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第一章 「神」と「人」の思い 第二話

この世界の為に死のうとする俺の目の前に謎の男が現れる。

そいつの見た目は長い銀髪で高身長…俗に言う人生の勝ち組と言わんばかりの風格だった。

だから、俺はその男に敢えて敵意を渾身に籠めた視線を奴に送る。


「おい…何で邪魔すんだよ、おっさん?」

「いやいや、僕は『おっさん』じゃないよ?

 全身ピチピチのお兄さんだよ?」

「いやいや、その齢で『ピチピチのお兄さん』は無理あるだろ?

 痛いおっさんにしか見えないから今すぐその思考止めてくれ」

「はぁ…僕は君達人間とは違う生命体でね…

 人間とは違って長命種なんだよ」


長命種…だと?

つまり、この男も神様なのか!?

おいおい、神様にとって俺達人間は取るに足らない存在だろ?それなのに、このおっさんは俺が自殺しようとしてる所を阻止して来るのかよ…?

だが、今の俺に彼の言葉を聞く余裕はなかった。


「何で邪魔すんだよ…!

 『神様』ってのは、自由に生きる権利も死ぬ権利も…ロクに与えない生き物なんだよな……なぁ…!!」

「おいおい、僕は君から自由を奪いに来たんじゃあない…」

「黙れ…黙れ黙れ…!!」


そう、俺は神様に人生を完膚なきまでに壊された。だから、神様かもしれないそのおっさんの言う事を聞けるはずもなかったんだ。

その状態にまで追い詰められていたのに気付いたのも、また遅すぎたのだ。


「落ち着け、僕は君を…!」

「良いから…その軽い口調を止めろよ、あぁん?

 聞いてるだけで腹立たしくなる…」


しかも、優しく語り掛けているはずのおっさんに無意識の内に、いつも神様に向けている殺気を限界まで込めた視線を移しながら…

その行為が仇となったのであろう…俺の体はそのおっさんに…


「僕に敵意剥き出しの殺気を放つとは…君は本当に可哀想な子だ…」

「……ぇ…?」


体の芯を綺麗に貫かれたんだ。

俺はここで…いいや、この結末は俺が望んだものだ…寧ろ、他人に手伝ってもらえて…逆にハッピーエンドとも取れる展開になったな…俺はその人に突き刺された痛みと温かみを感じながら…意識を闇へ落とした。


 そこからどれだけの時間が経ったのだろう…


「……ん…ぁ…あれ…?」


俺は…死ななかったのか…?

見知らぬ一室で目を覚ましたのだ。

おかしいな…あの時、俺は確実にあのおっさんに体の芯を綺麗に貫かれて死んだはず…

それなのに、貫かれた跡も残ってないし、体にダメージが一切残っていない…これは神は神でも心が綺麗な神業か…?


「おやおや、起きたみたいだね?」

「……っ!!何で…こんな事したんだ…?」


ベッドの上で目覚めた俺の元に現れたのは、高層ビルの屋上で俺の自殺を止めようとした謎のおっさんだった。

何故アイツがここに…?俺の心は疑問でいっぱいになる。


「なぁ…何で俺を殺さずに生かしたんだ?」

「理由は一つだ…君にはこの世界で幸せに生きる権利があるからだよ?」


俺に…この世界で幸せに生きる権利が…ある…

このおっさんは何も分かっちゃいない。神と人を数え切れないくらい殺して来た大量殺戮犯の俺に、今更幸せに生きる権利も使命もない。俺はここで大人しく人生を孤独に終わらせるべきだったんだ。

俺はそのおっさんに俺が思った疑問をぶつける。


「俺に幸せに生きる権利がある…か。

 俺はな、見た目じゃ分からねぇと思うけど…神様と人間を神様の仰せのままに沢山殺して来たんだ」

「ほうほう…君が、この世界で神様も人間も恐れる無慈悲な悪魔と呼ばれていた訳か」

「だからさ…俺の意思じゃねぇ事は十分分かってけどよ…」


その時、俺の中で姿を消していた感情が表に現れる。


「今まで…俺のせいで…死んじまった命の事を考えると…

 そいつらを殺して来た俺が…今更真っ当に生きるなんて…そんな独り善がりで…都合が良過ぎて…自己中にも程があるだろう…な?」


俺の中で死んでいたはずの悲しみと本音がそのおっさんの前で息を吹き返したんだ。

俺の叫びを聞いたおっさんは、俺の体を優しく抱き締めてくれた。


「そうかい…君は今を生きる事に後ろめたさとジレンマを覚えているんだね…?

 でも、そんな事考えなくて良いよ…?」

「……ぇ…?」

「君は殺して来た人達に後悔と謝罪の念をきちんと出してるじゃないか?

 君の殺された人と神様は、君のその叫びで大多数が許してくれるはずだよ?

 君の事を、極悪人とは僕は思えないな?」

「あぁ…あぁ…!」

「君はまだ若い…今からでも十分人生のやり直しは効くはずだよ?

 僕は君の様な可哀想な子供を助ける為に…悪しき神を殺す悪魔として動いているんだ」

「……ぇ…?」


あ…悪魔…?

このおっさんは神様じゃないのか…?いやいや、この世界で長命種であるのは神様だけだ。

悪魔なんて存在するはずもない…もし存在しているとしたら、このおっさんの存在は異質だ。

それこそ、俺達人間より酷い扱いを受けるべき対象になる存在になるのかもしれない…

俺なんかを優しく引き取っている場合じゃないはずだ…このおっさんは、自身の身を危険に晒してまで俺を助けるつもりで居るのか…?


「あぁ、僕の正体を明かしていなかったね…?」

「え…はい…?」


すると、そのおっさんは自身の正体を俺に打ち明けてくれた。


「僕の名はレヴォルーション。神様でも人間でもない…正真正銘の第三の種族である『悪魔』だよ?」

「あ…悪魔…!?」


おいおい、まさかの第三勢力の登場かよ!?

つまり、このおっさんにとっては俺達人間が受けて来た辛さとキツさを共有するつもりがある訳か?

いいや、寧ろ俺はこの人に拾ってもらえて光栄だろうな…この人が居なかったら俺の死んでいた感情が息を吹き返す事もなかっただろうし…


「あぁ、そうだ…君を僕が師範してるクラスメイトを紹介しないと…」

「ク…クラスメイト…?」


事の展開が唐突で急展開過ぎて俺の頭は一瞬フリーズする所だった。


レヴォルーションさんの案内の基、俺はある部屋に連れて行かれた。


「レヴォルーションさん…クラスメイトって…?」

「あぁ、君は『学校』や『教室』の定義を学んで来なかったんだっけ?」

「は…はい…」


そう、先程レヴォルーションさんが言っていた「クラスメイト」という単語を俺は理解出来ていなかった。それも仕方がないだろう…何せ俺はその「学校」にすら通っていなかったのだから…

だから、「クラスメイト」や「学校」、「教室」と言われても全然しっくり来ないんだよな?

まぁ、こんな聖人みたいに優男な人…いいや、聖なる悪魔が担当してるクラスだ。きっと、俺と同じで辛い思いをして来た人間達と暮らせるんだから人生のどん底からは脱せただろう。

俺は「教室」の扉を開けて中に入る。

しかし、俺を待ち受けていたのは想像してた方角とは少しアングルが違う光景だった。


「んお?何々ぃ~?可愛い男の子じゃん?」

「俺っちの興奮度数が段々上がって来たよぉ~?」

「フン…どうせ童達を淫乱な視線でしか見ておらんじゃろう?」

「…いいや、彼はそういう人には見えないぞ、朧君?」

「あ…え~っと…」


てっきり心強い屈強な男が揃いに揃った光景だと思ったが、全員お年頃の女の子じゃ~ん!?どういう態度を取れば良いのか皆目見当も付かないんですけどぉ~?

いやいや、俺は今までアサシンとして育て上げられてきた…だから、女の相手の仕方も分からないのが当たり前だ!つまり、多少冷酷な態度を取っても何も問題はない(問題アリです)!


「さぁさぁ、皆ぁ~?

 このクラスの新たな仲間になる千釜千里君でぇ~す!」

「ど…どうも…はじめまして…」


俺は自己紹介の九割をレヴォルーションさんに取られたので、軽く挨拶をしておいた。

すると、クラスの人達は俺の名前を聞いた途端、俺との間隔をゼロ距離まで詰めて来る!


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