間違いだらけの異世界転生
TSっ娘がいっぱい出てきます!
よろしくお願いします!
男子高校生だった俺の人生は、あっけなく終わった。通学路に突っ込んできたトラック。それは俺と幼馴染の体を容易く跳ねた。
「おお、召喚に応えてくださりありがとうございます勇者キョウ様」
どこかの豪華な大広間で、俺は再び目を覚ました。俺の周囲には、フードを被った魔術師のような奴が複数人跪いている。
話しかけてきているのは、長い杖を持った白ひげの爺さんだ。
それだけで、ある程度オタクである俺は状況を理解してしまった。
間違いない。これは勇者召喚の儀。
そして俺は、異世界転生者として召喚されたのだ。
「フッ、いいってことですよ。世界を救うのは俺の役目。そうでしょ?」
「おお……すでに使命を理解しているとは、さすがキョウ様。かつてそんな転生者はおりませんでした」
爺さんの言葉に機嫌を良くしていると、頼んでもいないのに世界観の説明が始まった。
魔神がいてヤバいだとか、特殊なスキルを出現させる転生者を召喚して魔神や魔王の討伐を目指しているだとか、そういう話だ。
「キョウ様には大儀を果たすためにこの魔剣を持っていただきたく思います」
説明の最後に、やたら禍々しい色をした剣を渡された。
「これは?」
「800年前から存在する伝説の魔剣でございます。傲慢の魔剣。かつてこれを抜いたものは、当時最強と謳われた魔王の討伐を成功させました」
おお、いいねそういうの!
テンション上がる。
ウキウキとしながら剣を握ると、途端に脳内に声が響いていた。
『ふむ、お主であればよいだろう。試しにワシを抜いてみるが良い』
言葉に従い、ゆっくりと鞘から剣を引き抜く。
静かな金属音とともに、錆び一つない黒色の刀身が姿を現した。
「ぬ、抜けた!?」
その途端、召喚士たちの間にどよめきが上がった。俺の目の前のじいさんも目を大きく開いている。
「え、なに?」
「…………いえいえいえ、その魔剣は選ばれた者にしか抜けない気難しい武器なので、あっさりと使いこなしてしまったキョウ様に驚いていただけでございます」
鞘から抜けない魔剣?
おい、もしかして俺は無用の長物を押し付けられたのか?
じいさんは誤魔化すように愛想笑いを浮かべ続けている。
こいつら、あんまり信用できないかもな。
そう思った俺は、必要な情報だけ聞いてさっさとここを出ていくことにした。
「それで、俺のパーティーメンバーとかもういたりする?」
この世界の事情はわりとどうでもいい。問題なのは、俺のハーレムパーティーメンバーはいったいどこにいるのかということだ。
異世界転生最大の魅力。
それは、美少女たちとのラブコメディーであると俺は思う。
冒険して女の子を助けたりして最終的に惚れられる。それを繰り返してハーレムを作る。
俺が異世界に来たのは、きっとハーレムを作るためなのだ。
俺の問いに、じいさんは困惑しているようだった。
「は? ……いえ、パーティーメンバーは相性などありますので、勇者様自身で決めていただくのが慣例となっております」
「ああ、なるほど。そういうやつね」
その言葉で、俺は自分がするべきことを理解してしまった。
ハーレムを作るための最初の一歩など、相場が決まっている。
俺が最初にするべきは、美少女奴隷の保護だ。
意気揚々と召喚士たちのもとを後にする。
◇
道を歩きながら、俺はさっきもらった魔剣をもう一度鞘から抜こうとしていた。
「……あれ、抜けない」
一度鞘に戻してから、魔剣はまったく動かなくなってしまった。
……どうしよう、まだクーリングオフで取り換えとかできるかな。でもあの召喚士あんまり信用できなそうだし。
まあ、別に普通の剣も一本もらったから今はいいか。
俺は意識を目的地の方へと向けた。
「勇者様、ようこそおいでくださいました」
目的地――奴隷商人の店に入ると、へらへらと笑う小太りの男が、俺を迎え入れた。奴隷商の店は薄っすらと汚らしい。
奴隷を閉じ込めてある檻のある奥の方は、陰気な雰囲気が漂っていた。
「奴隷を一人買いたい」
「ええ、話は伺っております。戦闘力に優れたものであれば、こちらの男などはいかがでしょうか?」
男が示したのは、ケモ耳の生えた男だった。裸の上半身は筋骨隆々で、たしかに強そうだ。
「いらない。女がいいんだ」
このオッサンは分かっていない。俺が欲しいのはハーレム要員。美少女だ。ロリでも可。責任を持って育てる。
「なるほど……かしこまりました」
奴隷商に案内された先にいたのは、黒髪の痩せた少女だった。
自称美少女ソムリエたる俺にはわかる。
痩せこけているが、その素材は一流だ。
長い黒髪に隠れているが、顔立ちは整っている。
可愛い、というよりは綺麗系だろうか。
細めの目つきに、しゅっとした鼻立ち。ボディラインは綺麗な凹凸を描いている。
極めつけに、胸がかなり大きい。最高だ。
「こ、この子だ……!」
「お気に召したかな? 最近入荷したばかりで、手つかずなので夜の世話にも使えます。少しばかり魔法も使えるらしいです」
「買おう。いくらだ?」
召喚士たちから資金は十分に渡されている。
問題なく支払いを終えて、俺はその奴隷商人のところを後にした。
「……」
奴隷だった少女――俺のハーレム要因第一号は、ずっとうつむいたまま俺についてきていた。纏っていたボロボロのローブを目深にかぶり、目元を見せない。
あまりにも陰気な様子だ。
能天気と評される俺でも流石に気になってしまう。
俺はなるべく優しく彼女に話しかけた。
「なあ、そんなに落ち込むなよ。俺そんなに虐待とかしないから。むしろ丁重に扱うから」
「……はい」
精一杯誠意を籠めて伝えたつもりだったが、少女は俯いてぼそぼそと答えるだけだった。俺の顔を見ようともしない。
結局のところ、俺たちはそれ以上言葉を交わさないままに宿に辿り着くのだった。
宿の部屋に入って人目がなくなってからも、少女はフードを外そうとはしなかった。ベッドに座り込み、じっと彼女を見つめる。
顔はフードで良く見えない。けれども、その体が先ほど店で見た時以上に起伏に富んだ魅力的なものであることはよく分かった。
大きな胸は、腰のあたりが細い分だけ一層強調されている。着ているのがぼろ布のためボディラインがもろに見える。
ゴク、と息を呑む。
とにかく話をしないとどんな子なのかすら分からない。
けれども彼女の纏う雰囲気があまりにも辛気臭いので話のとっかかりをつかめない。
「だあー! しゃらくさい!」
ガバッっと立ち上がった俺は、少女のフードを勢い良く取り払った。
無理やりにでもコミュニケーションを取って交友を深める。細かいことを考えるのはその後だ。
地球だろうと異世界だろうと、俺の処世術は変わらない。
顔が露になり、たじろぐ少女と目が合う。淀んだ、けれど強い意志の籠った瞳。
――初めて見る、けれども不思議と見覚えのあるソレを見て、俺は思わずつぶやいた。
「ヒビキ……?」
俺は前世の親友の名前を呼んだ。
そんなわけがない。ヒビキはいけ好かなくて、眼鏡で、皮肉屋で、俺の幼馴染の男子高校生だ。
「キョウ……?」
しかし初対面のはずの彼女は、震える唇で俺のあだ名を呼んだ。
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