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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第69話 離れた心

「ん?ここは・・・無事に生きて帰ってきたんだな。」

ビクターは目を擦りながら、何度も周囲を確認している。

「そうね。早くロデオを迎えに行って、帰りましょう。日が暮れちゃうわ。」

「そうだね、急がないとね!」

ロゼは急に消え去った鳥籠車に不服そうな顔をしていたが、ロデオの話が出ると笑顔に変わった。

「助かったぜ、ダイク。よく分からんが、よくやった!」

ビクターは俺の頭をポンと叩いて、休憩所の方へと歩き出した。


鳥籠車は休憩所の近くまで、うまいこと下ったみたいで歩きですぐに着いた。

ロデオの手続きを済ませ、荷車に乗りこんで走り出す。

時間も夕暮れ前ということもあり、登ってくる馬車は見えなかった。

すれ違い待機の必要もないと、さほどの時間を要さずに下ることができた。

「まだ時間はあるわ。このままサンテネラを目指してもいいかしら?」

ルバークは御者台からチラッと振り返り、ビクターに聞いた。

「まぁ、別にいいが。ルバークは疲れてないのか?」

「わたしは大丈夫よ!ギルドへの報告はお願いするから、あなたたちは休んでいて。」

ビクターはそれを聞くと、荷車に横になった。

「ボクも眠くなってきたな。」

「いいよ。疲れたんだろ。少し眠るといいよ。」

ロゼは俺に寄りかかって、目を閉じた。


フィリムの街では一度も止まることなく、過ぎ去っていく。


サラマンダーを討伐しているときは、ルバークに特に変わったところは無かった。

しかし、フィリムの街を通る際にはフードを深く被って通り過ぎていた。

考えすぎかもしれないが、やっぱりどこかおかしい。

ビクターとロゼは疲れ切って、寝てしまっている。

騒ぐわけにもいかずに、日の落ちた街道を魔法で行く先をただ照らして過ごす。


「ダイク君、もう少しで着くわ。二人を起こしてくれる?」

ルバークは薄い笑みをこちらに浮かべてそう言った。

俺は返事をして、二人の体を揺すってやる。

「もうすぐ着きますよ!起きてください!」

二人はのそりと体を起こして、目を擦っている。

「すっかり寝てしまったな。すまないな。」

「いいのよ。疲れていたんでしょう。さっきも言ったけれど、ギルドへの報告はお願いするわ。わたしはみんなを送り届けたら、そのまま宿に戻らせてもらうわ。」

「うん、わかった!まかせといて!」

ロゼはまだ眠そうだが、元気に答えていた。


ルバークは俺たちを冒険者ギルド前で下すと、すぐに行ってしまった。


心配でルバークのことを目で追うが、ビクターがギルドへ入れようと押してくる。

「ほら、早く行くぞ。」

ビクターだけでなく、ロゼも手を引っ張ってくるのでギルドへと入る。

カウンターまで引っ張られながらついていく。

「キャサリン、サラマンダーの討伐から戻ったぞ。」

「お早い帰りでしたね。・・・お怪我も無さそうで安心しました。」

俺たちの方を見て、嬉しそうな笑顔を見せてくれる。

「報告をしたいんだが、マスターはまだいるか?」

「マスターですか?少々、お待ちください。確認してまいります。」

キャサリンはカウンターの奥の扉へと消える。

「先に解体を頼みに行くか。二人とも、行くぞ!」

ビクターは人を呼び出しておきながら、カウンター脇の部屋へと入っていった。

呆気に取られて、反応が遅れて止めることができなかった。


「ビクターさん、待ってなくていいんですか?」

解体部屋へと追い、ビクターに聞く。

「あぁ、モノを見ればマスターも納得するだろ。リンデン、ここにサラマンダーを出してもいいか?」

部屋の奥で作業をしていたリンデンに、大きな声で呼びかける。

「おう、お前たちか。量にもよるな。ダイク、どのくらい持ってきたんだ?」

「百匹と少しです。」

何となく端数を誤魔化して言ったが、自分でも言っていておかしいと思った。

元の依頼は、サラマンダーを一匹討伐すれば完了するものだった。

それを、百倍以上の数を持って帰ってきたのだ。

「ふぅーーーー。お前たちについては考えるだけ無駄だな。そこの壁際にすべて出してくれ。」

リンデンが指示する場所に、サラマンダーをすべて出す。

「すまんな、リンデン。マスターを呼んでるから、俺たちは行くぜ。」

ビクターが部屋の出口へと振り向くと、固まってしまった。

俺も振り向くと、そこにはジョセフが腕を組んで立っていた。


「なぁ、ビクター。この山はなんだ?」

ジョセフがゆっくりと、気味の悪い笑顔を浮かべて近づいてくる。

「ま、マスター。落ち着いて話したいんだ。まずは、その顔を止めてくれないか?」

「その顔ってどんな顔だ?なぁ、ロゼ?」

「ジョセフさんの怒ってるんだか、笑ってるんだかが分からない顔じゃない?」

ロゼの回答に、思わず吹き出しそうになってしまう。

「おう、ダイク。何か面白いことでもあったか?」

ジョセフが顔をグッと近づけてくる。

「い、いえ、特に何もありません。」

「マスター、おふざけはそのくらいにして、奥の部屋で話を聞いてやってくれ。見ればわかるだろうが、異常事態だ。」

リンデンが助け船を出してくれる。

「フンッ、わかっとるわ。お前たち、ついて来い。」

ジョセフは解体部屋の奥にある、小部屋に入っていく。


「で、何があって、あんなにサラマンダーが積まれているんだ?」

席に着くなり、ジョセフは説明を求めてくる。

「俺からいいか?」

ビクターは俺たちに確認をとると、起こった出来事をジョセフに説明してくれた。


「また魔獣木か!?なんでお前たちの行く先には、魔獣木があるんだ?ハーーー。」

ジョセフは頭を抱えて、大きなため息をついた。

「今回の依頼はビクターさんが選んだものです。たまたま、行き先に生えていたというだけの話ですよね?それよりも、魔獣木の生えている場所の共通点の話をしましょうか。」

「・・・何か分かったのか?」

真剣な顔をこちらに向けてくる。

「まずは、魔獣が見当たらなくなります。」

ジョセフは首をかしげている。

「じゃあ、あのサラマンダーの山はなんなんだ?」

「巣穴の奥の奥にいたんだ。あいつらは、水中を潜って超えた先にアホ程いたぜ。」

「二つ目は、どちらの魔獣木も日の当たる場所に生えていました。」

「??。それが何だっていうんだ?」

「何だってことはないです。ただ、共通してそういう場所にあったというだけの話です。」

「・・・そうか。」

ジョセフは腕を組んで考え込む。

「あと、話半分で聞いてほしいんですけど・・・。」

鬼蜘蛛の森の家から、遺跡の方が光っていた話をした。

もしかしたら、月明かりに照らされて、反射しているのかもしれないという話を。

それを聞くと、ジョセフは部屋を飛び出していった。


「行っちまったな・・・。」

ビクターもジョセフの反応に驚いていた。

「ダイク兄、眠くなってきちゃった。」

ロゼが目を擦りながら言う。

「キャサリンのところに戻って、報酬をもらって帰るか。」

ビクターが立ち上がって、部屋を出ていく。

俺たちもビクターについて、部屋を出る。

「ダイク、ウルフの清算はどうする?サラマンダーとまとめてでいいなら、明日までには終わらせるぜ?」

リンデンがサラマンダーを解体しながら聞いてきた。

「じゃあ、それでお願いします。また明日、取りに来ますね。」

「おう、任せとけ!」


カウンターに着くと、すでに清算は終わったようだった。

ビクターが報酬の四分の三を渡してくる。

「ルバークの分も入ってるからな。疲れたから、俺も帰るぞ。じゃあな!」

手の中には、金貨が十五枚もあった。

鞄に入れるふりをして、アイテムボックスに入れておく。

「マスターがギルドを飛び出していったんですが、何かあったんですか?」

キャサリンがカウンター越しに、体を前のめりに倒して聞いてくる。

「すいません。話していいのか、俺にはわかりません。ジョセフさんに直接聞いてください。」

「そうですか・・・。わかりました。教えてくださり、ありがとうございます。」

「はい、疲れたので今日は帰ります。ジョセフさんに聞かれたら、そう答えておいてもらえますか?」

「承りました。ダイクさん、ロゼさん、お疲れさまでした。」

キャサリンは深々と頭を下げて、見送ってくれた。


宿に戻ると、おばさんが明るく迎えてくれる。

「お帰り、二人とも!お腹減ったろう?今用意するから、座って待ってなよ!」

混みあっている酒場のカウンターの隅に案内してくれた。

「ルバークさんはもう先に食べちゃいましたか?」

おばさんは困ったように笑った。

「疲れているんだろうね。今日はいらないって言ってたよ。部屋もルバークちゃんの隣の部屋が空いてるから、今日は二人でそっちに泊ってくれるかい?」

「はい。・・・わかりました。」


一人になりたくて、ルバークは先を急いだのだろうか。

それとも、気がつかないうちに俺たちがなにかしてしまったのだろうか。

考えるほどにマイナスな思考に支配されていく。

「ルバークさん・・・。どうしたんだろうね。」

ロゼも寂しそうな、不安そうな顔をしている。

考え事をしていたせいか、夕飯の味はよくわからなかった。

おばさんに部屋の鍵をもらって、ルバークの隣の部屋に入る。


部屋を直接訪ねようかとも思ったが、俺たちが原因かもと思うとノックできなかった。


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