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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第76話 自己嫌悪

「ダイク兄、涙が流れてるよ。どうしたの?」

頬を触ると、確かに水分が感じられた。

「どうしたんだろう。目にゴミでも入ったかな?」

服の袖で、目元をゴシゴシと擦る。

「大丈夫?ボクが見てみようか?」

「いや、大丈夫だよ。休憩は終わりにして、魔獣木の回収に行こうか。」

立ち上がって、滝の方を見る。

どう考えても滝を浴びなければ、洞窟の中に入る術がない。

「ロゼ、服は一旦、脱いでいこうか。」

周りに誰もいないのを確認して、下着もすべて脱いでアイテムボックスに収める。

「あの滝の裏に洞窟があるって言ってたから、少し寒いかもしれないけど我慢だよ。」

「うん、ボクは大丈夫だよ!」

川の中に入ると、水は冷たい。

我慢して滝を浴びながら超えると、そこには本当に洞窟があった。


濡れた体をタオルで拭いて、服を着て装備をつける。

「やっぱり魔獣はいないね。どこにいるんだろうね。」

滝の轟音が洞窟内に反響し、ロゼに俺の声は届かなかった。

ロゼも何か言っているが、いまいち聞こえない。

話にならないので、ひとまず先に進むことにする。

少し進むと、壁に行きついた。

洞窟の岩石とは明らかに違い、土でできた壁だった。

魔獣木を見つけた冒険者が、魔獣を溢れさせないように作った壁かもしれない。

魔法を使って壁を崩すと、目の前に魔獣木があった。

魔獣木の周りには魚の魔獣がピチピチと跳ねていた。

洞窟内に水は無いため、魚たちは何もできずにロゼに斬られていく。

鑑定で名前を見てみても、魚の魔獣としか表示されない。

見た目は様々で、毒々しい色合いの魚や日本で見たことあるような魚までいた。

水が無い中でなぜ生きていられるのかは分からないが、アイテムボックスに回収していく。

魚を回収しつつ、魔獣木の埋まっている部分を土魔法で解す。

本当にあっという間に終わってしまった。


来た道を戻り、服を脱いで滝を超える。

「あっという間だったね。」

ロゼもあまりの手ごたえの無い戦闘に微妙な顔をしている。

「まぁ、毎回魔獣に襲われるのも困るし、今回はこれでよかったんだよ。」

思いがけずに手に入った魚に、俺は満足していた。

何なら、ここの魔獣木は植えたままでもいいんじゃないかとすら思う。

サンテネラで魚でも売れば、一儲けできそうなものだが。

依頼だからしょうがないが、もったいない気もする。

「帰りは魔獣を倒しながらでいいんだよね!」

「あぁ、いいよ。」

川を出て、装備を整えてきた道を戻りつつ魔獣を倒していく。

ロゼは魚の魔獣よりも生き生きとしていた。


ヴィドの村まで見える限りの魔獣は倒した。


「もういいか?そろそろサンテネラに帰ろう。」

ロゼはまだ、キョロキョロしながら魔獣を探している。

「え~、でも、もういないみたいだからいいよ!」

唐揚げパンを食べながら、サンテネラへと歩いて帰った。


街に着くとギルドに直行する。

「依頼の報告に来ました。」

カウンターにいたキャサリンにそう告げる。

「お帰りなさい。ここで確認はできないので、上の試験場で見せていただいてもよろしいですか?マスターも同席してもらうことになってます。」

「いいですよ。先に上に行ってますね。」

「はい。マスターを呼んで、すぐに向かいますね。」

キャサリンは奥の扉へと入っていく。

「なんだか、毎回マスターが出てくるね。」

俺もロゼと同じことを思った。

面倒だが、仕方がないと諦めるしかない。

ロゼと並んで階段を上がって、すぐの部屋で待つ。


「待たせたな。早速だが見せてくれ。」

ジョセフは部屋に入ってくるなり、そう言った。

アイテムボックスから魔獣木を取り出す。

「一本だけじゃ違いが俺には分からん。今回で三つ目か?三本出してくれ。」

ジョセフの言う通り、魔獣木を計三本出す。

確認しているうちに魔獣木から実が落ちる。

「いいぞ、回収してくれ。実も頼むな。」

黙って言われた通り回収する。

「キャサリン、依頼は完了だ。手続きしてやってくれ。」

それだけ言って、ジョセフは部屋を出ていった。

一連のやり取りにイライラしている自分がいた。

冷静にみれば、なんてことないやり取りだったが、無性に腹が立っていた。

口を開けば嫌味でも言ってしまいそうだったので、黙っていた。

何なんだ、これは。

成長に伴う感情の揺れなんだろうか。


「ダイク兄、キャサリンさんも行っちゃったよ。ボーっとしてどうしたの?疲れちゃった?」

気がつけば、ロゼが心配そうに顔を覗いていた。

「あぁ、ゴメン。ちょっと考え事してた。帰ろっか。」

「違うよ!帰っちゃダメだよ!聞いてなかったの?」

「えっ、なんで帰っちゃダメなの?」

「報酬を貰わないとでしょ!」

「あぁ、そうだね。ごめんごめん。」

「ダイク兄、本当に大丈夫?何だか心配だよ。」

ロゼに心配され、頬に一筋の涙が流れるのを感じた。

見られないように後ろを向いて、袖口で素早く拭う。

本当にどうしてしまったんだろう。

自分で自分が分からない。

「どうしたの、ダイク兄?」

「何でもないよ。早く行こうか。キャサリンさんが待ってるよ。」

ロゼに顔を見られないように、ロゼの一歩先を歩いて階段を下った。


キャサリンはカウンターで俺たちを待っていた。

「すいません。お待たせしました。」

ペコリとキャサリンに謝る。

「いえいえ、気にしないでください。冒険者タグをこちらにお願いします。」

いつも通りのやり取りをして、報酬を貰う。

今回の報酬は金貨五枚だった。

「これは二人分ですか?」

「領主との話し合いで、この額と決まったようです。本当に少なくて申し訳ありません。」

「・・・そうですか。」

依頼を受ける前に確認しなかった俺も悪いところがある。

しかし、サラマンダーを一匹討伐で金貨二十枚だった。

しかも、サラマンダーを売ることでさらに金貨は増えた。

他の人が病気になるから、代わりに回収しに行ったのに、たったの金貨五枚か・・・。

「ダイク兄、また怖い顔してるよ・・・。」

「あぁ、ごめん。キャサリンさんもすいません。今日はこれで失礼しますね。」

ロゼの手を掴んで、ギルドを飛び出す。


「ダイク兄、痛いよ!ちょっと待って!」

無心で走ったため、ロゼの手を痛めてしまった。

「ごめん。ロゼ。・・・ごめん。」

掴んでいた部分をさすって、謝る。

「もう大丈夫だよ。ダイク兄は大丈夫?」

さすっていた俺の手に、ロゼの手が重ねられた。

まっすぐに見つめてくるロゼの目を見れない。

自分が情けなくて、目頭が熱くなる。

「ロゼ、今日は帰ろうか。ちょっと疲れちゃったよ。」

声が震えないように、お腹に意識して声を出した。

「うん、そうしよっか。」

宿は通り過ぎてしまったが、走ってきた道を戻り、宿へと帰った。


「お帰り、二人とも!あれっ、どうしたんだい、ダイク。顔色が悪いよ。」

おばさんが元気に迎えてくれた。

「ちょっと疲れただけです。部屋で休んでますね。」

そう言い残し、重たい足取りで部屋へと入る。

ロゼは部屋まではついてこなかった。

ベッドに横になっていると、頭の中には今日の出来事が浮かんでくる。

治療院でのこと、ギルドでのこと・・・。

思い返してもモヤモヤした気持ちが湧いてくる。

本当にどうしてしまったんだ・・・。


夕飯にはまだ早く、横になっているうちに眠ってしまった。


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