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第九話 貴方と生きたい②



「リリー」

「フィル?」

「リリーはこの屋敷や両親、妹に未練はある?もしリリーがここに残りたいと少しでも思う気持ちがあるのなら私は強制はしない。でももし、私と共に来てくれるなら一緒に精霊界行こう」

「精霊界?」

「ああ、実は私はあちらの世界の者なんだ。だから私が人間界で暮らす事は出来なくてね。でも、もしリリーが共に来てくれるのなら私は嬉しい」

「フィルと一緒……」


 以前本で読んだ事があった。

 精霊は私達が魔法を使えるようになった起源となる存在でわたし達の暮らす人間界に多大なる恩恵を運んでくれる存在だ。

 聖魔法は女神から力を分けてもらう事によって、汚れた場所を浄化する事が出来る。対する魔法は精霊からの加護があって初めて扱えるのだ。

 その精霊界の住人がフィルだなんて……。

 

「フィルわたし、「精霊だと!?」」


 わたしの声に被せるように父の声が重なった。

 

「本物、なのか……?まさか、生きてこの目で精霊を見られるだなんて……」

「だ、旦那様、サーシャ、早くご挨拶を」

「あ、ああそうだな。精霊様、ようこそ我がルーズベルト伯爵家へ。私は当主のベンジャミンと申します。こちらは妻のグレース、そして娘のサーシャでございます」

「……」


 両親達はフィルに向かって恭しく頭を下げると、そこでようやくわたしの存在に気が付いたのか途端に顔をしかめた。

 しかしさすがの両親もこの状況でわたしを叱責するのが分が悪いと考えたのか、口に出す事はなかった。

 だがサーシャは違った。泣き出しそうな顔でこちらを見つめ、胸の前で両手を握りしめた彼女は、おもむろに口を開いた。

 

「精霊様、お姉様は今とても危険な状態です。どうかお離れ下さい」

「……」

「お姉様は我儘が原因で特別な教育を受けているのです。先程だってお姉様が癇癪を起して侍女の一人を困らせておりましたのよ。お姉様は侍女長のヴァネッサが引き取りますからご安心くださいませ」

 

 そう言って誰もを魅了する微笑みを浮かべる妹は、まるで幼い頃本で読んだ慈愛に満ちた聖女のようだった。

 フィルが何も言わないのをいい事に、堰を切ったように両親までもが口を開いた。


「精霊様、サーシャの言う通りその子は今とても興奮状態です。危険ですのでどうかお離れ下さい。我が家にお越し下さった精霊様を、その子に変わり我が娘サーシャがおもてなし致します」

「え、ええ旦那様の仰る通りでございます!!サーシャ、さぁ早く応接室へご案内して!!」


 わたしを抱くフィルの手に力が籠るのが伝わり、恐る恐る彼を見上げるとちょうど視線を下げた彼と目が合った。

 そしてわたしに向かってまるで大丈夫だとでも言うように、ふわりと微笑んだ。

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