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王都ブリティア

 到着した王都は活気に溢れていた。道いっぱいの人。休日らしい街は賑わっている。

 俺たちは、慣れない異世界の街をおっかなびっくり歩いていた。


「うーん、冒険者ギルドどっちだっけ? この辺見覚えある気がするんだけど……」

「おいシュカ。お前さっきまでガイド気取りだったじゃねえか! 覚えてねえなら覚えてないって言えよ!」

「キョウ、ここに来るまででもう分かっただろ。シュカの頭は戦い以外からっぽだ。しかも自信だけは無駄にある。確実にトラブルを引き起こすタイプの馬鹿だぞ」


 俺たちの言葉が聞こえているのか聞こえていないのか、シュカはどんどんと前に進んでしまう。


「おいシュカ、ちょっと待てって」


 これでは無駄に歩くだけだと思い、シュカの肩を強めに掴んで止める。俺に急に肩を握られた彼女は、びくりと震えるとこちらに振り返った。


「俺がその辺の人に聞くから、ちょっと止まってろ」


 ややしぶしぶとした様子で、シュカは頷いた。


 

 情報収集なら王都民に聞くのが一番早いだろう。

 大通りで店を出している店主に声をかける。

 

「おっさん、その旨そうな果物はなんて言うんだ?」

「なんだ兄ちゃん、田舎者か? これはピルト。北の方ではよく取れる果物だよ」

「へえ、都会のもんは一回食いたかったんだよ! くれくれ!」

「おう、銅貨2枚な」


 若干高いな、と感じつつも素直に金を出して果物を受け取る。黄色の表面はツヤツヤしていて美味しそうだ。


「それでおっさん、冒険者ギルドに行くにはどっちに行けばいいんだ?」

「ああ? 真逆じゃねえか! 冒険者ギルドはあっち、東だ!」

「はああ!? 俺たちなんのためにこの人混みを歩いてきたんだよ!」


 シュカの阿呆! 隙を見て犬耳いじり倒してやる。


「ハハッ、どうやら本当に田舎者らしいな。やたら可愛い女の子を連れてるもんだから、貴族のお忍びかと思ったぜ」


 やたら可愛い女の子と言われたのが一瞬誰なのか分からなかった。冷静に考えると、確かにヒビキとシュカは可愛い。見た目だけ見れば、だ。


「おいおいおっさん、見る目ねえな。中身をよく観察するんだ。片っ方は脳筋、もう片方は理屈馬鹿だ。どちらにせよ俺になびく様子もない。むしろ腕っぷしと頭の良さでマウント取ってくる始末。コイツらは俺に敬意なんて欠片もないのさ」

「誰が理屈馬鹿だと、お気楽馬鹿」


 ぱん、と後ろから頭をはたかれる。ヒビキが眼鏡の奥から俺を睨んでいた。


「店主、コイツの与太話はまともに聞かなくて結構です。何か話していないとイカれてしまう病気なんです」


 ひどい罵倒文句だ。コイツ、女になってから口に悪さに磨きがかかったんじゃないか?

 

「なんか哀れになってきたな。せっかくの縁だ。ぼったくっちまったお詫びに少しくらいここのことを教えてやろうか?」

「おい、やっぱりぼったのか!? ……まあいいや、それなら騙し取った金の分だけ話を聞かせてくれ」


 店主は気の良い笑みを浮かべると、王都について話し出した。


「王都ブリティアは、騎士の聖地だ。王国の護り手たる彼らは、全員がB級冒険者に相当すると言われている。それから、世界で最も広がっている剣術、フレーゲル剣術の総本山でもあるな」


 店主がチラと見たのは、王都の中心にそびえ立つ立派なお城だ。あれがこの国の王様が暮らす場所か。そして多分、騎士とやらもあそこにいるのだろう。

 

「フレーゲル剣術って俺も使ったぞ! こう、スキルを使うと自然と出るやつだよな!」

「ああ、その通り。王都はこの国において最も剣術に優れた人間が集まる場所だと言えるだろうよ。近接戦闘のプロフェッショナルが集っている。王国内のどこかに魔王からの襲撃があれば、ここから騎士たちが出撃してそれを撃退することになっている」

「っていやいや、そういう堅苦しいことはどうでもよくてさ、ここで一番可愛い女の子とか教えてくれよ」

「ガッハッハ! お前、二人も女の子侍らせておいてまだ欲しがるのか? いいねえ、若者の全能感ってやつは」


 違う、俺が一緒にいるのは美少女詐欺のTSっ娘たちだ。

 そう言いたかったがすんなり納得してくれるとも思えなかったので黙っておく。

 

「王都で一番人気の女性と言えば、姫様だろうな」


 それを語る店主は、どこか誇らしげだった。

 

「姫様?」

「ソフィア様だよ。通称姫聖女。お人形のように美しいお姫様。王族に生まれながら、歴史上他に例を見ないような聖魔法の才能に恵まれた方。この国の英雄で、アイドルさ」


 その名前は、不思議と自分の頭によく残った。


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