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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第85話 ロイ

今年も残すところ、あとわずか。

ここまで読んでくださいまして、ありがとうございます。

来年も引き続き、よろしくお願いします。

「お帰り、ルバークちゃん!ダイク、ロゼ!」

宿に入ると、おばさんの元気な声が聞こえてくる。

「ただいま、おばちゃん。すっかり遅くなってごめんなさいね。」

ルバークはおばさんに駆け寄り、そう言った。

俺とロゼはルバークの後ろでペコリと頭を下げた。

「いいんだよ、仕事だったんだろ?それより、昼食は摂ったかい?まだなら、朝食の分が残ってるから、それを食べないかい?」

「いいの?ありがとう。あと、清算をお願いしてもいいかしら?」

「何だい、もう帰っちゃうのかい?」

「寂しいけど、そろそろ家に帰らないと・・・。」

「そうかい。わかったよ!まずは、食事を用意するね!座っててくれるかい!」

おばさんはそう言って、調理場へと入っていく。

「ルバークさん、もう帰るの?」

「そうよ、ロゼ君。魔獣木も回収できたし、そろそろ帰らないとね。」

ルバークはテーブル席に腰を下ろしながら言う。

俺とロゼも、同じテーブルの席に腰を下ろした。


「帰り道にヴィドさんたちの村に寄ってもいいですか?魔獣木の件について、話だけでもしておきたいんです。」

「ヴィド君たち、もう村に帰ることできたの?」

「ギルドに聞きに行ったら、もう村に帰ってるんじゃないかって言ってました。」

「そうなのね。・・・それにしてもダイク君、食事はしっかり摂ってた?少し痩せたように見えるけど・・・。」

「ボク、わかった!ノームに食べられちゃったんでしょ!」

「まぁ、そうです。でも、全く食べてないわけじゃないんですよ。少しは食べてますし・・・。」

「少しはじゃないでしょ!体のために、食べなきゃダメよ!ところで、ノームちゃんはどこにいったのかしら?」

そういえば、ルバークとギルドで会ったくらいから静かにしてるな。

「ダイク兄のフードの中で、寝てるよ!」

ロゼが俺のフードを覗き込んで言った。

「そう。なら、昼食はダイク君がしっかりと食べるのよ。」

ルバークが厳しい目つきで俺のことを見てくる。

「わ、わかりました・・・。」

その後、おばさんが持ってきた食事を摂り、宿を後にする。

味覚が戻ってないので、食事は苦痛だったがルバークの目もあり、すべて平らげた。


ヴィドたちの村へと向かう荷車の中で、ルバークがどのように魔獣木を回収してきたのかを話してくれた。

御者台には、ロゼが座っている。

ロゼが御者をしてもロデオは抵抗することなく走ってくれた。

ノームは起きることなく寝続けており、快適な旅となっている。

「でね、魔獣は問題なくロゼ君とわたしで倒せたのよ。これがその魔獣よ。」

ルバークは見たことの無い魔獣だったと言った。

マジックバックから魔獣の一部を取り出して見せてくれる。

鑑定してみると、キラーアントという魔獣の足だった。

「さすがに大きくて一部しか持ってこれなかったわ。ダイク君、欲しかった?」

足の大きさから、全長は俺よりも少し大きいくらいかもしれない。

「いらないです。食べられるのかもわからないですし、持ってこなくって正解ですね。」

「そう、よかったわ。でね・・・。」

ルバークの話は続いた。

要約すると、魔獣木はロゼが砕いて回収してきたらしい。

ただ、魔獣木は堅く、何本もの剣をダメにしたみたいだ。

何度も何度もロゼが力いっぱい斬りつけることで、マジックバックに収まる大きさまでになったようだ。

「砕いた破片を一つも残らないように回収してきたから、安心してちょうだい。」

「お疲れさまでした。そういえば、魔道具はどうなったんですか?試したいことがあるって言ってませんでしたっけ?」

「全然、役に立たなかったわ。魔獣木って堅過ぎるのよね。」

何をしたのかは、あえて聞かなかった。

自分で聞いておいて何だが、ルバークが研究モードになられては困る。

「そうでしたか。あっ、もう少しで着きそうですよ。」

タイミングよく、ヴィドたちの村が見えてくる。

村の入り口の前に広がる畑に、人の姿が確認できた。


村の人々は俺たちを見つけるなり、挨拶や手を振ってくれる。

俺たちもそれに答えながら、ルーナの家へと向かった。

「ねぇ、ダイク!ここはどこよ!?」

後頭部から妖精の声が聞こえてくる。

「起きたのか。知り合いが住む村だよ。」

俺の目の前に飛んでくると、大きな欠伸をした。

「あっそ!まぁ、いいわ。わたしは村を探検してくるわね!」

そう言い残して、村を自由に飛び回っている。

「ノーム、行っちゃったよ。ダイク兄。」

「そうだな。まぁ、悪いことはしないだろうし、放っておこう。」

目的地に着くと、俺たちは荷車を下りて扉をノックする。

しばらく待つと、小さな狐の赤ちゃんを抱いたルーナが出てきた。

「こんにちは、ルーナちゃん。お久しぶりね。まぁ、小さくて可愛いわ~!」

突然の訪問に驚いた顔をしているルーナにルバークが声をかける。

「お久しぶりですね、皆さん。今日はどうされたんですか?」

ルーナは抱えた赤ちゃんを見やすいように屈んでくれた。

「お久しぶりです、ルーナさん。可愛い赤ちゃんですね。ご出産おめでとうございます。ヴィドさんかアルさんに用があって来たんです。どこにいるかわかりますか?」

ロゼは赤ちゃんを不思議そうに眺めていた。

「ありがとうございます。ヴィドたちは村の裏の雑木林に行ってると思います。しばらく戻らないと思いますので、よければ家で待ちませんか?」

「いいの?ありがとう、ルーナさん!」

ロゼがいち早く反応を示した。

雑木林とはオークたちがいたところだろう。

俺たちが出向いてもよかったが、ロゼは赤ちゃんに興味津々だ。


家の中に入ろうというところで、ノームが戻ってきた。

「この村、何にも面白いものが無いわね!あら、赤ちゃんじゃない!可愛いわね!」

赤ちゃんに興味を示すとは意外だったが、赤ちゃんもノームのことが見えているのか、目で追っていた。

ルーナには見えていないので、怪しまれないようにノームを無視する。

「こちらへどうぞ。」

ルーナが席に、それぞれ案内してくれる。

「ルーナちゃんも座って。わたしがお茶を淹れるわ。突然来ちゃってごめんなさいね。」

ルバークは席に着くと、ルーナを座らせてお茶の準備を始めた。

「とんでもないです。魔獣が増えてバタバタしてましたけれど、もう落ち着いたのでいつでも来てください。」

ノームとロゼは席に着かずに、ルーナの側で赤ちゃんを見ていた。

「ロゼ君、お茶が入ったわよ。」

ルバークが声をかけても、離れ難いようだった。

「ねぇ、ダイク!赤ちゃんの名前を聞きなさいよ!」

妖精が俺の手を引っ張って、赤ちゃんの側に連れていこうとする。

「名前は決まってるんですか?」

俺もお茶を一口飲んで、ノームに導かれるように赤ちゃんの側へと近寄った。

「この子の名前は、ロイっていうの。この村を救ってくれた小さな英雄からとった名前なのよ。」

ルーナは優しい笑顔を俺とロゼに向けて言った。

「えっ、それってボクとダイク兄じゃない!?」

ロゼは驚きながらも、満面の笑みで喜んだ。

「いい名前にしたわね。ロイってことは男の子なの?」

「はい。女の子だったらルバークさんからとろうと思ってました。」

「フフフ、そうなのね。二人ともよかったわね。」

顔には出ていないんだろうが、嬉しかった。

妖精を目で追っているロイのことが、余計に可愛く目に映る。

「ボクはロゼだよ。こっちにいるのがダイク兄。あっちにいるのはルバークさんだよ。」

ロゼがロイにみんなのことを紹介してくれる。

ロイにはまだわからないだろうが、ロゼがお兄ちゃんをしている姿を見て、成長したなと思う。


この村に来た目的は果たせていないが、来てよかったと思える瞬間だった。


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