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蛇の毒

 王都の冒険者ギルドで依頼を受ける。

 

 王都周辺の敵は強い。名前を上げたい冒険者がここに来るというのも納得だ。

 都市部の近隣にある森の中は、獰猛な魔物がたくさん生息していた。


「キョウ、上だ!」

「ッ!」


 後ろから聞こえたヒビキの声に従って、上を向く。生い茂る枝葉の中から飛び出してきたのは、木の幹ほどの太さのある巨大な蛇だった。


「キシャアアアアアアア!」


 迫りくる毒牙を避けて、剣を振る。

 刃に抵抗は感じず、蛇の体はあっさりと千切れた。


「へいへーい、今のは危なかったんじゃないのー?」


 頭の後ろに手を回したシュカがぞんざいな口調で煽ってくる。彼女は今回見学。経験不足な俺たちのコーチ役だ。


「クソッ、傲慢の魔剣が手を貸してくれればこんな苦労しねえのに……」


 傲慢の魔剣とは、シュカと戦った時に心を通わすことができたはずだった。

 しかし、どうやらこの魔剣は戦いの最後に剣を手放したことが気に食わなかったらしい。

 「ワシの力を使わん主などいらんわ。貴様などなまくらを使っておけ」と幼い女の子の声で言われた。さすが傲慢の魔剣。心が狭い。


「『稲妻よ、ライトニング』」


 ヒビキの詠唱が響くと、雷が森の中を走り、迫ってきていた蛇を焼いた。これで10匹目。

 王都の冒険者ギルドの最初の依頼は、この蛇、アサルトスネークの討伐だ。目標数は30。

 一体一体は強くないが、毒のある牙で噛まれると厄介だ。

 

「よし、だんだん魔法の狙いも安定してきたぞ」 

「うんうん、やっぱりヒビキは狙いが正確だね。魔法の威力も申し分ない」

「フッ、つまりボクはキョウより強いってことだな」


 ドヤ顔で俺を見てくるヒビキ。ムカつくし、何よりも顔が良いからそれなりに様になってるのが本当にムカつく。女じゃなかったらぶん殴ってた。


「でも、ヒビキは計算外には弱いイメージかな。事前に色んなことを想定できるのはいいことだけど、実戦では仇になるかもね。そういう意味では、土壇場に強いのはキョウ君だろうね」

「俺? ……あれか、魔剣が抜けるからか」


 それは、俺が強いというか傲慢の魔剣が強いだけではないか。


「それもあるけど、気持ちの持ちようだよ。強い敵に立ち向かう気概とか、最後に捻り出すことができる力とか、そういうやつ! 僕好みの闘士だね」

「おおー! なんか凄そうじゃん!」


 なんかそう言われるとやれる気がしてきた! 俺は気合を入れて周囲を探し始めた。

 

「あいつ、やっぱ単純だな」

「でも、ヒビキがキョウ君に褒められた時もあんな感じでしょ? わーい、ってぴょんぴょん跳ねちゃう感じ」

「そ、そんなわけないだろ!」


 

 意外と仲良く話している二人を置いて、俺は森のやや奥まで来ていた。

 

「……と言っても、剣術については二人とも素人だからなあ、習うって言っても限度が」

「シャアアアア!」


 独り言を言いながら進んでいると、背後から特徴的な鳴き声がした。飛んできた蛇を避けて、軽く剣を振る。

 また一匹倒せた、と安堵していると、今度は三体が別方向から襲い掛かってきた。


「うおっ! ちょっと話違くないか!?」


 迫りくる毒牙をなんとか躱すが、最後の一体が俺の左手に嚙みついた。


「……ッ」


 痛みはそこまでない。振りほどいた蛇を地面に叩きつけ、剣でトドメを刺す。


「キョウ、無事かー……ってお前、噛まれたのか!?」


 俺の左手の傷口を見たヒビキが驚きの声をあげる。


「ああ、でもシュカにぶん殴られた時の方が10倍痛かったな」

「いや、そこじゃなくて、毒があるだろ!」

「え? そんなにヤバいのか?」


 あ、言われてみればなんかちょっと腕が痺れてきたかも。俺もしかしたマズい?


「アサルトスネークの毒は普通の人間が食らえば三日以内に治療しないと死ぬって言われてるね。勇者だから痺れるだけで済んでのかな?」

「いや、それ呑気に言ってる場合じゃないだろ! 早く治療……ってこの世界、病院あるのか?」

「ビョーイン? よくわからなけど、王都の教会なら大抵の傷は治るよ。とりあえず、行こうか!」


 教会の場所なら王都を彷徨い歩いた時に把握している。俺たち三人は、アサルトスネークの討伐を一旦中断して王都へと戻った。

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