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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第92話 妖精の帰還

ルバークは魔道具の研究は程々に抑え、森のパトロールについてくるようになった。

季節はすっかりと秋めき、森で採ることのできる食物も豊富に実っている。

ノームがいなくなって、もうどれ程になるのだろうか。


「今日もいっぱい採れたわね。これで冬の間も美味しい食事にありつけそうね!」

ルバークが手伝ってくれることで、明らかに収穫量が増えていた。

「そうですね。甘いものはどれだけあっても困りませんからね。」

ロゼもウンウンと頷いてくれる。

味覚も少しづつ戻ってきており、食事を楽しむことができるようになっていた。

「そのまま食べてもいいけど、やっぱりジャムにした方がボクは好きだなぁ~!」

ロゼはすっかりとジャムにハマっている。

食べることにもだが、どちらかというと作ることに楽しさを見出していた。

毎日のようにジャムづくりに励んでいた。


一通り、森を巡ると家へと帰る。

代わり映えの無い日々を送っているが、毎日がそれなりに楽しかった。


家に戻るなり、ロゼはジャムづくりを始める。

ルバークも自室へと戻っていってしまう。

特にやることが無いので、シラクモを撫でながら過ごす。


しかし、平穏な日々は突然終わりを告げる。


「戻ったわよ!ダイク、開けなさい!」

森の妖精様が帰還なさったのだ。

扉を開けてやると、早々に家の中が騒がしくなる。

「あら、いい匂いね!ロゼ、何を作っているの?ダイク、約束は覚えているわよね?出掛ける用意はできてるんでしょうね?」

ノームはあっちこっちと忙しなく家の中を飛び回る。

「約束はしてないだろ。出掛けるってどうやって行くんだ?何の説明もなしに飛んでいっただろ?まずは説明してくれ。ルバークさんも呼んでくるから。」

「ダイク兄、ボクが呼んでくるよ!鍋をお願いね!」

ロゼは素早い動きで階段を登っていった。

「しょうがないわね、説明するわよ!すればいいんでしょ!」

自分の行動を思い出したのか、テーブルの上に降り立って大人しくルバークを待った。

俺もロゼの代わりに木べらで鍋を混ぜて待った。


「ノームちゃん、戻ったのね。どこに行ってたの?」

ルバークは階段を下りながら妖精に声をかける。

「遅いわよ、ルバーク!説明するから、早く座りなさい!」

ノームの物言いを気にする素振りもなく、ロゼとルバークは席に座った。

「ありがとう、ロゼ。ジャムはもう出来たと思うから、火は止めたよ。」

「うん、ありがとう、ダイク兄!お話が終わったら味見しよっか!」

「それなら、お茶を淹れるわ。まずは香りだけでも楽しみましょう。ノームちゃんも飲むでしょ?」

「もちろん飲むわ!けど、話をしたいから早くしてよね!」

気にも留めずにルバークはいつものペースでお茶を淹れ始める。

俺も鍋をテーブルに持ってきて、お茶に入れられるようにしておく。

「なんなの、これ!?すごくいい匂いじゃない!」

ノームが臭いにつられて鍋に近づいてくる。

「ブルーベリーっていう果物のジャムだよ!今日、みんなで採りに行って、ボクが煮込んで作ったんだよ!お茶に入れても美味しいんだよ~!」

ロゼは丁寧に妖精に説明してあげる。

「そうなのね!頑張ったわね、ロゼ!褒めてあげるわ!」

淹れ終わったお茶に一匙ずつジャムを入れていく。

「ん~、これもいい匂いがするわね。木苺よりは甘みが強いわね。」

「うんうん、美味しいよ!ノームも飲んでみなよ!」

ロゼに促されずともノームは飲み始めていた。

「ん~、美味しいわね!これからわたしのお茶は毎回これでよろしくね!」

話を始めたいのに、妖精はすっかりお茶に夢中だ。

「なぁ、ノーム。早く話を始めてくれ。」

妖精はグビッとお茶を飲み干して、ようやく話を始めた。


「話も何も無いわ!パッと行って、パッと帰ってくるんでしょ?」

ノームは説明下手なのか、要領を得ない。

「だらか、どうやって行くんだって話だよ。」

ノームは飲み足りないのか、俺のお茶まで飲み始める。

「ノームちゃん、ダイク君はもう味を感じられるようになったの。だから、これからはダイク君の分は取っちゃダメよ!それはダイク君に返して、ノームちゃんのコップを持ってきなさい。お代わりをいれるわ。」

ルバークがやんわりと注意するが、すでに俺のコップは空だった。

「美味しかったわ、ルバーク!もうお茶はいらないわ!どうやって行くかだったわね!外を見てごらんなさい!」

ノームは窓を指差して、そう言った。


俺たちは立ち上がって窓へと移動する。

「あれっ、あんなところに木って生えてたっけ?」

家の前に立派な木が一本生えていた。

「あの子が連れていってくれるわ!準備が大変だったんだから、感謝してよね!」

妖精の言っていることが、全く分からなかった。

「あの子ってことは、あれはトレントなのか?マザーの許可もないのに、よく入ってこれたな。」

「鬼蜘蛛の親玉には許可をもらったわよ!当り前じゃない!勝手に縄張りを荒らすのはマナー違反よ!」

ノームがマナーを弁えているとは知らなかった。

人間種のマナーが分からないから、こんな物言いなんだろうか。

「そうなのね。許可を得たことはわかったわ。わたしたちが分からないのは、トレントがいるから何なのってことね。」

トレントがこちらへ振り向いて、口を大きく開けた。

「うわぁ~、ダイク兄!動いたよ!!」

ロゼは楽しそうにしているが、そんな気分にはなれなかった。

トレントの口の中が禍々しく、ウネウネと何かが蠢いていた。

「あの中に入れば、魔獣木の近くに移動できるわ!妖精だけが使える移動術よ!まぁ、滅多に使うことがないから用意に時間が掛かっちゃったけど、これで移動できるようになったわよ!」

俺もルバークも言葉が出ない。

ロゼは興味深そうにトレントを見ている。


「い、一旦座って落ち着きましょうか。何だかのどが渇いちゃったわ。」

ルバークは飲んだばかりのお茶を再び淹れだした。

「ロゼ、俺たちも座るよ。」

窓にしがみ付いて見ているロゼを剥がして、席まで連れていく。

「何で座るのよ!もう行くわよ!」

ノームはテーブルの上でジタバタと暴れ出す。

「これから行ったってすぐに夜になって、魔獣木どころじゃないだろ。行くにしたって明日以降だよ。ノームには道案内だってしてもらわなきゃいけないし、しっかりと休んでからでもいいだろ?」

「そうだけど・・・。まぁ、いいわ!明日には必ず行くってことだものね!今日は美味しい食事を楽しむことにするわ!」

何とかノームを言い包め、出発までの時間を稼いだ。


「わたしも行った方がいいかしら?」

「ルバークさんは家で待っていてください。もしかしたら、ヴィドさんたちが来るかもしれませんからね。ロゼはどうする?」

ルバークは家主として森を守っておいてほしい。

ロゼは・・・、来てくれればありがたいが、無理やり連れていく気にもなれなかった。

「ボクだって行くよ!魔獣を倒す人がいないと、ダイク兄も困っちゃうでしょ!」

「そうだな。ありがとう、ロゼ。」

準備をすることは特にないが、一体どのくらいかかるのかを想像もできなかった。

軽食のストックはまだあるので、作る必要は無いだろう。

とにかく、早く食事を作って体を休めるのみだ。


すぐさま調理場に立って、料理を作り始める。

「ダイク君、食事はアイテムボックスにまだ入ってるの?少し移してもいいのよ?」

「大丈夫です。まだ、スープもいくらかありますし、唐揚げパンもまだ入ってます。」

「そう、ならいいわ。わたしも手伝うから、少し早いけど夕食にしちゃいましょうか。」


ノームが帰ってきたことで、バタバタと忙しない夕暮れとなった。




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