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王国騎士団と最下層

最後の燭台が灯るとダクタさんの遺体が淡く光、粒のように消えていく。



顔を上げるとダクタさんの遺体だけで無く、生け贄になった人達の亡骸が同じように消えていった。


さっきまで無限に増え襲いかかってきた甲冑のナイト達はガラガラと音を立て崩れ落ちた。



「いつまで感傷に浸っている」


アリシテルの声が背後から聞こえる。


「……アリシテル……てめぇ!! 許さねぇ!!!」


激しい怒りの感情が湧き上がり、咄嗟に剣を手に取りアリシテル目掛けて走り出した。


「ほほう、臆する事なく私に向かって来るか…。その度胸は認めよう、 だが……!」


アリシテルは剣を抜き俺目掛け一振りする。

その一振りの風圧だけで体が吹き飛ばされた。


「グゥッ……!」


強いッ!

やっぱり王国騎士の団長なだけはある!

でも……!!


傷つきながらも懸命に立ち上がり再び剣を構えた。


「まだ心折れぬか、だがもはや立つのがやっとと見える」


アリシテルは剣を収めると、俺を通り過ぎ次の階層に続く扉へ歩き始めた。


「待てよ! まだ終わっちゃいない!」


「調子に乗るなよ! 小僧!」


王国騎士団の団員達が俺の前へと立ちはだかった。


「これ以上の団長へ対する無礼は万死に値する!」


団員の1人が剣を抜いた。

黒髪の長髪で一見、優男に見えるが禍々しいほどの殺気を感じる。

その手に持った黒刀を地面に突き刺し、詠唱を唱えた。


「影縫い」

そう言うと優男の黒刀から黒い影が地面を走りユウキの影へと入り込んだ。


「座が高いぞ、跪け」


その一言で俺の体は無理矢理跪かされた。


何だ!?体が勝手に!?


体を動かそうとしても体の自由が効かない。


「そのまま貴様をじっくり斬り刻んでやろうか。」

そう言うと優男は嫌な薄ら笑いを浮かべ、ツカツカとこちらへ歩いて来る。


「ヨミ、そこまでにしておけ」


「……団長がそう言うのであれば」


ヨミと呼ばれた男が剣を収める。


「貴様、次は無いぞ」


そう言うと団員達の元に戻っていった。


「お前、名は何と言う?」


アリシテルが問う。


「……ユウキだ」


こいつの質問に対して答える事すらしたく無いが、実力差がある事は明確で今の俺じゃあどう足掻こうがアリシテルには勝てない。

ダクタさんに助けて貰った命を、無駄にする訳にはいかない。


今は耐えろ…!

強くなっていつかコイツを、ダクタさんの仇を取ってやる!


「最下層の100階まではまだある。遅れをとるなよ?」


アリシテルは団員達を引き連れ次の階層へと歩みを進めた。


「ちくしょう! 着いてってやろうじゃねぇか!」


悔しくて仕方がない。

力が無い自分自身にも腹が立つ。

だから死に物狂いでも着いていって絶対生き延びてやる!


そう心に誓い、次の階層へと歩みを進めた。



―――――――――――――――――――――――――


ーー王国騎士団の実力は本物だった。


洗礼された連携技もそうだが、個々の能力も卓越されたもので次々とモンスター達を一掃していく。


そして着実に階層を攻略していき、遂に最下層である100階まで辿り着いた。



ゼトギニシア大迷宮・最下層・神殿の間前


最下層というだけあって神殿の間に続く扉は大きく、扉の両橋には2体の巨大な獅子の像が(そび)え立っている。


「総員! 戦闘配置に着け!」

アリシテルの一声で全員が剣を構える。


2体の獅子の像がみるみる間に本物の白獅子へと変化し暴れ出した。


「ヨミ!影縫いを使え!」

アリシテルの指示で、ヨミが影縫いを発動させ2体の獅子の動きを封じる。


「ゴルド! 真空斬!」

ゴルドと呼ばれた筋肉隆々の男が手に持つ大斧を振りかぶると、斬撃が2体の獅子目掛けて飛び、斬りつけた。


「眼は傷つけるなよ。扉の封印を解くのに必要だからな!」


「わかってるって! 団長!」

ゴルドが高く飛び、1体の獅子の首を斬り落とさんばかりに大きく振りかぶった。


その時、影縫いの術を破り獅子の1体が尾でゴルドを激しく壁に叩きつけた。


「すまねぇ!! 団長! 油断した!!」


激しく叩きつけられても怯む事なくゴルドは立ち上がった。


「最下層の門番なだけあって完璧に封じるのは無理か。団長、どうします?」


「術を解け、私が仕留めよう」


ヨミの問いに対しアリシテルが静かに答えた。


絶対零度(アブソリュート・ゼロ)


アリシテルの剣から冷気が発せられ、場の空気をも凍らせていく。

その冷気が2体の獅子の足元まで流れ、獅子自体をみるみると凍らせていった。


「流石団長だ! あの獅子達を後も容易く氷漬けにするとは!!」


ゴルドが笑いながら団長の肩を叩いてそう言った。


2体の獅子は完全に沈黙し、粉々に砕け散る。


「ゴルドにお褒めに預かれるとは光栄だよ」


冗談で返しながら、アリシテルは氷漬けにされた獅子達の破片の山から一際光る宝玉を手に取った。


「この獅子の眼が扉の鍵だ」


そう言うと2体から取れた宝玉2つを扉の左右の窪みにはめ込んだ。


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