表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
88/136

第81話 快気祝い

だんだんと日が沈んでいく。

きれいな夕焼けが闇に飲み込まれ、辺りは真っ暗になってしまった。

ロデオは激走を続け、滝まであと少しというところまで来ていた。

道に迷うことが無いように、進む先に魔法の光の玉を飛ばす。


「ダイク君、魔法を使って大丈夫なの?何かおかしなところは無い?」

ルバークは心配からか、過保護気味だ。

「ルバークさん、心配する必要はありませんよ。特に変わりはありません。」

表情なんかは今でも動いている感覚がある。

だが、ルバークたちは表情が変わらないと言う。

もう既に、自分でも何がおかしいのかが分からなかった。

「ねぇ、ちょっと!暇なんだけど!なにか話でもしなさいよ!」

ノームはブレることなくうるさかった。

だが、怒りの感情が鳴りを潜めてからは、全く気にならなくなった。

「そういえば、あそこの森にいたトレントは討伐しなくてよかったのか?」

あの時、戦いに勝ったトレントはノームの指示で森へと帰っていった。

「あの子たちはいいのよ!わたしが生み出したトレントだから!ダイクは魔獣と見れば、何でも討伐しようとするのね!あ~、やだやだ!」

「何がいいんだ?あいつ等だって、人が近づけば襲ってくるんだろ?」

「そんな野蛮なことしないわ!あの子たちはしばらくすると、森の一部に・・・木に戻るわ!わたしのトレントちゃんを馬鹿にしないでよね!」

「ふ~ん。」

「そこの鬼蜘蛛だって、そうでしょ!誰彼構わず襲う訳じゃないでしょ!それと同じよ!」

ノームは俺の頭をポカポカと叩いているが、気にならないので放っておく。


あまり人の通る道を走っていないために、荷車はガタガタと音を立てて揺れる。

ロデオが森の中に入ると、ノームは元気に飛び回った。

辺りを魔法で照らしているとはいえ、ほんの数メートル先までしか見えない。

「ダイク兄、もうすぐだよ!」

ロゼがそう言うと、滝の音が微かに聞こえてくる。


滝の中に入るために服を脱ぎだすと、ルバークに止められる。

「ダイク君、脱ぐ必要は無いわよ。道を作るわ。」

ルバークは滝の方を見て、魔力を込めると洞窟へと抜けるトンネルができた。

俺たちのいる場所からトンネルまでは橋が架けられた。

「これで問題なく行けそうね。」

ルバークはそう言って、先に橋を渡り出した。


トンネルをくぐると、濡れることなく洞窟まで抜けられた。

「ノーム、ここに魔獣木をおくぞ。問題はないか?」

チョロチョロと飛び回るノームに一応、確認をとる。

「ここなら、別にいいわ!土は森に繋がってないし、いい場所じゃない!」

「森に繋がってないってことは、ノームはここにあった魔獣木の存在は知らなかったのか?」

「ダイク兄、今はそれどころじゃないでしょ!早く、魔獣木を出して!」

「そうよ、ダイク君。話は後でにしましょう。」

ルバークとロゼに急かされて、魔獣木をアイテムボックスから取り出す。

四本になった魔獣木を適当に土に植えていく。

「これでいいですかね?」

振り返ると、ルバークとロゼは心配そうに俺の顔を見てくる。

「二人でそんな顔しないでください。俺まで不安になりますよ!」

出来る限り明るい声を出して言った。

「それも、そうよね。」

神妙な面持ちでルバークが言う。

その反応から、表情は戻っていないんだろう。

「寝たら元通りかもしれませんし、今日のところはサンテネラに戻りましょうか。お腹もすいてきましたね。」

吹き抜けている天井を土魔法で覆っていく。

「ダイク君、何してるの?」

「魔獣木って共通して光の入るところに植えられているんです。もしかしたら、光を浴びないと生きていけないのかもと、思いまして。まぁ、生きているようにも見えないんですが・・・。」

そうしている間にも、魔獣木からは実が落ち始めていた。

「いい案ね!可能性はあるんじゃない?」

ノームは納得してくれたが、ルバークとロゼはポカンとしている。

「話は後にして、今はここを出ましょうか。」

二人の背中を押して、洞窟を出る。

洞窟の入り口にも土魔法で隙間なく封印して、人の出入りができないようにしておいた。

橋を渡って、荷車に乗り込む。


御者はルバークに変わった。

全員が乗ったのを確認すると、ルバークはロデオを走らせる。

「ノームはこれからどうするんだ?森に帰るのか?」

「なんでよ!もちろん、わたしもついて行くわよ!ダイクには魔獣木をどうにかしてもらわないといけないんだから!」

頭の周りとウロチョロと飛び回るノームを見て、少しイラっとした気がする。

「ノーム、少しイラっとするから飛び回るのやめてくれる?」

「本当に!?ダイク兄、イラっとしたの?」

「た、たぶんね。そんな気がするんだ。」

ロゼは俺がイラっとしたことに、満面の笑みで喜んでいた。

シラクモも、クガネもロゼの周りで嬉しそうにしている。


サンテネラに帰り着くと、宿へと一直線に戻った。

ロデオを厩舎に戻して、宿の扉を開けると酒場が賑わっていた。

「おばちゃん、今夜からわたしも泊めてもらうわね!」

ルバークが調理場で作業をしていたおばさんに声をかけると、おばさんは走ってルバークの元に駆け寄った。

「ルバークちゃん、お帰り!心配したんだからね!」

目に涙を溜めたおばさんがルバークに抱き着いた。

「おばちゃん、苦しいわ。心配してくれて、ありがとう。もう、大丈夫よ!」

「よかった、本当によかったよ!」

感動の再開に水を差すように、俺とロゼのお腹が鳴る。

「フフフ、おばちゃん。わたしたち、お腹すいているの。何かお願いできる?」

「任せておきなよ!すぐに持ってくるよ!座って待ってなよ!」

ルバークの快気祝いなのか、いつもより豪華な料理がテーブルに並ぶ。

「宿からの祝いだよ!いっぱいお食べ!」

「「「いただきます!」」」

一口食べてみるが、やはり味はしなかった。

「美味しいわね!これっ!」

ノームもなぜか同じテーブルで、俺の皿から食事を摂っている。

「ノーム、お前こんな堂々と姿を見せていいもんなのか?」

「何言ってんのよ!他の人には見えないようにしてるわよ!ちゃんとしてるのよ、わたし!」

そう言って、食事をがっついている。

残すのも悪いし、正直ノームがいてくれて助かった。


「ダイク君、味はどう?」

ルバークが食べる手を止めて、聞いてくる。

「やっぱり、まだ味も臭いも感じないです。すいません。」

「・・・そう。でも、もう少し食べてね。今日もいろいろ動き回ったんだから、体のためにも食べないと。ノームちゃん、ダイク君の分も残してあげてね。」

「わかってるわよ!わたしはもうお腹いっぱいよ!残りはダイクが食べなさいよ!」

膨らんだ腹を擦りながら、ノームは言う。

無味無臭の食べ物を口に運ぶが、何とも変な感覚だった。

ルバークとロゼを悲しませないためにも、皿に盛られた分は食べきった。


部屋に戻ると、ロゼに無理やりベッドに寝かされてしまう。

「まだ寝るには早いんじゃない?」

早く寝かせたいロゼの気持ちもわかった。

しかし、こういう時に限って、眠気のねの字もない。

「ダイク兄はもう寝るんだよ。寝たら良くなるんでしょ?」

悲しそうな顔でそう言われては、寝るしかない。

「わかったよ。もう今日は寝るよ。シラクモも寝るか?」

シラクモは前足をあげると、枕元で足をたたんで小さくなった。

目を瞑ってシラクモを優しく撫でていると、意識が微睡まどろんでくる。

「ちょっと、わたしはどこで寝ればいいのよ!」

意識の向こうでノームが騒ぎ立てているが、聞こえなかったことにして微睡みに身を任せた。


評価とブックマーク、ありがとうございます!

まだの方は是非、お願いします!


モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ