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第三章 千十院智図利 第一話

ここが練習場…広いしデカい(同じ意味やん)!

しかし、こんな広い施設をたった5人の為に使わせてくれるとは…太っ腹だな!

だけど、ここで何をどうすれば良いのかが分からん。「異能」で何かをする事は理解出来るが、俺はまだ「異能」を上手くコントロール出来る気がしない。

だから、暫くは皆がどういう風に訓練をしているのかを見ておくとしよう。


「まずは永依華から!」

「うっさいよ、言われなくてもちゃんとやるから!」

「はいはーい、辛辣御苦労!」

「レヴォルーション…俺はまだ『異能』を上手くコントロール出来ないけど…?」

「安心しな、君は初回で『異能』を使えただろ?

 見ておくと良い…一年生の実力を?」

「は…はい」


一年生…俺より少し先輩になるのか?同じクラスメイトだけど?

俺は永依華さんの「異能」を目に焼き付ける事にした。


「『万物聖美・花の舞』!」


永依華さんの右手に綺麗な光が灯る!

それは鋭い光でありながら、何やら心が落ち着く光でもあった。

その光が…数メートル先にある的に向かって飛んで行く──


「あぁ~!?」

「あ、ごめん!千里君に間違えて飛んで行っちゃった♡」

「『間違えて飛んで行っちゃった♡』じゃないでしょうが!

 途中まで調子が良かったのに、何で終盤で大ミスかましてんすか!?」

「だって、まだ調整が上手く行かないんだもん♡」

「いちいち語尾に『♡』を付けて話すの止めてくれません!?

 会話を続け難くなりますよ!」

「ウチは可愛い天使だよ♡可愛く喋らなきゃキャラ崩壊しちゃうでしょ♡」

「ここぞとばかりに『♡』の猛連呼止めて!

 そりゃ『キャラ崩壊』は避けなきゃいけないコンテンツかもしれませんけど、友人として恥ずかしさが勝ると言うか…」

「恥ずかしがってちゃ人生楽しめないぜ☆『可愛く生きて可愛く死ぬ』、それがウチの人生のモットーだから♡」

「分かりました!でも、何か悩み事があったら俺に言ってくださいね?」

「何で?」

「いいや、特に理由はないです」


キャラ崩壊を怖がる程に過去に何か大きなトラウマを生んだ出来事があったから彼女はこうなってるはずだ。俺の第六感がそう言ってる。

しかし、彼女が今のキャラで限界を感じて、俺に助けを求めて来たら助けてやらねばな?彼女の友人の一人として…


「次、陽炎!」

「俺っちの力…見せてやるっす!」


陽炎さんがそう言い放つと、彼女の体の周りに炎の渦が沢山出現した!

これは、自身の身を守る炎のバリア的なアレか?

しかし、彼女が出現させた炎のバリアの効果はそれだけに留まらなかった!


「飛べ、『灼熱鎌鼬』!」


なんと新たに炎の刃を的に向けて放ったのだ!

ほほう…防御と攻撃を同時に熟すバランスタイプの「異能」なのか…!

この実力で5級戦士とは到底思えない──


「あぁ~!?」

「あ…やっちゃったっす…!」


おいおい、この人も照準合わせるのが苦手傾向にあるの!?

まぁ、一年生だから仕方ないのかもしれないな?

だって、〈革命の神様(変態妖怪さん)〉から「異能」を授かって日が浅い。俺の様にいきなり使える人の方が少ないのかもしれない。

それでもな、制服が焼き焦げになる所でしたけど?


「陽炎さん…制服を焼き焦げにしたら…デコピン…ですからね?」

「ひぃぃっ!?分かったっす!」


よし、これで少しは牽制出来たな?まぁ、悪意があってやった訳じゃないから後で謝っとくか。


「続いて、智図利!」

「五月蝿いのう、『イケメン童貞』が…

 千里殿、これが童の力じゃ!」


このクラスの中で一番精神年齢が高そうな智図利さん。

さてはて、その実力は如何なものか?


「『万物灰塵・弱』!

 これで、目の前の的を全部壊してやるぞ!」


いや、あの…今気付いたんですけど。

智図利さんの前に二人的に向けて攻撃してたはずですよね?


「それなのに

的が一つも

  割れてない!?」

   ~千釜千里 思いの一句~


いやいや、呑気に一句詠んでる場合じゃあねぇ!

何で的が全部無傷で生存してんの、永依華さんも陽炎さんも高威力広範囲の技をぶっぱしてたよね!?照準が合ってないにも程がありまっせ!?


「しれっと一句詠まないの…

 まぁ、信じられないと思うけど永依華と陽炎は高威力広範囲の攻撃が出来るから雑魚専では実力筆頭なんだけど…単体戦になると照準を合わせるのが苦手な傾向があるから滅法弱くなるんだよね?」

「つまり、この訓練を行ったのは…」

「そう、二人がきちんと照準を合わせる事が出来る様に僕が考えた訓練だぜ☆」

「ほほう…ですが、的が一つも割れてないのはある意味奇跡では…?」

「奇跡か…僕には必然に見えるけど?」

「二人に殴られますよ?」


さて、的が健在なのはどうでも良いとして…

「万物灰塵」だっけ?名前から見るに全てを灰にする力みたいだけど…今までの展開通りに進むとしたら、俺に流れ弾が命中するって事!?

その時は俺の「異能」の「万物反転」で位置を瞬間的に移動すれば良いだけか!


「安心せよ千里殿、童は狙った的は外さぬ…!

 的だけではなく、後ろの壁も灰塵にしてくれようぞ!」


うわぁ~…こう言うと本人に殴られそうで怖いけど、中二病を極めた人が言いそうな台詞だね?

でも、彼女は口だけの中二病ではなく、俺の前で実際に強大な力を見せ付けてくれている!これは、俺のお手本になってくれるんじゃないか?

しかし、俺の予想は大きく外れる事になる。


「よし…基本線は見えた!

 あとはこの線をなぞって力を流し込めば…!」


ん?「基本線」…?意味は分からんが、大体分かったぞ?

俺が殺しのイロハを教わった時に似た様な事を頭と体に叩き込まれた覚えがある。

確か…攻撃を当てる事が苦手な戦闘初心者が対象との間合いに入った場合、ある程度の攻撃の延長線を頭で作るとか…

しかし、それを現実世界にはっきりと映し込むとは…

それでは攻撃の動きを相手に見せ付けている様なものなので、当然攻撃は当たらない。

つまりは、現状流れ弾が飛んで来ても安心して対応出来るという事だ、やった!


「レヴォルーション…これで良いのか…?」

「全然だめでぇ~す♪攻撃の線を作ってじゃないと技を発動出来ないのは実戦で大きな枷になるぜぇ~♪」

「いちいち言い方がウザいのう…!仕方ないであろう、童は物理専門の鬼じゃぞ?

 いきなり『異能』を自由自在に使えなど無理難題に決まっておるじゃろう!」

「はいは~い、言い訳乙乙~!」

「ぐぬぬぬ…!!」


アハハ…レヴォルーション、日頃の鬱憤を智図利さんにぶつけて来てますね?

だが、俺にも智図利さんの課題が見えて来た。

簡単な話だ。「異能」を詠唱アリで発動してるだけなので、詠唱ナシで発動出来る様になれば良い!まぁ、俺は戦闘のイロハでそれを成し遂げるのに苦労しなかったが…


「続いて、十盛霊!一年最強の力を見せてやって!」

「はいはい、でも…的だけじゃなくて皆も吹き飛ばすかもだけど…大丈夫?」

「うん、僕の周りに皆を集めるし、それに十盛霊弱いし?」

「ぶん殴りますよ?」


十盛霊さん。俺に一番優しくしてくれた人…いいや、魔神さんだ。

しかし、彼女の内に秘める力は見た目とは皆目真逆なものになっている。

さぁ、先程「一年最強」と言ってたが…彼女の実力は如何なものか?


「『神権行使・魔力増幅』、『破壊再生・体力消化&威力強化』!」


今…「異能」を二つ使わなかったか!?

まさか、レヴォルーションと同じ「異能」複数持ちか?

俺が驚く事を無視して十盛霊さんは的に向かって技を放つ!


「これが、僕の…全力だぁ!!」


彼女は両腕をクロスに振ると、黒い衝撃波が左右合わせて10現れて的を全部壊した!

す…凄い…!これが、「異能」複数持ちの実力…!


「はぁっ…はぁっ…!」

「相変わらず凄い力だね?」

「はい…このくらい…戦士になるには当たり前です…!」

「~…でも、課題は削る体力があまり多くない事かな?

 千里君の様に体力が化け物だったら、僕と並ぶ滅級戦士になれるのにね?」

「先生には敵いませんよ、先生は正真正銘の化け物ですから…はぁっ…」

「でも、一年生ながら千里君と同じ1級戦士の称号を貰えるのは凄い事だよ?」

「ありがとう…ございます…はぁっ…」


あの実力で俺と同じ1級戦士!?

だとしたら一つ上の階級零級戦士はもっと強い人達が勢揃いしてるし、最上級の滅級戦士は更に化け物だという事だ…!

俺は何だか知らない内に、凄い人達が住まう世界に入ってしまったみたいだ。


「最後に千里君、君の実力を皆に見せてくれないかい?」

「良いですが…皆さんに引かれませんかね?」

「大丈夫、十盛霊と千里君以外は弱いし」

「「「何だとこら!?」」」


まぁ、俺が出せる全てを出しますか…!

俺は〈革命の神様〉から受け取った光の数を思い出す…5つだったよな?

つまり、今はその中の一つしか行使出来ない…だが、集中すれば第二の力を引き出せるのではないか…?俺は極限まで集中する!


「『万物反転・位置逆転&骨格出現』…そして…『限界突破・鋭利度上昇』!」


俺は右腕の骨の一部を剣として使いたかったので手首の位置と腕を入れ替えた後に皮膚組織と骨部分を逆転させた。正直痛みで右腕が千切れそうだ!

そして、露出した骨を剣の様に鋭くする為に骨の殺傷能力を限界突破させた。

よし、これで…痛みを取る為に最後にもう一度『限界突破』するぞ!


「『限界突破・硬度無限強化&痛覚耐性無限』!」


よし、これで普通の剣より強い剣を生成する事が出来たぞ!グロテスクだけどね☆

俺は剣と化した右腕を剣の様に横薙ぎし、的だけではなく、後ろの壁も斬り倒した!


「よし…これで相手の弱点を露出させて、自身の体を武器に出来るぞ!」

「凄いね、この場で二つ目の『異能』を解放するとは…

 僕と同じ『異能』複数持ちだったとは…!」

「はい、隠しててすみません…」

「良いんだよ、僕と同じ仲間が増えて良かったよ!」

「そうですか?十盛霊さんは幾つの『異能』を持ってるんですか?」

「僕かい?うぅ~ん…把握してるだけの数を言うと…合計4つあるよ?」


4つ…この人も俺から見ればかなりの化け物だ。

だが、この人よりも強い力を持つ者が少なくとも4人以上は居るのか…!

この世界で生きて行く道中でその強者と出会う事になる日を待つとしよう。


「しかし、骨を剣として使うとは…君はグロテスクな趣味があるのかい?」

「いえいえ、骨が飛び出てるシーンはアサシン時代に飽きる程見たので、趣味ではなく慣れですね?」

「慣れるのは少しおかしい気がするよ?

 だが、『異能』を自由自在に使える者として…三人を導く必要がありそうだね?」

「えぇ、三人にも強くなって欲しい…もう、俺のせいで誰かが死ぬのは御免なので!」

「だけどさ~?いきなり二人みたいに自在には扱えないよぉ~!」

「何故に二人は扱いが上手いっすか!?俺っちにも教えて欲しいっす!」

「童も千里殿の様に強くなりたいぞ!」

「はいはい、順番に教えて行くから待っててね?」

「皆で強くなりましょう!」

「「おー!!」」

「やれやれじゃ…」


さぁて、皆の実力も理解出来たし…これでどういう対応を取れば良いのかも分かった。

この時間を有効に使う為に俺の戦闘のイロハで教えれる範囲で強くしてやろうじゃないか?


「まずは永依華さんと陽炎さんは照準を合わせる事を専門に学んで行きましょう!」

「照準を合わせる…?」

「あぁ、言い方を変えれば『的に攻撃を与える』ですね?

 例えば、俺が智図利さんに水鉄砲を当てる…って感じですね?」

「例えに童を出すでない…」

「まぁ、最初からコンプリートしろとは言いません。

 まずは、大きな的に異能攻撃を当てる練習からしましょう」

「そうっすね☆俺っちの炎の結界と刃を十分に生かせる戦士になりたいっす!」

「あと、陽炎さんは炎の結界の硬度を上げるのと同時に炎の威力も上げましょうか?

 『守りは最大の攻めだ』と俺の…先輩が言ってましたし!」

「うぅっ…!?いきなり要求が多過ぎるっす…」

「それと、永依華さんは光の顕現数を一つから最大六つまで顕現出来る様になりましょう!

 正直な話、たった一つの光の攻撃では相手にとっては避け易い単調な攻撃にしかなりませんし…」

「す…凄いね…?

 たった一回見ただけでウチ達の力の成長の筋を見通すなんて…!」

「えぇ、これでも伊達にアサシンやってた訳ではないので…

 俺がしてきた行為のツケを払う為にも、皆で神様の独占状態のこの世界に人間と…その他の種族の自由を取り戻したいんです!

 だから、皆さんには死んで欲しくない…なので、皆で強くなりたいんです!」

「千里君…ウチも、君には死んで欲しくないからね?

 頑張るよ、ウチは最強だし♡」

「その台詞にも『♡』を付けるんですね…」

「俺っち達の事をそこまで大事にする人間なんて…初めて見たっすよ?

 その姿を見せられたら…本気で強くなる以外に道は残されてないっすよ☆」


そうだ。これで良いんだ。

皆で強くなる事…それが、俺に出来る最大の償いだ。

しかし、この時の俺には一つの悩みがあった。


「智図利さんは…さっき『物理専門の鬼』だと言ってましたが、もしや『異能』の扱いに慣れてないんですか?」

「うっ…五月蝿い五月蝿い!

 童は物理も異能も最強の最強じゃ!

お主の様な天賦の才を持つ者に、童の苦悩は分かるまい!」

「いやいや、俺は貴方にも死んで欲しくないから…」

「戯言を並べるでない!童には分かるぞ、お主は強者にしか興味がない!

 お主の様な戦闘の際に長けてる者に、童の何が分かると言うんじゃ!

 どうせ十盛霊以外の童達に『死んで欲しくない』といった理由も、弱者だから死にそうで、どうでも良いと思っておるから適当にほざいてるだけじゃろう!」

「え…そう言う意味で言った訳では…?」

「それに…童達『鬼族』の宿命をお主は知らぬはずじゃ…!

 童達は、いつも…敗北者なんじゃ!」


智図利さんはそう言うと、訓練場から逃げ去ってしまった。


「あ~ぁ…智図利ちゃん、完全に拗ねちゃってるよ」

「…!」

「どうしたんすか、千里君?」

「いいや、彼女とは一度…話さないといけない事があるみたいだと思って…」

「もしや、彼女を口説き落とす為に作戦を考えてるのかい?」

「ちっ…違うわい!」

「さて、智図利ちゃんの事は後で考えるとして…ウチ達を強くしてよ、師匠の御二方?」

「責任重大だね、千里君?」

「えぇ、俺の実力の見せ所ですね?」


俺は智図利さんの事を頭の隅に置いて永依華さんと陽炎さんの訓練の手伝いに回った。


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