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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第77話 募る不安

誤字報告、ありがとうございます!

目を覚ますと、隣でロゼが寝ていた。

窓の外はすっかりと日が落ちて、大通りにも人影はない。

昨日も一人で夕飯を食べさせてしまったみたいだ。

椅子に座って、自己嫌悪に陥っていると、俺を呼ぶ声が聞こえてくる。


(ダイク・・・・・・ダイク・・・・・・。)


こんな時間に・・・と思ったが、はっきりと俺の名前を呼んでいる。

部屋の中を見渡すが、ロゼ以外いない。

窓の外から呼ばれているわけでもなさそうだ。

何度も繰り返し、名前を呼ばれている。

あまりにもはっきりと聞き取れるので、マザーのように頭に直接話しかけているのかもしれない。

何度も呼ばれるので、装備を整えて部屋を出てみる。


階段を下ると、酒場はもう終わったみたいで静かだった。

魔石の光も消えていて、おばさんも寝ているんだろう。

扉は鍵が掛かっておらず、出入りは問題なくできた。

外に出ても名前を呼ぶ声は止まらない。

どこから聞こえてくるのか、方角はわからない。

とりあえず、宿の周りを調べてみる。

厩舎の方へ行くと、ロデオが眠っていた。

冒険者ギルドも行ってみるが、ここからでもなさそうだ。

サンテネラの街をフラフラと、声の出所を探してみた。


「おい、お兄ちゃん。こんな時間にぃ何してるんだぁ?」

いきなり肩を組まれ、街灯の当たらない裏路地に連れ込まれた。

「何するんですか。やめてください。」

肩組を外して押しやると、全く知らないおじさんだった。

酒の匂いがきついので、酔っ払いだろう。

「なぁ、お兄ちゃん。痛い目をみたくなければぁ、金を置いていきなぁ。まだ若いんだぁ、死にたくないだろぅ。」

酔っ払いのおじさんは腰からナイフを取り出して、脅してくる。

足元はフラフラしているので、怖くもなんともなかった。

「お断りします。忙しいので失礼しますね。」

酔っ払いに構っている時間は無い。

声の主を探して歩き始めると、フードから何かが跳び出した。

「う、うわぁ。やめてくれぃー。」

酔っ払いはナイフを落として、腰を抜かしながら逃げていった。

「シラクモ、ついて来てたのか。」

そういえば、目覚めてからシラクモのことを見てなかった。

「ずっとフードの中にいたのか?」

シラクモは前足をあげて、俺の体をよじ登り、頭の上へと乗った。


あれっ、俺はなんでここにいるんだ。

空を見上げると、まだ真夜中だ。

さっきまでのことを思い出そうとしても、靄がかかったように思い出せない。

起きて自分で宿を出た記憶はある。

なんでこんな時間に宿を出たんだろう。

自分自身のことなのに、わからなかった。

「シラクモ、俺はどうしちゃったんだろう・・・。」

シラクモが頭の上にいることは、重みでわかった。

地面に下りて、何かを伝えようとしてくれるが解読はできなかった。


宿に戻ると、ロゼはまだ寝ていた。

起こさないように静かに装備を外して、ゆっくりとベッドに入る。

目を瞑ると、まるで何事もなかったかのように眠ることができた。


再び目を覚ますと、隣にロゼがいなかった。

お腹がすいて、先に朝食をとっているんだろうか。

顔を洗い、装備を整えて階段を下る。

「おはようございます。ロゼはどこに行ったのか聞いてますか?」

酒場のカウンターにもテーブル席にもロゼの姿が見えない。

しょうがないので、おばさんに聞いてみる

「おはよう!疲れはとれたかい?」

おばさんは近づいてきて、俺の顔をまじまじと見てくる。

「顔色はよさそうだけど、もう少し休んでもいいんじゃないかい?治療院で見てもらうのもいいかもしれないね。そうだよ、ルバークちゃんのお見舞いついでに診てもらっといでよ。」

俺の質問を置き去りにして、おばさんは話す。

「そうですね。そうします。で、ロゼはどこに行ったか分かりますか?」

「あぁ、ごめんよ。ロゼは朝早くにルバークちゃんのところに行ったよ!すぐに帰ってくるから待っててって言ってたよ。」

おばさんはそう言って、調理場へと行ってしまう。

一人でルバークのところに行ったのか・・・。

行くなら、起こしてくれればよかったのに・・・。

「なに、おっかない顔してるんだい?大丈夫だよ!ロゼのことは心配いらないさ!」

料理を並べながらおばさんが言う。

「まずは、自分の心配をしなよ!しっかりと食べて、しっかりと寝る。これが元気の秘訣だよ!昨日も食べてないんだ。まずは、しっかりとお食べよ!」

カウンターには所狭しと料理が並んだ。

「ありがとうございます。いただきます。」

残すのも悪いので、頑張って食べきった。

もうこれ以上は食べれない。

「ごちそう様でした。部屋に戻りますね。」

「はいよ!しっかり休むんだよ!」

返事をして、部屋へと戻る。


ベッドに横になって、ロゼを待つがなかなか帰ってこない。

結局、部屋へと帰ってきたのは昼前だった。

「ロゼ、ルバークさんのところに行ってたんだって?」

ドアが開くなり、問いかける。

「うん、遅くなっちゃってゴメンね!」

ロゼの脱いだローブからクガネが出てきた。

「行くなら言ってくれればよかったのに。」

「ダイク兄、まだ寝てたし。気持ちよさそうに寝てたから、起こすのも悪いと思って・・・。」

「・・・そうか。なら、いいよ。」

部屋が沈黙に包まれる。

これ以上話すと、イライラしてしまいようなので目を閉じた。


魔獣木は発見済みのものがまだ二か所、残っている。

回収に向かなければ、と思うものの体が動かない。

金貨の件もあるんだろうが、何だか、なにもしたくなかった。

魔熱病に罹る人を止められると初めは意気込んでいたのに、不思議なものだ。

特効薬のお陰で、熱の脅威はないんだから頭痛に苦しむだけで、治療院にいれば死ぬこともないだろう。

なんなら、角の生えた人が増えてルバークが住みやすい世界になるかもしれない。

悪いことばかりで無いようにすら思えてくる。

そんなことを考えているうちに、日が沈んでしまった。


「ダイク兄、そろそろ夕飯にしない?体調は大丈夫?」

大人しく椅子に座っていたロゼが立ち上がった。

「大丈夫だよ。・・・下に行こうか。」

「うん!行こうか!」

ロゼが部屋のドアを開けて、エスコートしてくれる。

重たい頭を起こして、階段を下っていく。


「ゆっくり休めたかい?顔色はまぁまぁってところだね。」

おばさんによる顔色チェックが入る。

「大丈夫です。休んだら、元気が出てきた気がします。」

元気のかけらもない、小さな声で言った。

「そうかい。ほら、カウンターでいいだろ?座って待ってな!」

おばさんは俺たちを座らせて、調理場に料理を取りに行った。

「ロゼ、今日はごめんな。俺、ちょっとおかしいんだ。何がって訳じゃないんだけど、ちょっとしたことでイライラしたりしてるだろ。」

「ダイク兄、いいんだよ。今日はボクもいけなかったんだ。ダイク兄に何も言わずに一人で出掛けちゃったから。ボクもごめんなさい。」

互いに謝りあい、笑った。

「はい、おまたせ!」

丁度いいタイミングでおばさんは料理を持ってきてくれた。

「ありがとうございます。いただきます!」

「おばさん、ありがとう!いただきます!」

「はいよ!お腹いっぱいお食べ!」

おばさんの返事を聞いてから、チキンステーキを一口齧った。


味を感じることができなかった。

臭いも全くしない。

せっかくいい雰囲気になったのに、ぶち壊すのはごめんだ。

ロゼに気取られないように、味のしない食事を口の中に運んだ。

風邪でも引いたかな。

不安を打ち消すように、風邪の症状が出ているだけだと強く思い込んだ。

食事の味は分からずに終わったが、ロゼが美味しそうに食べているのを見るだけで満足できた。


食事を終え、部屋に戻ると急激に眠気に襲われる。

あぁ、やっぱり風邪でも引いたのかもしれない。

「ロゼ、何だか眠くなってきたよ。先に寝てるね。」

「わかった。おやすみ、ダイク兄。」

早々にベッドに入り、目を瞑ると夢の世界へと誘われた。


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