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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第70話 帰りの支度

夢の中で、部屋の扉をノックする音が聞こえてくる。


ハッとして目を覚ます。

昨晩はベッドの上で考え込んで、そのまま寝てしまったみたいだ。

窓の外はすっかりと明るく、日差しが入ってきている。

ノックの音は夢ではなく、現実に鳴っていた。

体を伸ばしながら、部屋の扉を開ける。

「おはよう、ダイク君。まだ寝てたかしら?」

ルバークがいつもと変わらない笑顔で立っていた。

「ルバークさん・・・、おはようございます。どうぞ、入ってください。」

「ロゼ君はまだ寝てるのね。」

ルバークは部屋に入って、ロゼの寝顔を眺めている。

眺め終わると窓際に移動して、お茶を淹れだした。

俺も窓際へと行き、ルバークの向かいに座る。


「昨日はごめんなさいね。報告を任せちゃって。疲れてたから、先に休ませてもらったわ。」

ルバークはお茶を啜りながら話す。

「それで、魔獣木の報告はしたのよね?どうなったのか聞いてもいいかしら。」

ルバークがいなくなってからのことを、俺は掻い摘んで話した。

「そう、ありがとね。ダイク君。」

いつもの優しい笑顔のルバークが目の前にいた。

「今日の予定は解体をお願いしていたので、それを清算するのみです。今日にでも帰りますか?」

「そうね。買い物も済んでるし、ギルドに寄ったら帰りましょうか。」

本人を前にすると、話を蒸し返すのも悪い気がして聞くことはできなかった。

今のルバークの笑顔を崩す勇気はなかった。

ルバークから相談があれば乗るくらいでいいのかもしれない。


お茶を飲み終わった頃に、ロゼも目を覚ました。

装備を整えて荷物をすべて持ち、部屋を出る。

「おはよう!今日はゆっくりだったね。朝食は用意できてるよ!早く座んなよ!」

朝から元気なおばさんは、トレーに三人分の食事をのせて一気に持ってきてくれた。

「「おはようございます!」」

「おはよう、おばちゃん。わたしたち、今日で帰ることにするわ。清算をお願いしてもいい?」

「何言ってんだい。代金は冒険者ギルドからもう貰ってるよ。」

「最初の数日分しかリンデンさん、渡してなかったんじゃないですか?」

「あの後も一度来て、お金を置いてったよ。まぁ、まずは温かいうちにお食べよ!」

俺たちの知らないうちに、リンデンは世話をしてくれていたみたいだ。

サンテネラでの最後の食事は、いつも通り美味しかった。


「ごちそう様、おばちゃん。ギルドに寄ってから帰るから、ロデオは後で迎えに来るわ。」

「そうかい。また来るんだよ。ルバークちゃん。」

ルバークとおばさんは熱い抱擁を交わしている。

「二人もまたおいでね。」

「「はい!」」

お礼を言って、宿を出た。

おばさんは宿の外まで見送りに出てきてくれる。

ギルドに入るまで、おばさんは手を振ってくれていた。


冒険者ギルドの中は、いつにも増して混み合っていた。

人混みを掻き分けるようにして解体部屋へと行く。

「リンデンさん、おはよう!」

ロゼが元気な挨拶をすると、リンデンが解体の手を止めてこちらへやってくる。

「おう、早いな。まだ解体しきれてないのが残っているぞ!」

壁際にはサラマンダーが、十数体残っていた。

「おはようございます。今、解体できている分だけで構いません。残っている分はビクターさんにあげてください。ルバークさん、ロゼ、それでいいかな?」

「わたしは構わないわ。」

「ボクもいいよ。それで!」

「そうか。済んでる分の清算を用意するから、そっちのカウンターの前で座って待っててくれ。」

そう言って、リンデンは書類仕事に取り掛かった。

リンデンに言われた通り、受付のカウンター前のテーブルで待たせてもらう。


ルバークはマジックバックから茶器を取り出す。

お茶を淹れながら、優雅に待っている。

しかし、ギルド内は優雅とは言い難く、人の出入りが激しかった。

「なにかあったのかな?」

ロゼが疑問に思うほどに、慌ただしかった。

カウンターにキャサリンはおらず、聞ける人もいないので何があったのかは分からない。

俺とロゼも大人しくお茶を啜って、リンデンを待った。


しばらく待っていると、解体部屋の扉が開きタンクトップが姿をみせる。

「おう、用意できたぞ。こっち来てくれ!」

喧騒に負けない大きな声で、リンデンは俺たちを呼んだ。

「わたしはここで待ってるわね。二人でいってらっしゃい。」

ルバークは茶器を片付けながら言った。

「わかった!行ってくるね!」

ロゼは俺の手を引いて、解体部屋へと入っていく。


解体部屋のカウンターには見たことのない数の金貨が、ずらりと並んでいた。

「全て買取でいいんだよな?」

リンデンが羊皮紙を渡しながら聞いてくる。

「はい、買取でお願いします。」

羊皮紙を確認すると、サラマンダー一匹が金貨十枚近い金額で買取られていた。

「サラマンダーってこんなに高いんですか!?」

「こいつはな、皮が高く売れるんだ。傷もほとんど無いから、色を付けといたぜ!」

傷の具合で値段は多少下げられているが、金貨千枚近くの買取金となった。

アイテムボックスに入れて、羊皮紙に書かれている金額と相違ないか確かめる。

麻袋を取り出し、金貨二百五十枚を入れてリンデンに渡す。

「これはビクターさんに渡してもらえますか?だいたい四等分にした金額が入っています。残りのサラマンダーの分もここに入れてもらえば、文句は出ないと思います。」

「構わんが、自分で渡したらいいんじゃねぇのか?」

「ボクたち、これから帰るんだよ!」

サラマンダーをいじっていたロゼが、こちらを振り返りながら言った。

「そうか・・・。それがいいのかもな。よしっ、これはちゃんとビクターに渡しとくぜ!」

「あと、宿の清算をしてくれていたみたいで、ありがとうございました!」

「いいんだ。マスターには俺からしっかり伝えておくぜ。気を付けて帰れよ。悪かったな、サンテネラまで来てもらうことになっちまって。」

「いえ、俺たちも来たかったので気にしないでください。」

「じゃあね、リンデンさん!」

「また、来ますね!失礼します。」

解体部屋を出て、ルバークの元へと戻る。


しかし、ルバークは先程の席にはいなかった。

「あれっ!?ルバークさん、いないよ、ダイク兄・・・。」

周りを見渡してみるが、姿は見えない。

お手洗いにでも行ってるんだろうか。

「すぐに戻ってくるよ。ほら、座って。」

すれ違いになるのも困るので、ロゼを座らせて静かに待つことにする。


ルバークはカウンターの奥の部屋からキャサリンを連れて戻ってきた。

「ルバークさん、どこに行ってたの?」

「もう終わったの?待たせちゃってごめんなさいね。マスターに挨拶してきたの。何だか忙しそうだにしてたけどね。」

ロゼの頭を撫でて、宥めるように言った。

「あの、よろしいでしょうか。」

キャサリンがルバークの後ろから、小さく手をあげて発言を求める。

「おはようございます、キャサリンさん。どうしたんですか?」

「情報報酬の件です。領主様がサンテネラに出向くことになりまして、まだ話はまとまっておりません。申し訳ありません。」

キャサリンは深く頭を下げた。

「あ、頭をあげてください。急いでないので、じっくり話し合って決めてください。今度来た時に貰えれば十分です。」

「そうだよ、キャサリンさん!ボクたちまた来るから、気にしないで!」

ロゼはキャサリンの頭を撫でて言った。

「そういうことよ。じゃ、わたしたちは行くわね。」

「はい、お気をつけて。」

再び、キャサリンは頭を下げた。

俺たちも頭を下げて、冒険者ギルドを出た。


宿の裏手にある厩舎にロデオを迎えに行き、荷車に乗り込む。

門を出て、しばらく進むと仮設の橋が見えてくる。

橋の修復工事はまだ始まってなかったが、仮設の橋にはいくらかの人がいた。

ルバークが仮設の橋のことを見て、褒めてくれた。

ロデオは軽快な足取りで進むので、いつもより早く帰れることだろう。


長かったようで短い、森の外での活動が終わった。


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