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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第72話 再び、サンテネラへ

ルバークの体調は、悪くなっていく一方だった。

熱消しを飲むと少しは楽になるみたいだが、すぐに熱がぶり返す。

じゃが芋を収穫してから五日経ったが、一向に回復する兆しが見えない。


「ねぇ、ダイク兄。ルバークさんこのままじゃ・・・。」

ロゼが不吉なことを口走りそうになる。

「ロゼ、それ以上はダメだ。“言霊”って言って、言葉には魂が宿るんだ。こういう時は、なるべくいいことを考えるんだ。ルバークさんが治ったらこんなことしたい、とかね。」

フラグとも言えるが、そんなものは立てさせないし、立ってもへし折ってやる。

「でも・・・。」

ルバークが体調を崩してから、ロゼはずっと元気がなかった。

どこかの治療院に連れていきたいのだが、ルバークが拒否をしている。

シラクモの回復魔法もかけてはみたが、体調は回復しなかった。

正直、もう俺たちには打つ手がない。

何とかルバークを説得して、治療院へ連れて行かなければならない。

「ロゼ、ルバークさんをサンテネラの治療院へ連れて行こう。もう、俺たちに出来ることはない。治療院でなら治してくれるかもしれないんだ。」

「でも、ルバークさんは嫌だって・・・。」

「説得をお願いしてもいいか。俺はマザーに出かけることを報告してくる。戻ってきたらすぐに出発しよう。」

「うん・・・。頑張ってみる!」

ルバークのことをお願いして、俺は家を出た。


身体強化を使って、森の中を猛スピードで駆け抜ける。

シラクモはルバークに何かあった時のために、そばに付いてもらっている。

頭がいつもより軽く、少し寂しさを感じた。


マザーの住まう大木を登っていく。

「マザー!急で悪いんですけど、出掛けてきますね。ルバークさんをサンテネラの治療院に連れていかないといけないんです。ここ最近、体調を崩してまして・・・。」


(そうか。森のことは気にすることは無い。連れていくといい。)


マザーは呆気なく了承してくれた。

あとは、ルバークを説得するだけだ。

ロゼがうまいことやれていればいいが・・・。

「ありがとうございます。急ぐので、これで失礼します!」

マザーの返事も待たずに、大木を下る。


(気を付けて、行きなさい。)


マザーの返事が頭に響いた。

「行ってきます!!」

大木の下で、マザーに届く様に大声で返した。

再度、身体強化を使って家へと急ぐ。


家に入ると、ロゼの姿はまだ見えない。

ルバークの説得に手こずっているんだろう。

階段を上がって、ルバークの部屋に入っていく。

「ダイク兄、お帰り・・・。」

ロゼがルバークの手を握って、説得している最中だった。

「ダイク君、わたしは・・・フゥ、大丈夫よ。このまま寝てれば・・・フゥ、よくなるわ。」

息苦しいのか、言葉が途切れ途切れにしかしゃべれないようだ。

「ルバークさん、治療院に行きましょう。もう、マザーには出掛けることを伝えました。」

ロゼとは反対のベッドの脇に行って、ルバークの手を握る。

「お願いします、ルバークさん。一度でいいので、診てもらいましょう。こんなに辛そうなルバークさんを、このままにしておけないんです。」

「お願い、治療院に行こうよ。ルバークさん。」

「・・・。」

ルバークは目を閉じたまま、返事は無い。

「畑のじゃが芋も採ったんだよ。早く良くなって、一緒に食べようよ。」

「・・・。」

「このままじゃ、魔道具の研究もできませんよ。いいんですか?」

「・・・。」

「わかりました。この手は使いたくなかったんですが・・・。シラクモ、ルバークさんを糸で縛ってくれるか?」

「ま、待って。フゥ、行くわよ。フゥ・・・。」

諦めにも近い言葉が、ルバークの口から漏れ出た。

「ありがとうございます。準備をしてくるので、少し休んでてください。」

ロゼを連れて部屋を出る。


「ロゼは先に裏庭に行って、ロデオの準備を頼むよ!」

それを聞いて、ロゼは短い返事をして階段を下っていった。

俺は客室へと入り、寝具一式をアイテムボックスに入れる。

一応、予備として自室の寝具一式も持っていくことにする。


裏庭へと行くと、ロゼがロデオに荷車を取り付けていた。

魔法で荷車をきれいにして、寝具をのせて再び魔法できれいにする。

「ロデオ、これからルバークさんを治療院に連れていくんだ。走ってくれるか?」

願いを込めて、ロデオに話しかける。

いつもなら微動だにしない、ロデオの顔がこちらを向いた。

わかってくれたんだろうか。

「ダイク兄、準備できたよ!」

荷車を繋ぎ終えたロゼが言った。

「ルバークさんを連れてくるから、ロデオと待ってて!」

そう言い残して、ルバークの元に急ぐ。


「ルバークさん、行きますよ。立てますか?」

腕を支えて立たせてみるが、フラリとベッドに座り込んでしまう。

「ちょっと、失礼しますね。」

ルバークの手を肩に回して、背負う。

あまり食事を摂らないので、痩せてしまったことを背中越しに感じた。

「行きますよ。シラクモも行くよ。」

シラクモはルバークがいるからか、後ろをついてきた。

負担にならないように、ゆっくりと階段を下りて裏庭へと抜ける。


身体強化を使って、荷車に一跳びで乗り込む。

ルバークを寝具の上にそっと下ろし、掛け布団を肩までかけてやる。

「寒くないですか?」

コクリと頷いたので、出発することにする。

「ロゼ、行こう。」

御者台に座っているロゼに合図を送る。

「わかった。行くよ、ロデオ。」

ロゼが手綱を引くと、ロデオは走り出した。

最悪の場合、背負って走ることも考えていた。

しかし、ロデオもルバークのことを思ってか、ゆっくりと進んでくれている。

少しの揺れはあるが、ルバークは寝てくれた。


「シラクモ、ルバークさんに付いててくれてありがとうな。」

額のタオルを取り換えながら、シラクモに気持ちを伝える。

お礼を言われたのが嬉しかったのか、前足をあげてクルクルと回っていた。


暗くなってきても、ロデオは止まらない。

シラクモがロデオに回復魔法をかけてあげていた。

俺とロゼは、御者を交代しながら休みを取ったが、ロデオは止まらない。

夜が明けても止まらない。

シラクモが何度か魔法をかけていたが、ロデオのことも心配になってくる。

ついには、仮設の橋が見えてきた。


橋を越えた先の分帰路で、俺たちを呼ぶ声が聞こえてきた。

「お~い!ダイク!ロゼ!」

走りながら近づいてきて、荷車の空いたスペースに乗ってきた。

「どうしたんだ、こんなところで?帰ったんじゃなかったのか?」

「アルさん!ヴィドさん!」

「ルバークさんが病気なんです。ここ数日ずっと体調が悪くって、治療院に連れて行くところです。」

病気と聞くなり、アルの声は小さくなる。

「そういえば、ビクターの奴も体調を崩してるって言ってなかったか?」

「あぁ。」

ビクターも体調を崩しているのか。

「お二人は何をしてたんですか?」

「おいらたちは、定期的に村の様子を見に行ってるんだ。今もその帰りだな。」

ヴィドたちはまだ村に帰れていないのだろう。

話しぶりからそんなことを感じ取った。

「そうでしたか。治療院の場所って知ってますか?わかるなら案内をお願いしたいんですけど・・・。」

「あぁ、知ってるぜ!おいらたちに任せとけって。」


新たにアルとヴィドを乗せて、サンテネラに辿り着く。


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