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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第84話 ルバークの怒り

「なぁ、ノーム。今のロゼたちの状況はわかるか?」

部屋へと戻り、シラクモの上で遊んでいる妖精に問いかける。

「魔獣はあっさりと倒したみたいだけど、魔獣木の回収に時間がかかっているみたいね!でも、もうそろそろ終わりそうだし、朝には帰ってくるんじゃない?」

シラクモがノームを乗せて、部屋を跳び回っている。

「終わりそうってことは、俺がいなくても回収できたってこと?」

「まぁ、そうなんじゃない?詳しくは戻ってきた二人に聞きなさいよ!わたしは忙しいのよ!」

忙しいって、シラクモに乗って遊んでいるだけじゃないか。

少しイラっとしつつも、魔獣木を回収できたことに安心した。

それとは別に、新たな不安が頭を過る。

魔獣木を回収するってことは、ルバークのマジックバックに入れるんだろう。

「シラクモ、こっちにおいで。ノーム、マジックバックに魔獣木を入れても大丈夫なのか?俺みたいに表情や感情が影響を受けたりしないのか?」

窓際のテーブルにシラクモが跳んできた。

シラクモの上にいる妖精に真剣な眼差しを向ける。

「影響はないわよ!マジックバックとアイテムボックスは全く違うもの!」

「違う・・・。マジックバックは魔石を通して空間に物を入れていて、アイテムボックスは俺の魔法で空間に物を入れている。こんなところか?」

「まぁ、そんなところよ!」

ノームは以前、魔獣木が俺に根付いていると言っていた。

これは比喩でも何でもなく、本当に俺に根付いていたんだろう。

アイテムボックスという魔法を通じて・・・。

ノームに確認をとるが、大きく間違っていないようだ。

「こんなつまらない話をいつまで続けるつもり?もっとわたしを喜ばせる話題はないの?」

ノームを喜ばせる話題は持ち合わせていない。

黙っていると、ノームはベッドで寝だした。

シラクモのことを一通り撫でて、俺も寝ることにした。



朝はうるさい妖精の声で目を覚ます。

「早く起きなさいよ!わたしはお腹がすいたのよ!早く食べに行くわよ!」

眠たい目を擦りながら、ベッドから体を起こすが気分は最悪だ。

「朝から騒がないでくれ。今準備するよ・・・。」

ベッドから立ち上がるなり、妖精が俺の目の前をチョロチョロと飛び回る。

朝からイライラさせないでほしい。

妖精を捕まえて、シラクモを呼ぶ。

「シラクモ、こいつを捕まえておいてくれ。」

シラクモは前足をあげて、妖精を受け取ると糸を使ってぐるぐる巻きにする。

「この森の妖精様にこんな・・・こんなことして・・・なんで鬼蜘蛛がわたしを触れるのよ!しかもこれじゃ動けないじゃない!」

糸の中でもぞもぞと蠢いているが、抜け出せないみたいだ。

「昨日はシラクモに乗って遊んでたじゃないか。何を今さら触れないなんて・・・。」

「わたしが触るのと、触られるのじゃ違うのよ!」

「あー、そうですか。じゃあ、シラクモは特別ってことだな。よかったな、シラクモ。」

シラクモは前足をあげて、嬉しそうにしている。

「何がいいのよ!わたしからすれば、大問題よ!」

そんなやり取りをしているうちに、用意が終わった。

「シラクモ、ノームを開放してやってくれ。」

指示を出すと、シラクモは前足を器用に使って妖精に絡まる糸を解いていく。

「ちょっと、もっと丁寧に解きなさいよ!」

「ありがとう、シラクモ。」

シラクモを抱き上げて、ローブのフードに入れる。

そのまま部屋を出て、階段を下っていく。

妖精様は何か文句を言っているが、聞き流す。


「おはよう、ダイク!今、朝食を持ってくるよ!」

おばさんは朝から元気に働いている。

「おはようございます。お願いします。」

カウンターに座って、朝食を待つ。

昨日はほとんど食事を摂っていないが、お腹がすいている訳でもなかった。

「あ~、お腹がすいたわ!おばちゃん、早く頼むわ!」

おばさんには届かない声をあげ、俺の隣の席に妖精は降り立った。

カウンターに食事が並ぶと、おばさんがいる前で食べようとし始めた。

素早く妖精を掴み上げ、なんとか止めることができた。

おばさんは若干、不思議そうな顔をしていたが、なんとか誤魔化して食事を始める。

朝食もほとんどノームが食べ、残ったパンの抜け殻を口に入れた。


部屋に戻って、シラクモに朝食をあげ終えるとすっかりと暇になってしまった。

「ノーム、ロゼたちは今どうしてる?」

ベッドに横になりながら聞いてみる。

「そんなのわからないわ!こっちに戻ってくるってなった時に消えちゃったみたいね!」

なんて勝手な妖精なんだ。

案内をするなら帰りまでしっかりしてほしいものだ。

ただ、もうこちらに向かっていることは分かった。

「ねー、何か言いなさいよ!ちゃんと教えてあげたじゃない!」

「はいはい、ありがとう。」

大人しくロゼたちの帰りを部屋で待つことにする。

ノームは市場に行こうと言っているが、ベッドに横になって寝たふりをしてやり過ごす。


「ダイク兄、ダイク兄!起きて!」

いつの間にか本当に寝てしまっていた。

「お、お帰り、ロゼ。ルバークさんはどこ行ったの?」

部屋の中にはロゼとクガネしか戻っていない。

「ルバークさんはギルドに行ったよ!魔獣木のこと報告するんだって!」

ベッドに腰を下ろして、ロゼが言った。

「これからどうするか、ルバークさんは何か言ってた?」

ロゼは首を振って答える。

「そうか・・・。ロゼは疲れてるなら休んでていいよ。俺も暇だし、ルバークさんを追ってギルドに行ってくるよ。」

「ボクも行くよ!」

勢いよく立ち上がって、俺の手を引っ張りベッドから立たせてくれる。

「シラクモ、クガネも行くよ!」

ロゼがそう言うと、二匹はそれぞれのフードの中に入り込む。

「ちょっと、わたしも行くわよ!」

自分の名前を呼ばれなかったのが寂しかったのか、俺の頭にしがみ付いてくる。

「じゃ、行こうか。」

ロゼと手を繋いだまま、宿を出てギルドへと歩いた。


ギルドに入ると、カウンターの辺りでルバークとジョセフが言い合っているのが見えた。

ロゼの手を引いて、ルバークの元へと急ぐ。

「あら、ダイク君。さっき戻ったわ。少し瘦せたんじゃない?ちゃんと食事は摂ってたのかしら?」

ルバークは俺を見つけると、ジョセフそっちのけで心配そうな顔を浮かべる。

「お帰りなさい、ルバークさん。これは、どういう状況ですか?」

食事の件は置いておいて、現状を確認する。

「魔獣木の回収が終わったって報告をしていたのよ!」

ルバークはにっこりと笑ってジョセフの方を向く。

「いやな、魔獣木を回収してきたっていうから、報酬を払うって言ってるんだがルバークが受け取らないんだ。」

ジョセフは困惑しながら、俺に助けを求めてくる。

「マスター。わたしたちは勝手に魔獣木を回収しただけなの。気にしないでちょうだい。一応、無くなった報告だけはしておくわ。たかだか金貨五枚のために動いたなんて思われたくないの。二人に他の依頼を受けられなくしたことも気にしなくていいわ。」

ルバークの顔は笑っているが、目の奥に炎が宿っている。

「それは・・・・・・しょうがなかったんだ。領主から金が下りなかったんだ。」

「それをどうにかするのがあなた方のお仕事じゃないんですか?」

ジョセフは黙ってしまう。

「ルバークさん、もういいですよ。帰りましょう。」

前はこのことで怒りが沸いたが、今となってはどうでもいい。

ルバークが怒ってくれたことですっきりしたのかもしれない。

ジョセフにペコリと頭を下げて、ルバークの背中を押してギルドを後にする。


「ルバークさん、怒ってくれてありがとうございます。疲れているのにすいません。」

宿へと向かいながら、ルバークに謝った。

「やだ、謝らないでちょうだい。こちらこそ、ごめんなさいね。勝手に金貨五枚を断っちゃって。」

「いいんだよ、ルバークさん。依頼を受けたんじゃないしね!」

「そうです。勝手に取りに行っただけなんで、金貨は必要ありません。」

それを聞いて、ルバークの顔に笑顔が戻る。

「フフフ、そうよね。マスターも大変ね。わたしたちと領主に板挟みにされちゃって。」

「そうですね。少し気の毒ですね。」


そんな会話をしているうちに宿へとついた。


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― 新着の感想 ―
[一言] ルバークさん、お願いだから ノームにも怒って。 妖精だからこんなもんなのかも知れんけど かなりウザイ。言動が身勝手。 羽虫みたいにプチっと潰したくなる。
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