅かに抱いていたワクワクはどこへやら。

 六十二行目。どうせこの先も何もないんでしょ?

 六十三行目。いや、すでに何か仕掛けていたり……。

 六十四行目。でも仕掛けはさっき逢ったからなぁ。

 六十五行目。上のは誤字だね。まあ、どうでもいいか。

 六十六行目。また退屈になってきた。ワクワクしたいなぁ。それかゾクッとね。

 六十七行目。実は千行まで続きます。

 六十八行目。とかだったらゾッとしたり。

 六十九行目。まあ、なんでもいいけど。いい感じに終われば。

 七十行目。だからこの一文字下がるの膝がガクンと落ちる感じがして嫌だなぁ。

 七十一行目。いくつあるのだろうか。目が疲れてきたな。

 七十二行目。あれ、そういえば、この文章は誰の声だ?

 七十三行目。作者か? 

 七十四行目。読み手か?

 七十五行目。それとも登場人物なのか?

 七十六行目。でも冒頭に『あなたは』って書いていた気がする。

 七十七行目。やっぱりあった。じゃあこれは読み手の心の声を表しているんだ。

 七十八行目。いや、でも全然自分の思っていることと合ってないよ。

 七十九行目。って今、思ったなら合っていることになる。ややこしや。

 八十行目。またガクンと落ちた。このズレがなぁ。

 八十一行目。でもなんやかんやでここまで来たな。

 八十二行目。さっきも同じ事思った。あれは何行目だ?

 八十三行目。見てきたけど五十二行目だった。

 八十四行目。じゃあ、バアアーンって言ったのは何行目だっけ。

 八十五行目。四十八行目だった。見つけやすかった。

 八十六行目。と、勝手に遊び始めちゃった。本当に何も起きないのかな。

 八十七行目。まあ、ここまで付き合ったからなぁ。

 八十八行目。でもオチの期待が高まっちゃうな。心配もしちゃうな。

 八十九行目。お、次、アレ来るな。

 九十行目。はい、ガクンと落ちた。一文字下がるのやっぱり気持ち悪いなぁ。

 九十一行目。もしかしてこの行を告げるところに何か仕掛けが……。

 九十二行目。どれか『目』が『日』になっているとか。

 九十三行目。別に何もなかった。

 九十四行目。いや、そんなことよりもいよいよ百が近い。終わりの気配だ。

 九十五行目。でも少し寂しいかな。

 九十六行目。でもワクワクするな。

 九十七行目。何が起きるのだろう。

 九十八行目。もうすぐだ……。

 九十九行目。あ、次、次だ!

 百行目。











 何も起きなかった。お終い。一行ずつ丁寧に読んで損したなぁ……。

 ここまで一気に飛ばし読みした人が賢い。それだけ。何もなし。最悪だ。

 


 ……あ、でもなんか自由だ。ここ。



 行から解放されて自由だ! 広々としてまるでここはそう、天国……。

来れて良かったかも。平穏で、何事もなく……。




 あ、なんかこのお話。人の一生みたい。ね。

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