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時を越えた約束 〜精霊剣士の英雄譚〜  作者: 朧月アズ
第4章 『花の都ボリージャ』
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Ep.45 命懸けの試練

 昨日夕食をサヤとウィニと取った時、サヤが真剣な面持ちで提案してきた内容に僕は胸が踊った。

 

 僕が依頼でケレンさんのお店にいた間、サヤはギルドでチギリさんという人に魔術の教えを受けたという。

 サヤはどうやらチギリさんを信頼しているようで、僕達の旅の目的を話したのだとか。


 そこで現実的な指摘を受けたが、それでも尚僕達の覚悟を見たいと言ってくれたのだ。


 おそらく模擬戦になるという。僕も力を磨かなければならない。いい機会に恵まれたと喜んだ。


 ウィニは嫌そうな顔をしていたけど、渋々着いてくるようだ。一応仲間意識はあるみたいで少し関心したよ。





 そうして3人でやってきた冒険者ギルド。

 中に入るとカウンターの近くにサヤが駆け寄っていく。

 どうやら傍に立っているあの人がチギリさんのようだ。

 紫色の外ハネした長い髪に、長い耳に赤い瞳の女性。聞いていた特徴と一致する。


「二人とも! こっちよ!」


 サヤが手を挙げて僕達を呼び、僕はウィニを引き摺って

サヤとチギリさんのところに移動した。



「やあ。ヴァーミ。これから模擬戦をしたい。部屋を借りるが構わないかな?」

「あっ、おはようございます。チギリさん! はい! もちろん構いませんよ!」


 チギリさんは受け付けのヴァーミさんになにやら話しかけて、さっさと先へ行ってしまう。

 

 サヤは僕とウィニに、顔をくいっと行先に向けて、私達も行こうとジェスチャーをして、僕達も慌ててチギリさんの後を追った。




 冒険者ギルドの地下の訓練所をさらに奥へ進み、さらに扉の奥に進むと広い平原に辿り着いた。そう、平原だ。

 屋内のはずなのにかなり広く、動き回ってもまったく問題なさそう。

 

 地面は土で出来ていてまるで本物の野外のようだ。

 よく見ると、景色の部屋の壁があるであろう場所には防御魔術を施していて、激しい戦闘を想定している部屋なのかもしれない。


 それにしてもここで訓練したら、平原で戦闘しているかのような体験ができるのか。凄いなあ。



 

 その部屋の中央にチギリさんは立っていた。

 その佇まいは、静かながらどこか威圧的な気配を漂わせていた。




「師匠! この人が私の幼な――」

「――皆、武器を抜きなさい。」

「っ!」


 僕はちらっと横にいるサヤを見た。その目には動揺が見える。どうしたのだろうか。


「そこの猫耳族の。杖はどうしたのかな?」

「――…………!」


 ウィニがチギリさんの放つ雰囲気に警戒を露わにしている。本能的に危険な存在だと認識しているかのようだ。


 するとチギリさんはウィニの目の前に杖を放り投げる。


「……ないのならこれを使うといい」

「……はい」

 おずおずと杖を拾うウィニ。ウィニがいつもと返事が違う。どうやらかなり恐れているようだ。


 危険を感じるほどの威圧感を放つチギリさんの視線がサヤを貫く。

 

「サヤ。何か勘違いしていたのか? 我は君達の覚悟を見ると言ったのだ。稽古をしてやると言った覚えはないよ。」


「そんな……師匠っ!」

「そんな甘えた決意を覚悟と宣うとは笑止。容易く吹き飛ぶ覚悟など、我がいっそこの場で消し飛ばしてやろう。」


 ――っ!!

 背中にゾクリとする感覚が襲う。これは殺気だ……!

 なんとかしなければ……本当にここで死ぬ事になる!


「さあ、武器を抜きたまえ。……安心するといい。君達の亡骸の処理は我が問題なく隠蔽しよう」

 一切の感情がこもらず淡々と話す様子に不気味さを感じる。


 マズイ……!

 チギリさんは決してここから逃がしてはくれないだろう。一瞬でも背を向けたら僕の命は終わる。


 ――生き残るには戦うしかない!


 奮い立て! 気圧されるなっ! 何も出来ずに死ぬつもりか! クサビ・ヒモロギ!! サヤを、ウィニを守れ!


「――――ッ!」

 僕は自分に喝を入れ、勢いのまま剣を抜いた。

 震える手を必死に抑えながらチギリさん……いや、チギリに剣を向ける。

 

 ――怖い、目の前の相手がたまらなく怖い……!

 でも、立ち向かわなれば!



 チギリの表情は無そのものであったが、一瞬眉が動いた気がした。


「精々見せてくれ。君達の覚悟とやらを!」


 チギリが動いた!

 腕を払ったと同時に発動した火球が襲いかかり、僕は咄嗟に横に飛んで回避した。火球が着弾した場所は爆発を起こし、衝撃と熱が僕に痛みを残す。

 直撃していたら……。くそっ! 迷ってる場合じゃない!


「サヤ! ウィニ! 動け! 死ぬぞっ!」

「……くっ! 師匠っ」

「……!」


 僕があげた声に、二人は弾かれたように動き出した。

 

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