表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/62

第一章 「神」と「人」の思い 第三話

「千釜千里!?」

「俺の事知ってんの!?」

「あの伝説の神専門のアサシン様だとぉ!?」

「そこまで俺は有名人だったのぉ!?」

「なるほど…童はこの男と結ばれる運命じゃな?」

「勝手に結婚宣言しないで、まだ選ぶ権利はあるでしょ!?」

「ふむ…僕達の心強い味方になってくれそうだ」

「味方…そうですね、俺は貴方達に敵意はありません…」


俺は長年溜め込んでいた憎悪をついつい皆の前で顕現させてしまった。


「でも、俺の手を汚しに汚しまくった神の名を騙る奴等には…言葉じゃ表せない敵意と憎悪を感じてます…!」

「おぉ…!?」

『何だこの子…!?さっきまでと纏っていた雰囲気とはまるで違う殺意が籠ったオーラを感じる…!?』


おぉっと、ついつい現役時代のオーラを湧き出してしまったなり…

まぁ、もう金輪際このオーラを出す事はNothingだし…たまには出してても罰は当たらないよね?


「はいはーい、皆も千里君に自己紹介してぇ~!」

「えぇっ!?『自己紹介』って第三者に見せるものなんですか!?」

「それも知らないのね!?」


俺は自身の事を完全完璧なアサシンだと思ったが、思いの外知らない言葉やシチュエーション等々存在しているらしい…良かったぁ~、自意識過剰な所を誰にも見られる事がなくて…


「じゃあ、まずは永依華ちゃんから!」

「下の名前で呼ぶな、気色悪いアラサーのおっさん」

「ぐふっ!?」

『えぇ~…教え子に爽快なディスを入れられる先生を見たのはこれが初めてなんだけど~!?』

「…ごほん、失礼したね千里君?

 ウチは奈野川永依華【なのかわえいか】だよ、よろしくね!」

「あ…はい、よろしくです…」

「何々ぃ~?元気の『げ』の字もないくらい元気がないけど、朝御飯食べてないの?」

「あの…『朝御飯』って何ですか…?」

「えぇっ!?千里君…君…『朝御飯』を知らないのぉ~!?」

「黙ってろアラサっさん!」

「はい…」


アハハ…指導主と教え子の立場が完全に逆転してる気がする…

しかし、「朝御飯」…か。具体的にどういうものなのかが理解出来ないし、想像も付かない。

もしや、俺が知らないだけでこの世界ではメジャーなイベントだったりするのか?


「ねぇねぇ千里君?俺っち山葉陽炎【やまはかげろう】が朝御飯のイロハを教えようか?」

「え…えぇ~っと、朝御飯ってマジでどういう時に登場するものなのかが理解してないんですよね…?」

「大丈夫じゃ…じゃが、お主に一度問いたい…」

「はい?」

「お主は…『食事』というものを知っておるのかや?」


え…し…しょく…じぃ…?

何か頭の奥で答えれそうで答えきれないな…仕方ない、ここは潔く知らない事にしよう!


「し…しょく…じぃ…?

 すみません、分からないです…」

「やはりそうじゃったか…

まぁ、この世界で一二を争う巨大組織〈エリシュオン〉で殺しのイロハしか学んでおらぬ若造ならば、食事を知らぬのも無理はないじゃろうな…」

「アハハ…すみません…」

「おっと、名乗りを挙げておらんかったな?

 童は千十院智図利【せんじゅういんちとり】じゃ、よろしくな?」

「あ…はい、俺の方こそよろしくです…」

「しかし、君は本当に神殺しのアサシンだったとは思えないよ?

 僕達女性の前では照れたままだし、話口調も落ち着き過ぎてるし、おまけに…知らない言葉が多過ぎる…」

「…まぁ、今まで殺しのイロハしか教わりませんでしたし…仕方ない事ではあるかと…」

「『殺しのイロハ』…か。

 君は僕達の大きな力であり味方になる…しかし、君には戦う以前に知らない事が多過ぎて友人として恥ずかしい!」

「いきなり『友人宣言』出て来た!?」

「君とこの場で出会ったという事は、僕達と君は、もう友達さ?」


この人は情に熱い人なんだな(人生の全てを力に集約した戦闘馬鹿の思い)?


「あぁ、僕の名は康弘河十盛霊【やすひろかわともれ】。

 見た目はただの青紫系のJKにしか見えないけど、僕も神様を沢山殺して来たんだぜ☆」

「アハハ…同じ境遇の人と出会えるとは…」

『神様を沢山殺して来た事を堂々と当たり前の様に宣言する人が居たんだ!?

 神殺しって相当なレッテルポイント与えられると思うんですが!?』


アハハ…随分とまぁ個性的な人達が揃ったクラスだな?

しかし、俺がお世話になるこの「学園」…?

ただの一般人が通う学び舎にしては生徒と思わしきこのクラスの人達が纏う雰囲気は全員異様なものだ。分かる…分かるぞ?神殺しの大罪を犯した俺を受け入れてくれたこの学び舎は…


「そうだよ、千里君…

 この学園は、神様の時代を終わらせる為に必要な戦士を育てる事をモットーに作られたんだぜ!」


神様の時代を終わらせる…だと!?

つまり、この学園は俺の様な悲惨な過去を経た人達が集まってるという事か…?

しかし、この世界で神を殺す事もごもっともだが、

「神の時代を終わらせる=神への反逆」だ。

その行為を神様サイドに知られたら神殺しよりも重い罪を背負わされる事になるぞ!

こんなハイリスクノンリターンな事象を起こすのは俺なりの心視点で言うと、かなり緊張するし別の香が香って来るよ?


「さぁ、皆!

 この学園の一年生の新たな仲間、千釜千里君と仲良くしてね!

 彼は自殺寸前まで追い詰められてて…!?」

「人の心の傷を逆撫でする事を言うなぁ!!」

「ぐへぇ~!?」


あらぁ~…永依華さんの上段アッパーアローでレヴォルーションさんが大きく縦に10回回転したぞぉ~?

いやいや、永依華さんは女性だよな?女性がこんなに強い力を出せるとは思えない…

まさか、これがこの学園の生徒の大きな特徴なのか…?


「あぁ、君には既に強大な力が備わってるからイマイチピンと来ないかもしれないけど…

 この学園に通う生徒達は皆、特別な力…言い換えるなら『異能』を手に入れるんだ」

「い…『異能』…ですか?」


「異能」…聞いた事がある。この世界で神様の力と対等な力と言ってた気がする。

しかし、その力を行使するだけではなく、付与する事も出来るとは…この学園、相当な「異能」の使い手が居るな…?


「ただでさえ強力で僕の次に最強の君には必要ないと思うけど、僕も〈革命の神様〉から特別に『異能』を与えられたんだ。

 ここに居る皆には初めて話す事だけど、僕も千里君と同様に昔は神殺しを生業にしていた。僕の汚れきった人生に綺麗な水を流してくれたのは…この学園の長である〈革命の神様〉だよ?」

「〈革命の神様〉…

 すみません、その方の事は全く分からないんですが…?」

「あぁ、知らないのも無理はないさ?だって、学園長の存在を知る者はこの学園の関係者だけ。超重要事項だからね、簡単に部外者に知られると困るCめんどいCかったりE~だからね?」

「真面目に説明出来ぬのか、おっさん?」

「智図利ちゃん、ネタで話してるの分からないかなぁ~?」

「童はネタとやらに疎いのでな。

そもそも、お主のつまらん芸に付き合うつもりもないのじゃ!」

「えぇ~?この学園に入ったばかりの智図利ちゃんはいつも僕にべったりだったじゃないか?」

「童の黒歴史を教室で公開するでないぃー!」

「えぇ?智図利ちゃん、このアラサンの馬鹿のこの人にべったりだったのぉ~?」

「俺っちの頭に情報更新なり~!」

「忘れんか、たわけぇ~!!」


何か…先導者と教え子の立場が逆転した挙句にレヴォルーションさんの事を「黒歴史製造機」みたいな扱いしてるんですけど…

俺に殺しのイロハを叩き込んだ指導員とは訳が違い過ぎて頭の中の「指導する者の固定概念」がゲシュタルト崩壊引き起こしそうなんですけど…


「さぁさぁ、今日は千里君に『異能』を授けたいと思いまぁ~す!」

「いっ…いきなりですか!?」

「君はただでさえ僕等の最強で優秀な味方だけど…

 『今の状態』で戦えば神様に命を狙われる立場になる…だから、神様に気付かれる事なく平和活動を出来る様に『異能』を君に付与しないといけないんだ。

 まぁ、『異能』に関する疑問は沢山あるだろうけど…とりま、君には〈革命の神様〉と面会して『異能』を受け取ってもらう!いいね?」

「は…はい…?」


えぇ~っと…うんうん。いきなり崇高な方と面会しろって…

浴衣を着て寒中水泳する様な高難易度の展開にナチュラルに進展してるんですけどぉ~!?いやいや、そんな初対面な上に御偉い方といきなり一対一で話して来るとか難易度「壊滅級」を遥か昔に超えてるぞ、おい?そんなハイリスクなシチュエーションを汗水一滴も垂らさずにコンプリートしろとか無理難題にも程があるでしょ、下から別の汗が出て来るわ!

そもそも俺は殺しのイロハしか学んでない、故に、確実に、失礼な態度しか取れない自身しかないぞ!


「大丈夫だよ、僕も一緒に行くからさ?」

「生徒達に散々馬鹿にされて教師の見栄と栄誉が消滅した貴方が付いて来てくれても全然安心感が沸かないんですけど?」

「何を言っているんだ、僕は生徒に信頼されてるぞ?」

「いや、明らかにこのクラスの生徒に嫌われ弄られてますよね?

 『ちゃん付け』で呼んだだけで文句を言われ、生徒との立場が完全に逆転した貴方が生徒から信頼されてる要素が何処にも見当たらないんですけど?

 流石の〈革命の神様〉もこの頭ん中お花畑な人の言葉を信じる気も失せるわ!」

「〈革命の神様〉と一緒なら、僕は立派な教師になれるさ?」

「結局他人頼りしてますよね!?そういう所も皆さんに嫌われ弄られる一つの原因になってるんじゃあないですか?

 今からでも遅くないですから教師の在り方を学び直しましょうよ?」

「気にし過ぎは体に毒だぜ☆」

「いや気にしなさ過ぎにも程がありまくりですよ!

 生徒達に嫌われる原因を作り、更に状況を悪化させた張本人は貴方だから!

 俺も少し言い過ぎな所はありますけど!」

「君が僕をいつまでも否定し続けるから、僕の自信がなくなってきたよ」

「俺が貴方の事を否定する事と生徒の信頼低下は何も因果関係はありませんから!

 貴方が頭ん中お花畑ハッピー馬鹿ーにも程があるだけですよ、分かります!?」

「そんなに僕の事を責めないで?」

「こっちのセリフです、そんなにキャラ変を攻めないで!

 勘違いナルシストじゃなくてさっきまでの見た目だけカッコいい普通のレヴォルーションさんに戻って!」

「僕はナルシストじゃあない、完璧で究極な戦闘紳士さ?」

「…何か、皆さんがこの人を毛嫌いする理由が少し分かったかもしれないです」

「うむ、童達もこの阿呆に頭を悩ませておるのじゃ…理解してくれただけで嬉しいのじゃ」


まぁ、レヴォルーションさん改め「頭ん中お花畑ハッピー馬鹿ー」さんの付き添いで俺は〈革命の神様〉と面会し、「異能」を与えられる事になった。


 俺はずっと疑問に思ってた事を頭ん中お花畑ハッピー馬鹿ーさんに聞いてみる。


「なぁ?この学園の存在が関係者以外に知られてないって本当なのか?」

「僕の本性を知った途端敬語からタメ口に変わったね…

 まぁ、そうだぜ。

 この学園は特殊な結界で『在るものが無いもの』になってる。でも、東京ドーム1000個分の広さを持つこの学園の敷地全てを無いものにする〈革命の神様〉は本当に凄い力の持ち主だよね?」

「アンタは俺の前でアンタ自身の事を『最強』って言ってたけど、〈革命の神様〉とアンタはどっちが強いの?」


俺がそう問いを投げると、レヴォルーションは即答でこう答える。


「〈革命の神様〉の力は底が見えないから怖い所はあるけど…僕は『異能』を10個も持ってる。並大抵の戦いでは誰にも負けないぜ☆

 まぁ、〈革命の神様〉と戦っても負ける事はないでしょ?」

「まぁ、自意識だけは最強だと理解しておく」

「止めてよその考え、僕が口だけの弱男みたいに感じ取れるじゃん!」

「俺はアンタと違って神という名のバケモンと散々死闘を繰り返して来た。

 だから分かるんだよ、人間よりも優秀で強い力を持つ者とあまり張り合わない方が良い。

 アンタが最強だか何だが知らんが、俺はアンタみたいに悠々と語った奴がも死んで帰って来た瞬間を何十回も見て来ている…だから、アンタには死んでほしくないんだ」

「何で?」

「生きる理由を失った俺に…生きる理由を与えてくれたから…かな?」

「……フフッ、君は本当に神殺しのアサシンだったのかい?」

「馬鹿言え…もう悪に堕ちた神と人しか殺さないと決めたんだ。

 俺はもう冷血無酷なアサシンじゃないぜ?」


俺はこの人に命を拾われて、心に決めた事がある。

この人が俺に第二の人生を渡してくれた。第一の人生は血と殺しに塗れて残酷なものだったが、第二の人生は…もっと人らしく、アサシンにならない人生で在りたい…そう思ったのだ。

これからは、この世界を本当に不幸にする外道のみを殺す…正義の執行人になると!


「さぁ、ここが〈革命の神様〉の部屋だよ?」


ここが…俺の背丈の十倍はあるであろう大きな鉄の扉の先に〈革命の神様〉が居るのか…

よし、ここまで来たら…後は粉骨砕身だ!

俺は鉄の扉を軽く押す…すると、重そうな扉が自動で少しずつ開いて行く…

それと同時に、俺の体に向かって無数の手が飛んで来る!?


「うわわっ!?」


俺はその手によって部屋の中へ引き摺り込まれた!


「ありゃりゃ~…どうやら、僕と同じで相当気に入られたみたいだ…

 これは、この学年では初めての『異能』複数持ちが生まれそうだ…♪」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ