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第二章 最強の異能ファイター 第二話

さてさて、数日前に何の準備もなしに「異能」を使って戦った俺は…

その機転の良さと戦力を買われ、まだ一年生なのに〈革命の神様〉から褒美と昇級を受けた。


「…『1級』…?」

「あぁ、君は僕の二つ下の戦士の階級になったんだよ?」

「『階級』…?」

「あぁ、簡単に説明すると『異能』使いの戦力や希少さとかを鑑みて幾つか段階を分けているんだ。

 一番下は5級から始まって、4級、3級、2級、そして千里君の今の階級の1級、その上が零級、そして僕を含めて3人しか存在しない伝説クラスの化け物の階級…滅級。

 以上が階級の簡単な説明かな?」

「ちなみに、俺以外のクラスメイトの階級は?」

「あぁ、僕と君と違って『異能』複数持ちじゃないから、せいぜい3級でしょ?」

「いつも生徒に貶されてるから立場で仕返ししようとしてるでしょ?」


そうか…その話が誠なら俺はそこそこ強い実力を持っている事になる。

しかし、「異能」複数持ちは本当に希少な存在なんだな?

それも気になる所だが、レヴォルーションレベルの化け物がまだ2人も居るの!?つまり、「異能」所持数が5つ以上確定じゃん!一度で良いからその方とお会いしたいものだよ!


「さて、先日の学園襲撃…いいや、千里君の討伐事件で学園に被害は出なかったから良いけど…君は本当に可哀想な人間だよ」

「いいえ、俺の不始末が祟った因果応報ですよ」

「でも、転入初日に臨時休校になるなんて…君は本当に可哀想な…!?」

「いちいち『可哀想』を連呼するな、ケツからワサビをぶち込むぞ、あぁん?」

「ごめんごめん…

 でも、君が僕達の味方になってくれて良かったよ」

「いいえ、俺の方こそ…俺に第二の人生を迎えるチャンスを与えてくれた…アンタには感謝してもしきれないぜ!」

「ふぅ…でも、僕の事を尊敬はしてないよね?」

「はい。生徒との立場が逆転した教師崩れに向ける敬意は持ち合わせてないから、ね☆」

「しばくぞ、こら?」


さて、俺の腐れ縁のお陰で学生生活が少し遅れてしまったが…今日から俺は「異能」で戦う戦士として生きるんだ!

俺は意気揚々と久し振りに教室に訪れる。


「おう、千里殿!無事で良かったなり!」

「えぇ、俺の『異能』で全員片付けましたよ!」

「へぇ~…俺っちの好感度が爆上がりだぜ~☆」

「皆…千里君は皆のものだよ?独り占めは許せんのだ!」

「はいはい、三人共千里君を好きなのは充分理解出来たけど…

 彼は平穏に学生生活を送りたいはずだ、ドキドキさせる展開はあまり好ましくないぞ?」

「十盛霊さん、気にしなくても大丈夫ですよ」

「君の方こそ、僕達に敬語で話す必要はないぞ?」


敬語で話さなくて良いよ…か。俺は今までの環境が劣悪だったので初対面の人とは敬語でしか話せない。だが、その歴史ともサヨナラしたんだ。ここで変わらなければまた第一の人生と同じ結末を辿る事になる。

俺は精一杯タメ口で話す様に口を動かすが、口が言う事を聞かない!


「まぁ…君が生きて来た環境は僕の口では言い表せない位過酷なものだよね…

 でも、僕等は君の気持ちを理解出来ると思うよ?」

「俺の気持ちを…ですか?」

「あぁ、僕等も神様が嫌いだ…そして、僕等も君と同じ様な経歴を持ってる」

「経歴…と、言うと?」


すると、十盛霊さんは衝撃的な言葉を口にする。


「僕等は全員『人間』ではないんだ!」

「えっ…!?」


にっ…人間ではない!?

つまり、神様…という風格には見えないけど…?

もしや、先日レヴォルーションが明かしてくれた第三勢力「悪魔」以外にも新たな種族が存在しているのか?


「僕は『魔神』だ。でも、君から見れば平凡極まりない凡人だけどさ?」

「童は『鬼』じゃ。昔話でよく出て来る恐ろしい存在の卵じゃ!」

「ウチは『天使』だよ~、翼があるから空を飛べるよぉ~!」

「俺っちは『女神』だよ?」

「へ…へぇ…多種多様な種族が一堂に会してるって事ですね?」

『初対面かつ存在を知らなかった種族が同時に四つも降臨~!?

 つか、こんなレアリティが高い人達と同じ学び舎で過ごして良いのかなぁ~!?』


う…嘘だろ…俺の知識の範囲内では人間と神様しか存在しないはずじゃあなかったのかなぁ?

「鬼」と「天使」は少し現実感があるけど「魔神」と「女神」は現実感が無さ過ぎてその事実に嘘を感じるしか道理がないんですけど?


「これで僕達の告白は終わったけど、君も『人間』以外の特殊な種族なのかい?」

「いやぁ~…俺は普通の人間ですよ?」

「にっ…人間…!?」

「まさか、同じ種族が一人も居ないとは…」

「人間に天使、鬼に魔人に女神、そして教師が悪魔…内容が混濁としてて草が生えるね☆」

「まぁ、全員千里殿の味方じゃ。気に負う事はないぞ!」

「俺っちからもよろしくっす♪」


ま…まぁ、多種多様な事は全然ウェルカムだし…

つーか、気を許す相手を作る事に種族間の壁なんかないものだと思ってる。

だってそうじゃないか?俺と同類の人間にも散々な目に遭って来たじゃないか?

俺は自身が受けて来た凄惨な過去を思い出す。


「おらっ!もっと鳴き声挙げろや!」

「ぐぅっ…ぐはぁっ!?」


立場が上だから、俺が捨て御同然の身分だから

それだけの理由で神様だけではなく、人間にも散々酷い目に遭って来た。

それでも、俺の事を愛する者も居たんだ。


「千里君…大…丈夫?」

「ん?また君か…」


その娘の名は忘れた…いいや、強制的に忘れられた。

名前までは思い出せないけど、その娘は俺に良くしてくれた。


「はい、傷薬?これで少しは痛みは回復するよ?」

「あ…ありがと…」

「千里君はいつも大人に虐められて悔しくないの?」

「悔しいけど、俺を虐めるだけで暴力を与えるのはおかしい話でしょ?

 だから、我慢するしか道はないんだ」

「でも…僕は君が傷付く所を見るのは嫌だよぉ…」

「安心しな、俺は理不尽な暴力には負けない!毎日元気満々な男だぜ!

 それに、君が優しく言葉を投げてくれる事が…一番の幸せな事だからさ?」

「でも、無理は厳禁だよ?」


その時の俺にとって彼女は人生史上の唯一の宝だった。

そして、その時の俺の心に一つの思いが芽生える。


「神を殺すアサシンなんか辞めて、あの子と共に駆け落ちでもしようかな…」

「じゃあ、今から荷造りする?」

「きゃぁぁぁぁ!?」

「女みたいな叫び声上げないでよ、恥ずかしい」

「きっ…聞いてた!?」

「うん。はっきり聞こえたよ?」


そう、俺は神を殺し尽くすアサシンではなく…


「でも、千里君の心の中で現状から脱する思いが芽生えて良かったなり~!」

「あぁ、明日…この町から逃げよう」


普通に愛する人と共に暮らし、普通に働いてお金を稼いで、普通に幸せな日常を送る。

そんな…極々普通の人間として生きる道を見出したんだ。

でも、その願いも思いも叶わなかったな…

俺が駆け落ちを実行しようとした翌日の昼間…


「逃げて…千里く…!?」

「……ぇ…?」


彼女は町の人間に…しかも、俺をよく虐めてた奴に…俺の目の前で…


「あぁん?この阿婆擦れと逃げようとしてたのはお前だったか、千里?」

「丁度良いや、お前はこの町には必要ない!」

「愛人の元へ送ってやるよ!」


その時の俺は…彼女を身勝手な奴等に殺された怒りと、彼女を守る事が出来なかった自身の弱さへの怒りで…


「お前等…もう我慢の限界だ…」


頭が沸騰するくらい怒りで頭が包まれたんだ。

そこからは凄惨なものだったよ?


「自分勝手に生きた上に、他者の幸せを奪った挙句、罪のない人を殺すとはどういう精神してんだよ?

 まぁ、良い…全員俺の為に死んでくれ!」

「ぐへぇ!?」

「ぐふっ!?」

「かぱぁ!?」


俺は怒りの衝動が抑えられず、その町の人間を皆殺しにしてしまった。

思えばそこからだったな?俺が冷血無酷なアサシンとして生きる事になったのは。

でも、今は違う。


「千里君?阿呆な教師がSHRでやって来るよぉ~?」

「あ…はい!」

「ふむ…今日はこやつの力を目視せねばな?」

「俺っちの友達4号だぜ、千里君☆」

「アハハ…皆ハイテンションだね…」


俺の事を受け入れてくれた仲間が居る…新たに守らなければならない仲間が居るんだ。

俺は独りじゃない…レヴォルーションが繋いでくれたこの命…懸命に生きてこれからの人生を紡いで行くんだ!


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