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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第74話 魔熱病と報酬

翌朝、宿で朝食を食べて、治療院を訪ねた。


病室に入ると、ルバークはベッドに座って魔道具をいじっていた。

顔色もだいぶ良くなっているように見える。

「おはようございます。体調はどうですか?」

「おはよう、ダイク君。ロゼ君も。心配かけたわね。もうだいぶ良くなったわ。」

「ルバークさん!!」

俺の後ろに隠れていたロゼが、ルバークに飛び込んだ。

「ロゼ、ルバークさんは病人なんだぞ!」

ルバークはそんなこと気にせずに、ロゼの頭を撫でる。

「フフフ、いいのよ、ダイク君。薬のおかげで熱もだいぶ下がったし、連れてきてくれてありがとうね。あんなに嫌がってたのが、馬鹿みたいね。」

「いいんです。あまりいい印象がなかったみたいですし、しょうがないと思います。まずは、しっかり治してくださいね。」

「そうだよ、ルバークさん!早く良くなってね!」

「ありがとう、二人とも。」

病室のドアがノックされる。

ドアの方を見ると、メイド服の女性が立っていた。

「お話し中すいません。これから検査が始まりますので、お引き取り願います。」

女性はそう言い残して、戻っていった。

「そういうことだから、二人はサンテネラを満喫してらっしゃい。」

ルバークはそう言い、俺たちを見送った。


ついこの前に来たばかりなので、買うものもない。

特にすることもないので、冒険者ギルドに寄ってみてもいいかもしれない。

「ロゼ、何か簡単な依頼でも受けようか。」

宿へと向かいながら、ロゼに話しかける。

「いいよ!ボクも行きたいと思ってたんだ!」

治療院から向かう先は変わらない。

行き先が宿から、宿の近くにある冒険者ギルドに変わっただけだ。

ロゼと手を繋いで、大通りを曲がって裏路地へと入っていく。


ギルドに入ると、すぐのところにある掲示板に直行する。

討伐系の依頼は相変わらずに高ランクのみが対象となっていた。

「これでいい?」

手ごろな薬草採集の依頼を指差して、ロゼに聞いてみる。

「う~ん、まぁ、しょうがないよね。それにしよっか。」

しぶしぶ納得してくれた依頼を剥がして、受付にいるキャサリンのところに持っていく。

「これ、お願いします。」

「ダイクさん、ロゼさん。申し訳ありませんが、こちらはお受けできません。」

「えっ、なんで!?」

「詳しくはマスターからお話しします。解体部屋の奥の部屋でお待ちいただけますか?」

「は、はい。わかりました・・・。」

返事を聞くと、キャサリンはカウンター奥の部屋へと入っていった。

よく分からないが、依頼を受けられなかった。

しょうがないので、解体部屋へと向かう。


「こんにちは。リンデンさん。」

解体部屋のドアを開けると、すぐにあるカウンターでリンデンは書類仕事をしていた。

「おう、お前たちか。ルバークが大変だったみたいだな。アルから聞いたぞ!」

書類仕事の手を止めて、俺たちに向き合う。

「で、今日は何を持ってきたんだ?」

「何も持ってきてません。キャサリンさんに奥の部屋で待つように言われたんです。」

「そうだよ。ボクたち、依頼を受けれなかったんだよ!」

ロゼが頬っぺたを膨らませながら言う。

「ガハハハ、そうか。残念だったな!だが、お前たちにとっても悪い話だけじゃないはずだぜ。大人しく奥の部屋で待ってるんだな。鍵は掛かってないから、好きに使ってくれ。」

悪い話もあるのか・・・。

奥の部屋に行くのが、嫌になってしまう。

「も~、ダイク兄、早く行こうよ!」

ロゼに手を引かれて、奥へと連れていかれる。

振り返ると、リンデンは手をひらひらと振っていた。


それぞれソファに座って待つと、ジョセフが入ってきた。

「待たせたな。」

険しい顔をして、ソファにドカッっと勢い良く座る。

しかし、ジョセフは話し出さずに部屋の中が沈黙に包まれた。

「ねぇ、なんでボクたち依頼を受けられないの?」

ロゼが沈黙を破ると、ジョセフはしゃべりだす。

「魔熱病が、また流行ってるんだ。治療院で聞いたか?」

「増えているとは聞きましたけど・・・。それが俺たちと何か関係があるんですか?」

「魔熱病に罹っているのは、冒険者だ。・・・しかも、魔獣木を見つけた者たちなんだ。」

たしか、ビクターも体調が悪いって聞いたな・・・。

「ダイク。お前、言ってたよな。月明かりで光ってたって。この街の外壁から確認させたんだ。そうしたら、いくつか光ってる場所が見つかった。Cランク以上の冒険者たちを集めて、派遣したわけだ。で、見つけて帰ってきたと思ったら体調不良で倒れだしてな。」

ジョセフは頭を抱えながら、話を続ける。

「魔獣木を探索に向かわせた全員が、魔熱病に罹ってるんだ。俺の知る限り、魔獣木を見つけて病気に罹ってないのはお前たちだけだ。悪いがお前たちには魔獣木の回収に向かわせるために、依頼は受けられなくしてある。」

以前、魔獣木を見せたことのあるジョセフ、アル、ヴィドは病気になっていない。

原因は魔獣木の生えている場所にあるんだろうか。

魔獣木自体に害はなくとも、土が汚染されるなんてこともあるのかもしれない。

腕を組んで考え込んでいると、ロゼが体を揺らしてくる。

「ダイク兄、マスターがすごい顔で見てるよ。」

ロゼに言われ、ジョセフの方を見ると、険しい顔がさらに険しくなっていた。

「頼めるか?」

ロゼの顔を見ると、頷いている。

「わ、わかりました・・・。」

有無を言わさない感じであったが、しょうがないんだろう。

ジョセフの顔には疲れも見える。


「すまんな。次に、魔獣木発見の報酬の件だな。先日、領主が来て話し合ったんだ。」

忘れていたが、そんな話があったと言われて思い出した。

ロゼは興味がないのか、隣でクガネと遊んでいる。

「・・・はい。」

「残念だが、払える金額はこれだけだ。」

ジョセフが懐から小さな袋を取り出し、テーブルに置いた。

ロゼはそれを取って、中身を確認している。

「え~、これだけなの?」

俺も見せてもらうと、金貨が十枚ほど入っていた。

「これでも、渋る領主から搾り取ったんだ。それで許してくれとは言わない。お前たちの冒険者ランクを上げてやる。それで手を打ってくれないか?頼む。」

ジョセフは座りながら頭を深く下げた。

「ジョセフさん、頭を下げる必要はありません。俺はそれでいいですよ。」

「ボクもそれでいいよ!」

冒険者のランクが上がると聞いて、ロゼは大喜びだ。

ルバークは納得してくれるかはわからないが、この話はもう終わりにしたい。

お金に困ってる訳でもないし、何より面倒だった。

今日も簡単な依頼を受けて、宿に帰るはずだったのに・・・。


ハッとした。

気がつけば、自分の中にマイナスな感情があふれていた。

最近はルバークの心配と世話、強硬旅程で疲れでも溜まっているんだろうか。

昨日も心配からか、寝ても何度も夜中に目を覚ました。

「ジョセフさん、今日はここまででいいですか。何だか、疲れてしまって。」

回答も聞かずに立ち上がる。

「そうか。・・・いいぞ。」

「ロゼ、行こうか。」

「ダイク兄、これ忘れてるよ。」

振り返ると、ロゼが金貨の入った小さな袋を持っていた。

「ロゼが持ってていいよ。」

「ううん、ボクはいらないよ。ダイク兄、持ってて!」

俺の手に握らせてくるので、アイテムボックスに放り込む。

「じゃ、失礼しますね。」

「あぁ・・・。」

話が中途半端なまま、退室して宿へと戻った。


「ダイク兄、大丈夫?」

宿に戻るなり、部屋へと駆け込みベッドに潜った。

「大丈夫。疲れてるだけだと思うよ。お腹もすかないから、夕飯はいらないっておばさんに伝えてくれるか。」

「・・・わかった。」

俺が目を瞑ると、ロゼは静かには部屋を出ていった。

シラクモは隣で静かに俺を見つめている。

「シラクモ、ちょっと疲れたんだ。ロゼのことを頼むよ。」

そう言い終わると、眠気に襲われて意識を失う様に眠った。

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