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時を越えた約束 〜精霊剣士の英雄譚〜  作者: 朧月アズ
第6章『聖なる水の都へ』
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Ep.150 開眼のラシード

いつも読んでくださってありがとうございます(*´ω`*)


拙作もついにキリ良く150話目に突入しました!

私が本当に書きたい部分に到達するまではまだしばらくクサビ達は冒険する事になりそうですが、これからも楽しんでいただけたら幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします!




 新しい朝の到来に、時間の経過に伴い徐々に賑やかさが増すエルヴァイナの街。


 僕達は意気揚々とギルドの依頼掲示板の前で依頼内容を吟味していた。




 昨日、サヤと一緒に訪れた馬屋で、一頭の馬と運命的とも言える出会いを経た。


 その後宿で全員集合し、馬を買う旨の相談をしたところ、ウィニとラシードは快諾してくれた。


 馬を買う為には膨大な出費が掛かりその分この街に滞在することになるのだが、馬屋のおじさんのご厚意で馬車を付けてもらえると話すと、ここで馬車を手に入れる事は、ここに長く滞在しても余りある程に、返って元が取れるかもしれないとの結論に至ったのだ。


 そうと決まれば、大事な仲間を迎える為に頑張ってお金を貯めていこうと、僕達は一致団結して今に至るのだった。




 Bランクの依頼を全員で眺める。

 遠出すれば稼ぎの良い依頼や、近場で魔物の群れを討伐するものだったり、やはり討伐系が主になってくるんだな。


 店番とか武器磨きとかしてた時期が懐かしいや。

 それはそれで人の役に立ってたからやり甲斐あったけどね。


「今日は特に緊急性のある依頼は届いてねえようだな、どうする? 別々に稼ぐってのも有りだと思うぜ」


 ラシードによると、今日みたいな大した依頼がない日もざらにあるとかで、そんな時は一人もしくは二組に分かれて別々の依頼をこなす事もあるそうだ。


 必ずしもパーティ揃って活動しなきゃいけない訳じゃないのか。そういう柔軟性も大事なんだね。


「そうだね、じゃあ今日はそれぞれ別の依頼をこなそうか」

「ん! それならわたしはまずは腹ごしらえを――」


 そう言って踵を返して出口に向かおうとするウィニをサヤがむんずと首根っこを掴む。


「こらウィニ! そう言ってサボるつもりでしょ」

「ぬ。さぁやに捕まった。不覚」


 放っておくとすぐ怠けるウィニには誰か着いていた方が良さそうだ。と思っているとサヤが依頼の紙を一枚剥がしてウィニを引き摺ってカウンターへ向かって行く。


「ウィニの事は任せて! じゃ、また宿でねっ」

「じゃあなくさびん、ついでにラシード」


 サヤに引き摺られながら謎のドヤ顔のウィニが小さく手を振りながら消えていった。

 一体どんな気持ちなのか後で聞いてみたい。多分覚えてないだろうけど。


「……騒がしいやっちゃな…………。んで、俺らはどうするよ? 別に行くか?」

「うーん、せっかくだし二人でいこうよ、ラシードと二人で依頼は初めてだし!」


「よっしゃ! なら…………。これとかどうだ?」


 ラシードが掲示板に貼られた依頼の一つを指さす。

 えーと、内容は――――




 ――――新米冒険者達の臨時教官求む


 最近冒険者として登録した新米の面倒を頼みたい。

 新米達は訓練所で自主訓練をしているので、時折彼らに声を掛け、彼らが望めば指南などを頼みたい。


 報酬 時給金貨1枚 依頼者 ドゥーガ・アルトレイ




 なんとドゥーガさん発行の依頼だ。

 Bランクとしては報酬は少なめらしいけど、今日中に終われるなら悪くない気もする。


 どうやらこの依頼は、新人を集めてうんちくを述べる類の依頼ではなく、訓練所に入り浸って教えを乞われれば対応するという、割と自主性に富んだもののようだ。

 こういう依頼もあるんだね。

 

 でも僕もまだまだ未熟な身。誰かにものを教えるなんて務まるかなあ……。不安だ。


 ラシードはそんな僕の背中を叩いて笑い飛ばした。

 小さい事は気にしないラシードらしい思い切りを僕にも分けて欲しいと思う。


「はは! クサビ、そんなビビる事じゃねえよ。いつも通りの動きを見せてやればいいのさ」

「いつも通り……かぁ…………。わかったよ、やってみよう!」


 何事も経験だと自分に叱咤激励して、未知の体験に緊張を覚えながらラシードと共に訓練所に向かった。



 花の都ボリージャのギルドの訓練所は地下にあったが、エルヴァイナの訓練所はギルドの裏手の野外にあった。


 施設としては単純なもので、広い空間に木人が並ぶ近接訓練用と、的をあちこちに配置した遠距離戦闘用、そしておそらく魔術訓練用の特に何もない広い場所があり、目的ごとに区画分けされていた。


 そこで血気盛んに自主訓練に励む冒険者の姿が幾人も見受けられる。

 冒険者を始めたばかりの新米達だ。そのほとんどが僕よりも歳が下のように見える。

 これからの冒険に希望を抱き、新鮮な気持ちで訓練に臨む様子が彼らの表情から見て取れた。



 僕とラシードが教えられるのは専ら近接戦を主体とする冒険者に向けてとなる。魔術師や遠距離主体の冒険者さんには申し訳ないけど力になれないかもしれない。


 とにかく、やれることをやろうと思う。



 僕達は木人が並ぶ区画にやってきた。

 ここだけでも十分な広さがあるので模擬戦も出来そうだ。


 新米冒険者達が木人に向き合って訓練に勤しんでいた。

 新人さんはまだ強化魔術を用いた戦い方を知らないのだろう、ただ闇雲に木剣を木人に打ち込んでいた。



「ラシード……どうしたらいい?」

 集中して訓練しているところに声を掛けるのも忍びなくて、僕はラシードに助け舟を求めた。

 こんな時ラシードならどうするのだろう。


「そうだな……。戦い方を見せてやるだけでも、ひよっこには得るものがあるかもしれねえぞ」


「……というと?」


 首を傾げる僕に、ラシードはニヤリと口角を上げて白い歯を見せる。


「言わずもがな。俺とクサビで模擬戦すんだよ!」


 そう言って僕から距離を取ってハルバードの切っ先を僕に向けて好戦的な笑みを向けてきた。


「……えっ!? ちょ、ちょっとラシード……!?」


 この騒ぎに周りの新人冒険者達が、なんだなんだとザワつきながら集まってきて、物珍しさと期待の視線が集中していた。


「はは! いい感じにギャラリーが増えて来たぜ?」

「ラシード、これを狙ってたの?」

「おうよ! 見て学ぶってやつだぜ!」


 さすがラシード! 冒険者としても人としても先輩だから、やはりこういう時は頼りになるなあ。

 でも熱い視線を感じて恥ずかしいな……。


「それにな、俺はよお…………」


 ラシードからとてつもない戦意の圧力が伝わる。

 そしてハルバードをぐるぐると回転させたあと鋭く構えた。


 そしてラシードの糸目がカッと開眼し、澄んだ青い瞳が僕を見据える。


「お前と手合わせしてみたかったんだよォ!!」


 気合いと共に全身にビリビリと戦意が伝わる。


 ――来る。

 僕は決意の目をラシードに向けて剣を構えるのだった!


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