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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第75話 モヤモヤした気持ち

目を覚ますと、昨日までのモヤモヤした気持ちがすっきりと晴れていた。

よく眠れたからか、いつもより体調がいい気がする。

隣で寝ているロゼを起こさないように、窓際へと移動する。

朝日が差し込んでいて、いつもより街並みがきれいに見える。

「シラクモ、昨日はごめんな。ロゼを見ててくれて、ありがとう。」

頭の上に乗ってきたシラクモにお礼を言う。

ガラス越しにシラクモが、頭の上で喜んでいるのが見えた。

「ダイク兄、体調はどうなの?」

目を擦りながらロゼが聞いてくる。

「おはよう、ロゼ。心配かけたね。もう大丈夫だよ。寝たらすっきりしたよ。」

「そうなの?じゃあ、よかった!おはよう、ダイク兄!」

ロゼは勢いよく起き上がって、俺に飛び込んできた。

挨拶の順番がおかしいが、黙ってロゼを抱きしめる。

「顔を洗って、ご飯を食べに行こうか。」

身なりを整えて、部屋を出る。


「おはよう、二人とも!ダイク、あんた大丈夫なのかい?体調崩してるって聞いたけど。」

おばさんは朝から元気に働いている。

「おはようございます。寝たら良くなりました。ご心配をおかけしました。」

「そうかい?なら、いいのさ。座って待ってな。昨日はロゼが一人で寂しそうだったから、よかったよ。」

「それは言わなくていいよ!!」

おばさんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、調理場へと入っていった。

昨日はロゼに寂しい思いをさせてしまった。

申し訳ない気持ちになりつつも、怒っているロゼを見ると笑いが込み上げてきた。

「も~、ダイク兄、笑わないでよ!」

「ごめんごめん。そんなに怒らないでよ。」

和やかな雰囲気で、朝食を楽しんだ。


朝食を済ませて、ルバークのお見舞いに向かう。

「どのくらいでルバークさんは治療院から帰れるのかな?」

道すがらロゼが聞いてきた。

確かに、医師とは初日しか話せておらず、現状がよく分からない。

「治療院に行ったら聞いてみようか。」

ビクターも同じ治療院にいるのか聞いてみてもいいのかな。

家族がいるのかは知らないが、独り身なら寂しい思いをしているかもしれない。


治療院に入ると、病室には直行せずにメイド服の女性に聞いてみる。

「おはようございます。あの、聞きたいことがあるんですけど、いいですか?」

「おはよう、お姉さん!」

「おはようございます。どうぞ、何でもお聞きください。」

「あのー、ルバークさんはいつ頃退院できますか?あとは、ビクターさんっていう方は入院されてますか?」

「退院については、まだ未定です。先生はしばらく様子を見るとおっしゃってました。ビクターさんは上の病室におりますよ。階段を上がってすぐの病室です。」

「そうですか。わかりました。ありがとうございます。」

お礼を言って、ルバークの病室を訪ねる。

扉を開けると、ルバークは額を抑えて苦しそうな顔を浮かべていた。

「ルバークさん、大丈夫ですか!?」

俺たちに気がついたルバークは笑顔に変わった。

「おはよう、二人とも。大丈夫よ。ちょっと痛んだだけ。」

「本当に?」

「えぇ、痛み止めも貰って飲んだし、頭痛のようなものよ。」

「わかりました。でも、一応シラクモお願いできるか?」

フードからシラクモが跳び出して、ルバークに回復魔法をかける。

「ありがとう、シラクモ君。痛みがマシになったわ。今日はもう寝て過ごすわね。二人はギルドに行って依頼でも受けてきたらどう?」

「はい・・・。そうしますね。ゆっくり休んでください。」

ロゼの手を引いて、病室を出る。

廊下をそのまま走り、治療院も出た。

ビクターの見舞いどころではなかった。


「ダイク兄、ルバークさん大丈夫かな?」

ロゼも再び心配そうな顔になってしまった。

「大丈夫だよ。痛み止めの薬も貰ったみたいだし、休んでれば治るよ。」

ルバークは出会った当初、魔熱病について話していた。

高熱が続いて、治まったと思えばひどい頭痛に襲われたことを。

頭痛が治まった頃には、額から角が生えていたことを。

すでに頭痛のフェーズに入っているなら、新たに角が生えてくるんだろうか。

ルバークは角のことを気にしていた。

他の人には見せないように、気を使って生活している。

何が特効薬だとイライラが募っていく。

「ダイク兄、また顔が怖い顔になってるよ・・・。」

「ロゼ、魔獣木を回収しに行こう。これ以上、魔熱病に罹る人を出さないためにも。」

「うん、それは分かってるけど・・・。」

手を繋いで、冒険者ギルドに向かって走る。


冒険者ギルドに入ると、一直線にキャサリンの元へと進む。

「キャサリンさん、昨日ジョセフさんから受けた依頼をお願いします。」

「お、おはようございます。畏まりました。お待ちください。」

あまりの勢いにキャサリンはたじろいでいた。

たじろぎながらも、依頼について説明をしてくれた。

「こちらが新しい冒険者タグです。今お持ちのものは返却していただいて、こちらと付け替えてください。」

そう言って、タグをそれぞれの手に渡してくる。

タグにはCランク冒険者と書かれていた。

「ありがとうございます。こっちはお返しします。」

俺とロゼの分のEランクのタグを外して、返却する。

新たなタグを取り付けて、首にひもをかける。

EランクからCランクに上がったが、嬉しさは無かった。

「じゃあ、行ってきますね。」

「ダイクさん・・・。いえ、お気をつけて。」

キャサリンは何か言いたげだったが、言葉を飲み込んだ。


キャサリンから教えてもらった情報によると、三か所で魔獣木が見つかっていた。

今日は、ヴィドたちの村の近くにある魔獣木を回収に向かう。

サンテネラの街を出て、村の近くの川の上流に滝があり、その裏に洞窟があったらしい。

門を出て、ロゼを背負って身体強化を使って走って向かう。

魔獣自体は脅威では無いらしいが、ロゼの体力を温存しておく。

背負われるのを嫌がるかと思ったが、ロゼは何も言わなかった。

ヴィドたちの村を過ぎると、すぐに川が見つかった。

恐らく仮設の橋を設置した場所の支流なんだろう。

上流の方角には小さな山が見える。

川幅は狭いが、水の量は十分に流れている。

川の流れに逆らう様にしばらく進むと、激しい水音が聞こえてきた。

「ダイク兄、あそこじゃないかな?」

ロゼの指差す先には、山の中腹位にある断崖から水が激しく落ちてきていた。

「ロゼ、お腹すいてないか?」

背中からロゼを下ろして、聞く。

「すいてないけど、ダイク兄は疲れてないの?」

「大丈夫だよ。けど、休憩してから中に入ろうか。シラクモとクガネも出ておいで。」

水を一杯ずつ飲んで、少し座って休む。


「ここに来るまでの魔獣は倒してこなかったけど、いいのかな?」

ロゼが剣を素振りしながら言った。

「良くはないけど、今は魔獣木が優先だよ。ほかの魔獣は他の冒険者にお願いしよう。」

身体強化を使って進んできたが、その間も魔獣は見かけたが無視してきた。

ほとんどはウルフだったし、いちいち止まっていたら日が暮れてしまう。

ロゼの気持ちも分かるが、俺たちにもできる限界がある。

そんな言い訳じみた事ばかりを考えてしまう自分に、嫌気がさした。

「帰りに余裕があれば、倒しながら帰ろう。それでいいか?」

「うん、そうだね。ありがとう、ダイク兄!」

ロゼは嬉しそうにしていた。


そんな姿を見て、ロゼのことがやけに眩しく見えた。


ため息を一つついて、考える。

サンテネラに来てから、感情のコントロールがうまく効かない。

森にいた時からだっただろうか。

いや、そんなことはない。

ルバークの熱のおかげで気づかなかっただけかもしれないが・・・。


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