Ep.100 熾烈
いつも拙作を読んでくださってありがとうございます(*´ω`*)
ついに100話目!
途中、全然読まれなかったら……と心が折れかけた時もありましたが、最近は応援してくださる方も増えてとても励みになっています!!
このまま完結まで突き進みたいと思いますので、よろしければクサビ達の物語を見守って下さると嬉しいです。
今後ともよろしくお願いします( ˙꒳˙ )ゞ
あと、図々しいお願いではありますが、いいねや、ブックマーク、評価など頂けますと私が咽び泣きます。
感想も頂けますと喜びすぎてひっくり返ります。
ひっくり返りながら咽び泣く姿を想像しましたが、これはなかなかヤバい奴です。 なりたい(!?)
サンドワームがウォードさんを狙って大きな体をくねらせながら迫る。
それを無駄のない回避で攻撃を凌いでは反撃し、サンドワームに少しの傷を増やしていた。
それでも致命傷には程遠く楽に勝てる相手ではない。
僕は砂の中に潜ろうとするサンドワームの側面から一気に斬り込んで攻撃に参加した。
強化魔術を腕に練って水平斬りと共に解放する。
僕の斬撃はサンドワームの体を斬り裂くに至るが、あまりの巨体で切断にはとても届かなかった。
斬り裂いた時の手応えがなんだか気持ちが悪い……!
刃がサンドワームの体に滑り込む際に跳ね返るような弾力を感じたのだ。感触でいうなら蛇の革を分厚くしたようなものに近いかもしれない。
サンドワームが砂中に潜ってすぐに激しい振動……。
……来る!
僕は砂を強く踏みしめながらバックステップで飛び退くと、さっきまで僕がいた場所からサンドワームが這い出てきた。
……危なかった。潜ってからの反撃が早いぞ! 狙うなら飛び出てきた時か。
「――おおおぉぉるらァァァ!!」
獅子の如くの雄叫びを上げながらリトさんが大剣を肩に担いだまま突貫してくる!
身の丈程ある刀身を振り回し、反動を上手く活かしながら跳躍。
飛び出ているサンドワームに肉薄するリトさんの大剣が力一杯に振り下ろした!
「らああああー!!」
跳躍して高い位置で振り下ろした大剣がサンドワームの体に深く食い込み、大剣の柄を両手でしっかりと握る逞しい体躯のリトさんが、全体重を載せながらサンドワームの体を縦にえぐりながら重力に従って落下してくる!
――――――ギュアアアアアア!!!
これにはサンドワームも堪らず、紫色の血を流しながら苦痛の叫びを上げる。
リトさんの攻撃力は凄まじい!
大剣を勢い良く引き抜いたリトさんは雄叫びを上げながら正眼に構えて迎え撃つ姿勢だ。
戦闘以外の時は落ち着いた印象のリトさんが、今はまるで狂戦士のような雄々しさだ!
リトさんの雄叫びと強烈な痛手によって、サンドワームの狙いは完全にリトさんに向く。
サンドワームは全身を砂から出して、その巨大な胴体を横なぎに振り抜いてくる!
「――させません!」
そこにミリィさんが後方から魔術障壁を、大剣の腹で受けて防御しようとしているリトさんの前に展開させた!
「うおおおおっ!」
サンドワームの胴体が魔術障壁とリトさんの大剣に阻まれて相手を叩き潰すに至らない。強化魔術で全力で踏ん張りながらサンドワームの攻撃を受け続け、押し合いが始まりサンドワームに隙が出来た。
ミリィさんの絶妙な支援は頼もしい! よし、僕ももう一度攻めるぞ!
その時僕の横をサヤが駆け抜け、ウィニが風魔術で自身を自在に浮かせて移動する。
僕も咄嗟に続いた!
「ウィニ! 私が斬り込むところに叩き込んで!」
「まかせろ」
「……せいっやあ!」
サヤがサンドワームに接近し、垂直斬り上げと一緒にジャンプして落下と同時に垂直斬り降ろし、着地時に体を捻って素早く水平二連回転斬りを放ち、剣閃が十字に光る!
サヤの強力な剣技、十字4連斬だ。以前にグロームゴリアスという魔物を仕留めた時や、僕と模擬戦をした時に使用した技だ。
「さぁや! さがって!」
ウィニの言葉を即座に飛び退くサヤ。その直後ウィニの火属性の熱線ブレイズ・レイが、サヤによって刻まれた十字傷のど真ん中に直撃した!
傷口に直接照射され、体の内側から焼かれて悶えて暴れるサンドワームは、耳をつんざくほどの叫び声を上げて砂中に潜った。
地面の振動が遠ざかる……?
そう思ったその時、サンドワームが僕達から少し離れた位置に顔を出し、大きく仰け反った。
――ウォードさんが鬼気迫る様子で叫んだ!
「いけません! ブレスが来ます! 回避を――――」
――――……ッッ!
サンドワームが大きな口をこちらに向け、全員にサンドブレスを吐き出してきた!
サンドワームが吐き出す砂にはいくつもの岩も含まれる。高速で飛んでくる岩などくらえば一溜りもない……!
僕達は遮二無二その場を離れる。
だが一人逃げ遅れた者がいた……!
風魔術で浮遊していたウィニだ!
ブレスの風圧に煽られて地面に落とされ、取り残されてしまったのだ!
ウィニにサンドブレスで吐き出された岩が迫る……!
「……あっ」
「ウィニーー!」
僕は強化魔術を全開にして飛び出した!
加減もせず勢いのままウィニを攫うように担いで岩の脅威から引き剥がした。
勢い余って砂の上を転がり、倒れる僕とウィニ。
遠くからサヤが呼びかける声が聞こえる。僕ははっとして体を起こした。
「ウィニ! 大丈夫?!」
「…………けほっ……だいじょぶ。ありがとくさびん」
ウィニは砂まみれではあったがどこも怪我をしていないみたいでホッとした。
僕はウィニの前に立ち、サンドワームがいる方を見据える。……かなり距離を取られてしまった。
「この距離は危険です! 散開して包囲するように近づかねば!」
ウォードさんの声に僕達はそれぞれ散開し接近を試みる。
またサンドワームがブレスを放つ前に包囲しなくては!
痛手を追わせているとはいえまだ倒れる気配はない。
手負いの時ほど油断はできない! よく見極めなければ手痛い反撃を受けるかもしれない。
手強い相手を前に剣を握る手に力がこもる。
――戦いはまだ続く。
数時間前、グラド自治領では――
「敵襲! 敵襲ー! 魔物の大軍が接近中!」
街中に危険を知らせる警鐘の音が響き渡り、騒然とした様相に包まれていた。
「市民を首長邸に! 非難誘導を優先しろ!」
「はっ!」
突然現れた魔物の大軍勢。
いつもは見渡す限りの砂の海が、今や眼前に広がるは黒の海。それら全てが魔物だというのか。
うじゃうじゃ出てきやがって……!
一体どうやってこれほどの魔物が潜んでいやがったんだ!?
日頃から哨戒していたはずだというのに……!
「くそ! ウォードが不在のこの時に!」
「若よ、今の指揮官は首長たる若ですぞ! 儂も魔術部隊を率いて前線に出るぞい!」
アルの言う通りだ。軍総司令官であるウォードが居ない今、軍を束ねられるのは俺だけだ。
「急ぎウォード達に伝令を送れ! 行け!」
「直ちに!」
伝令の役目を受けた兵士が走り去っていく。頼むぞ。
「敵は東門から迫っている! 全軍総動員して防衛しろ! 俺も出る!」
「ジーク様が前線に出られては危険でございます!」
前線へ出ようとする俺に、参謀に一人が止めに入る。
「この国難に我が身を惜しめってのか!? 民を守るのが首長たる俺の役目だ! ……いくぞ!」
俺は参謀の静止も聞かず、東門へ急いだ。
東門を出て広い砂漠に布陣し両軍が睨みあう。
突然の魔物の大軍に戸惑い、怖れを抱く者も少なくない。
恐怖は伝染する。ここで恐慌状態に陥る者がでてはならない。
対する魔物は多種多様の魔物がひしめき合い、不揃いで統一感のない、ただ整列しているだけの陣形だ。
だがやはり数が多すぎる。それだけでかなりの脅威だ。
それでも守り切らなければ市民の命が危険にさらされるのだ!
俺は覚悟を決めて、手に良く馴染む自慢の槍を掲げ激を飛ばす。
「――聞け! 同胞達よ! 決して怖れるな! 愛する者の顔を思い出すのだ!」
整列した兵士達の視線が集中する。
「皆の愛する者も故郷もここにあるだろう! 我らが退けばそれらを全て奪われるのだ!」
怖れの色を抱いていた兵士達の瞳に怒りが、そして闘志が宿り出す。
「ただ奪われるのを許すのかッ!」
「「「否ッ!!」」」
「恋人が、家族が! 絶望に沈む顔を見たいのかッ!」
「「「否ッ!!」」」
「ここに臆病者はいるか!!」
「「「否ッ!!」」」
兵士の一人一人に明確な戦意が灯り、その眼差しに恐れの一欠片も残ってはいない。
俺は槍を地面に打ち付け叫ぶ!
「我らはッ!!」
「「「無敵ッ!!」」」
兵士達がそれぞれの武器を地面に打ち付け続ける。それはやがて早くなり、まるで地鳴りのように響くと同時に戦意は最高潮に達する。
俺は高揚して思わずニヤリと不敵に笑いながら槍を前へ振り下ろした。
「――ならば見せてやろう!! 全軍、攻撃開始!」
「「「おおおおおーーー!!!」」」
俺は兵士達と共に戦場となった砂漠を駆け、槍を振り続けた――




