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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第78話 ダイクを呼ぶ声

(ダイク・・・ダイク・・・・・・繋がりましたね。聞こえていますか?)


また、誰かが俺のことを呼んでいる。

「あなたは、誰なんですか?なんで俺のことを呼ぶんですか?」

まだ夢を見ているのかもしれない。

真っ白な空間に立っていた。

体を動かそうと思っても、ピクリとも動かない。


(魔獣木をアイテムボックスから出しなさい。それがあなたを蝕んでいます。)


「魔獣木が!?どういうことですか?教えてください!」

声に出ているのかも分からないが、声の主に問いかける。


(時間がありません。魔獣木を探してください。わたしはそこで、待っています。)


繋がりが切れてしまったような感じがした。

「ちょっと待ってください!なんなんですか、一体!?」

相手に届いているのかは分からないが、声を荒げる。



「ハッ、・・・ハァ・・・ハァ。」

目を覚ますと、ロゼが心配そうにこちらを見ていた。

「ダイク兄、大丈夫?うなされてたよ・・・。」

汗をかいたのか、体中が気持ち悪い。

「だ、大丈夫だよ、ロゼ。ちょっと変な夢を見ていたんだ。」

夢にしては、はっきりと今でも思い出せる。

「そうなの?苦しそうにしてたから、シラクモが魔法を使ってくれたよ。」

枕の側にいるシラクモを撫でる。

「ありがとう、シラクモ。ロゼも心配かけてごめんな。」

「ううん、ボクは大丈夫。」

シラクモも前足をあげて、俺の肩を軽く叩いている。

「今日は・・・魔獣木の回収に行こうか。」

夢でのことが本当なら、誰かが俺のことを待っている。

魔獣木をアイテムボックスから出せとも言われたが・・・。

勝手にどこかに置くこともできないので、一旦保留にしておく。

「ダイク兄がいいなら、いいよ!・・・あっ、でも昨日、マスターにもう依頼受けないかもって言っちゃったんだった!」

「別に依頼じゃなくてもいいだろ?個人的に回収しに行くだけだ。ギルドは関係ないよ。だから、依頼は受けない。」

感情を揺さぶる原因はなるべく避けたい。

「そっか。ルバークさんには言っていくよね?」

「うん。治療院に行ってから、街を出よう。」

解決の糸口が見えたからか、イライラすることも無く会話することができた。

ロゼが気を使ってくれているのもあるんだろう。


出掛ける準備をして、朝食を摂って治療院へと向かう。

昨夜と変わらずに食事の味はしなかった。


「おはよう!ルバークさん!」

「おはようございます、ルバークさん。」

病室へと入ると、ルバークは魔道具をいじっていた。

「おはよう、二人とも。」

魔道具を脇に置いて、こちらをじっと見ている。

「どうしたんですか?」

「いえ、何でもないわ。ダイク君、最近なにか変わったことは無い?」

「変わったこと・・・。」

昨日、ロゼが来て何かをルバークに伝えたことが分かった。

「何もないならいいのよ。わたしの気のせいかもしれないわね。」

ロゼが心配そうな顔で俺とルバークを交互に見ている。

「ルバークさん・・・。最近、俺はおかしいんです。無性にイライラするし、ずっとモヤモヤした気持ちがあって。昨日の夜から食事の味も感じなくなりました。臭いもしません。」

「・・・そう。」

ルバークは驚きつつ、何とか相槌を打つ。

ロゼも驚いた顔をしながら、初めて聞いた話で悲しそうでもあった。

「でも、それも魔獣木のせいかもしれないんです。」

今朝見た夢の話をしてみた。

荒唐無稽な話にもかかわらずに、ルバークとロゼは真面目な顔で話を聞いてくれる。

「そうなのね・・・。夢にしては妙にリアルね。」

ルバークは何かを考え込んでいる。

「ダイク兄、なんで味がしないこと言ってくれなかったの?」

「ごめん、ロゼ。せっかくいい雰囲気だったのを壊したくなかったんだ。おばさんの食事を美味しく食べたいだろ?」

「そうだけど・・・。」

ロゼが背中にギュッと抱き着いてくる。

「夢の話が本当なら、味だって感じられるようになるかもしれない。ロゼが悲しむことは無いよ。」

ロゼからの返事は無かった。


ルバークはしばらく考え込むと、院内着を脱ぎ始めた。

「ダイク君、わたしもついていくわ。」

マジックバックから服を取り出して、着替えている。

上着を着るときにヘアバンドが引っ張られて、ルバークの額から外れた。

ルバークの角が大きくなり、反対側の額にも小さな角が生えていた。

「あら、バレちゃったわね。見てよ、これ。ひどいと思わない?これじゃ、オーガよ。あっ、オーガっていう魔獣がいてね。わたしと同じで角が・・・。」

ロゼを背中に引っ付けたまま、ルバーク引っ張り抱きしめる。

「ど、どうしたの、ダイク君?」

「それ以上、言わなくていいです。ルバークさんはルバークさんですよ。」

「そうだよ!角があったって関係ないよ!」

ロゼは落ちたヘアバンドを拾って、魔法をかけてルバークに返す。

「・・・ありがとう。」

泣きそうになりながら、ルバークは俺たちに背中を向けた。

「でも、ルバークさん。治療院を出て、大丈夫なんですか?頭痛がするんじゃないですか?」

「大丈夫よ。前に罹った時よりも痛みは少ないの。薬も貰ったし、ほとんど痛みは感じないわ。」

「本当に!?よかった~!」

ロゼは安心したのか、ベッドに倒れこむ。

「心配かけたわね。もう、わたしは大丈夫。今度はダイク君の番よ!」

着替えが終わったルバークは、荷物をマジックバックに片付ける。

「さぁ、行きましょう。」

先陣を切って部屋を出ていった。


入り口近くのカウンターでルバークは清算をしている。

結局、ビクターのお見舞いには行かなかった。

深い付き合いでもないが、一緒に冒険した仲ではある。

「ビクターさんはどうなったんだろうね。」

俺が階段の方を見ていたからか、ロゼがビクターのことを言った。

「ビクター君はもう少しで退院だって言ってたわ。元気そうだったから、すぐにでも冒険者業に戻るわよ。多分ね。」

「そうなんだ!よかった~!」

冷たいようだが、それならお見舞いはいらないなと思った。

「お世話になりました。先生によろしくお伝えください。二人とも、行くわよ!」

軽やかな足取りでルバークは治療院を出る。

「無理はなさらないでくださいね!!」

メイド服のお姉さんが、ルバークに向かって叫んでいた。

「ありがとうございました。失礼します。」

「失礼します!」

メイド服のお姉さんは苦笑いを浮かべていた。


「本当に良かったんですか?」

「いいのよ。あれ以上、あそこにいたって何も変わらないわ。薬は貰ったし、もう用は無いわ。」

久しぶりの日光を、体を伸ばしてルバークは浴びている。

伸ばしたはずみでローブのフードが落ち、ヘアバンドが露になる。

角が成長したからか、ヘアバンド越しでも角の存在がはっきりと見えた。

ルバークはすぐにフードを被り、笑っていた。


また、心がざわざわと動いているのが自分でもわかった。

目を瞑って、深呼吸を繰り返す。

ルバークだろうか・・・背中を擦ってくれている。

「・・・ありがとうございます。落ち着きました。」

目の前には、自分も辛いはずのルバークが笑っていた。

「大丈夫よ。ダイク君。何も考えずに、魔獣木のところまで行きましょう。」

俺とロゼの手を引いて、歩き出す。

「ルバークさん、ギルドには行かないんだ!」

「わたしも行かないわよ。ロデオを連れていきましょう。」

「そっか!それがいいね!」


そうして、魔獣木を回収する旅に出た。




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