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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第73話 治療院

20万字突破しました。

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。


冒険者タグを見せて、街の中へと入る。

ほぼ一日、走り通したロデオの息が上がってしまっている。

飲まず食わずで休むことなく、頑張ってここまで連れてきてくれた。

「すいません。ここからは歩きでいいですか?」

「いいが、どうしてだ?このまま連れていった方がいいんじゃないか?」

「ロデオは森から休まずに走ってくれたんです。先に休ませてあげたいんです。ロゼ、ロデオを宿に連れていってくれるか?」

「ダイク兄は来ないの?」

「俺は先にルバークさんを治療院に連れていくよ。」

「そう・・・わかった!」

「ルバークさん、背負いますよ。」

ぐったりとしているルバークに声をかけて、背負う。

「案内は俺がする。アルはロゼと一緒に行ってやれ。」

ヴィドがそう言って、立ち上がる。

「おう、こっちはおいらに任せとけ!ダイク、転ぶなよ!」

「わかってます。アルさん、ロゼのことお願いします。」

荷車から、なるべくルバークに負担が掛からないように、ふわりと飛び下りる。

ヴィドも続いて荷車から下りた。


手綱を操り、ロゼたちは裏路地へと入っていった。

「行くぞ。こっちだ。」

ヴィドは大通りを進んでいく。

背中からはルバークの熱が伝わってくる。

抱きしめられた時とは違って、かなりの高熱であることがわかる。

負担にならないように、出来る限り気を使って歩いた。

大通りをしばらく進んだ一角に治療院はあった。

「ここだ。入るぞ。」

ヴィドが治療院のドアを開けて、待ってくれていた。

「ありがとうございます。」

お礼を言って、ドアをくぐる。


「どうなさいましたか?」

カウンターからメイド服のようなものを着た女性が声をかけてきた。

「六日ほど前から熱が引かなくて、連れてきました。」

カウンターまで行って、状況を説明する。

「わかりました。お名前を・・・その前にベッドを持ってきますね。」

女性はカウンターから離れて、廊下から見える部屋からベッドを転がして持ってきた。

「こちらに寝かせてあげてください。」

車輪の付いたベッドに、ルバークをゆっくりと下ろす。

ヴィドも手伝ってくれて、静かに下ろすことができた。

「文字は書けますか?」

頷いて答える。

「では、こちらにこちらの女性についてお書きください。」

羊皮紙が手渡され、中には名前や年齢、病状を書くようになっていた。

病状の欄には、この六日間のことを詳細に書いておいた。

「これでお願いします。」

「ありがとうございます。では、こちらでお待ちください。」

メイド服の女性に書いたものを渡すと、ベッドを動かして廊下の奥へと消えた。


壁際にあった椅子に座って、待つことにする。

治療院の中は、消毒の臭いが漂っていた。

「大変だったな。」

ヴィドが隣に座り、頭を撫でてくる。

「ヴィドさん、案内ありがとうございました。もう戻りますか?」

「いや、アルもロゼを連れて、ここに来るだろ。それからでいい。」

「そうですか・・・。そういえば、ルーナさんは元気ですか?」

「あぁ、子供も生まれたし、元気にしてる。」

「おめでとうございます。」

「あぁ、今度ルーナに直接伝えてやってくれ。今はルバークのことで頭がいっぱいなんだろう。無理に話すことは無い。」

ヴィドに心を見透かされているようだった。

「すいません・・・。」

治療院の中は沈黙で包まれた。


「ダイク兄、ルバークさんは?」

勢いよく扉が開いて、ロゼが駆け込んでくる。

「奥に連れていかれたよ。ここで待つように言われたんだ。」

それを聞いたロゼは、俺の膝の上に座ってくる。

「ダイク、ロデオはちゃんと預けてきたぜ。宿も一部屋取っておいたから、今日はあの宿に帰れよ。」

「ありがとうございます。アルさん、ヴィドさん。」

「おう。俺たちはもう行くが、お前たち、顔が暗いぞ。ルバークに会うときは、明るい顔を見せてやれよ!」

それを聞いて、ヴィドが立ち上がる。

「大丈夫だ。ルバークは強い。病気になんか負けるもんか。」

俺とロゼの頭を交互に撫でながら、ヴィドが言う。

「そうだよね。ありがとう、ヴィドさん。アルさんも!」

ロゼの顔に笑顔が戻ってくる。

ヴィドとアルを見送ると、メイド服の女性が戻ってきた。


「お待たせしました。こちらへお越しください。」

先導するように、メイド服の女性は歩いていく。

いくつかの部屋を通り過ぎるが、中からは苦しそうな声が聞こえてくる。

それを聞いたロゼは、俺の手をギュッと握ってくる。

ルバークは一番奥の部屋に寝かされていた。

聴診器をつけた医師が、ベッドの脇に座っている。

「先生、お連れしました。こちらの方々です。」

俺たちを医師に紹介すると、メイド服の女性は戻っていった。

「お前さんたちか。この女性・・・ルバークじゃったな。連れてきたのは。」

立派な髭を蓄えた老年の医師は確認を求める。

「そうです。先生、ルバークさんは大丈夫でしょうか。もう六日も熱が下がったり上がったりを繰り返しているんです。」

「まぁ、そう焦りなさんな。今は薬が効いて、寝ておる。だが、静かに頼むよ。ほかの部屋にも寝ておる病人がおるもんでな。」

「すいません・・・。」

「ルバークは魔熱病に罹っておる。聞いたことはあるか?」

「は、はい。」

「ルバークには、魔熱病の既往歴がある。簡単に言えば、前にもこの病気に罹っておる。額の角がその証拠じゃな。二、三十年前に一度流行った病気だが、ここ最近にもまた患者が増えておる。」

医師はルバークのヘアバンドを捲って、角を見せてくる。

「ルバークさんは・・・治るの?」

「あれから特効薬が開発されてな。薬をしっかり飲めば、じきに良くなるだろう。」

「そうですか・・・はぁ~、よかったな。ロゼ。」

「ほんとだね。何だか疲れちゃったね。」

「今日のところは、帰って休みなさい。ここにおってもできることは無いからのう。」

「先生、ルバークさんのこと、よろしくお願いします!」

「お願いします!」

深く頭を下げて、ルバークのことを頼む。

「わかっておる。安心せい。さぁ、今日は帰りなさい。」

医師は立ち上がり、俺たちの背中を押して病室から追い出された。


廊下を歩いて出口に向かう。

メイド服の女性にペコリと頭を下げて、治療院を後にする。

「連れてきてよかったね、ダイク兄!」

余程嬉しかったのか、俺の手を握ったまま変なステップを踏んでいる。

「そうだな。先生も治るって言ってたし、もう安心だな。」

手を繋いだまま、宿へと歩く。

あまりご飯も食べずにここまで来たので、安心したらお腹が鳴りだす。

治療院でどのくらいの金額がかかるのかを聞き忘れたが、問題は無いだろう。

それなりの金貨が、アイテムボックスには入っている。

ルバークの命が助かるのならば、すべてを差し出しても構わない。

そんなことを考えていると、宿に着いていた。


「二人とも、大丈夫だったかい!?」

宿のおばさんは俺たちを見つけるなり、駆け寄り、力強く抱きしめてくる。

「おばさん、落ち着いてください。ルバークさんは大丈夫です。薬を飲めば、治るって治療院の先生が言ってくれました。」

そう言っても、おばさんの手は緩まない。

鼻をすする音が聞こえているので、泣いているところを見られたくないのかもしれない。

「そうかい。それは、よかった。本当によかったよ。」

グスッと鼻をすするおばさんの目は、真っ赤になっていた。

「おばさん、ボクお腹すいちゃった。」

「ハハハ、そうだね。あたしも安心したからか、お腹がすいてきたよ。すぐに作るから、座って待ってなよ!」

豪快に笑いながら、おばさんは厨房へと行ってしまう。


空きっ腹におばさんの作る食事は、とても美味しかった。


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