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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第66話 サラマンダーの巣穴

王都へと繋がる山道は整備されているものの、道幅は狭い。

馬だけですれ違うのは簡単だが、荷車や馬車ではすれ違うことはできない。

所々に山肌を削ったスペースが用意されており、そこですれ違いながらじわじわと進んでいた。

「なかなか進まないね、ダイク兄。」

退屈そうにロゼが言う。

「道が狭いんだ。しょうがないよ。自分勝手に進んでもすれ違うことはできないから、余計に時間がかかっちゃうよ。」

「それじゃ、しょうがないね。」

膨らんだロゼの頬を潰したり、ルバークが淹れるお茶を飲んで時間を潰した。


山の中腹まで進むと開けた場所があり、休憩所が設けられていた。

「ここからは歩きだ。ロデオと荷車はあそこの馬小屋に預けるぞ。」

ビクターの指差す方向には何頭かの馬が、柵の中で自由に走り回っている。

来た道を振り返ると、辺りを一望できた。

「あそこがサンテネラかな?」

「そうだね。天気もいいから遠くまで良く見えるね。」

雲一つない青空が広がり、空気も美味しく感じる。

「あの辺りが鬼蜘蛛の森よ。ここから見ると、あまり大きくないから不思議よね。」

後ろには、フードを外したルバークが立っていた。

「ルバークさん・・・。」

向こうの馬小屋の方で、ビクターがロデオと荷車を預けているのが見えた。

「マザーは元気にしてるかな?」

「そうね、この依頼が終わったら家に帰りましょうか。」

「うん!そうしよう!!」

帰りの予定はこうして決まった。


「待たせたな、行くぞ。ついて来てくれ!」

ビクターが向こうから大声で、俺たちのことを呼んでいる。

「いま、行くよ~!」

ロゼはそう返事をし、俺とルバークの背中を押してビクターの元へと走った。

馬小屋の裏には、徒歩で山に入る道が整備されていた。

「しばらくはこの道なりに進むぞ。途中からは道がなくなるから、覚悟してくれ。」

整備された道を進むと、冒険者がウルフと戦っていた。

「あの人たちもボクたちと同じ依頼かな?」

「いや、あれはこの山の魔獣の討伐依頼だろうな。ここらの魔獣は彼らに任せて、俺たちは先に進むぞ!」

先頭を歩くビクターの足が早まる。


「シラクモ、クガネ、出ておいで。」

シラクモは俺の頭の上に、クガネはロゼの肩に出てくる。

山道を進むが、道から逸れた山の中にちらほらと冒険者が見えた。

冒険者の中には、少年少女の姿もあり、連携を取りながらウルフと戦っていた。

近くにベテラン冒険者が立っているので、初心者講習のようなものをしているのかもしれない。

たまにウルフが冒険者をすり抜け、俺たちを襲ってきたがシラクモとクガネに一蹴された。


休むことなく歩き続けると、整備された道が途切れた。

「ここからは足場が悪くなる。足元に気を付けながら、周囲も警戒してくれ。」

ビクターが注意を促す。

俺たちも頷いて返し、獣道や急斜面をゆっくりと歩いていく。


「見えるか、あの穴がサラマンダーの巣だ。」

道の先には切り立った崖が聳え立ち、所々に穴が開いていた。

「ビクター君はサラマンダー倒したことあるのよね?前はどうやってあの崖を登ったの?」

「崖に近づけばわかるが、足場が掘ってあるんだ。それを登るんだ。」

ビクターはそう言って、進んでいく。


崖を目の前にすると、とてもじゃないが足場を登る気にはなれなかった。

それほど高い場所にサラマンダーの巣穴が見える。

「ビクターさん、ちょっと待ってください。」

足場を登ろうとしているビクターを止めて、ルバークを見る。

「いいわよ。さすがにこれを登る気にはなれないわ。お願いね!」

ビクターは不思議そうにしているが、気にせず魔法で巣穴までの足場を作っていく。

「ダイク、お前こんなところで魔法を使って、大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ!」

なぜか、ロゼが代わりに答えてくれる。

「・・・そ、そうか。無駄な体力を使わずに済んだな。助かったぜ!」

新たにできた足場を使って、安全に巣穴まで全員が到着することができた。


下から見た巣穴は小さく見えたが、目の前にすると大きい。

荷車でも通れるほどの広さが奥まで続いている。

「いいか、サラマンダーの外皮は固い。無理に攻撃せずに、柔らかい腹を狙うんだ。」

ビクターはロゼに戦い方を教えてくれる。

「ダイクとルバークは魔法で支援してくれ。」

「はい!」「わかったわ。」

「じゃあ、行くぞ!」

ビクターは腰から剣を抜いて、巣穴へと入っていくがすぐに踵を返して戻ってくる。

「ルバーク、松明は持ってるか?」

「・・・持ってないわよ。ダイク君、お願い。」

光の玉をいくつか浮かべると、ビクターは驚く。

「お前、一体いくつの魔法が使えるんだよ!・・・まぁいい。行くぞ!」

再び、ビクターは光の玉を連れて、巣穴へと潜っていく。

俺たちも続いて、中に足を踏み入れる。


巣穴を進んでいくと、左右に道が分かれていた。

右側の道からは風が流れてくるのを感じる。

「どっちから行くの?」

ロゼが呟いた小さな声が、巣穴に反響する。

ビクターは慌てて俺たちを集めて、声を抑えるように指示した。


左の道を進むと、すぐに行き止まりだった。

動物の骨や木屑が敷かれており、もしかしたら寝床なのかもしれない。

道を戻り、右の道を進むと、また道が分かれている。

サラマンダーはいないが、迷路のような道がずっと続いていた。

同じように左右の道を確認して進むと、ビクターが立ち止まる。

先は暗くてよく見えないが、開けた空間があるのが分かった。

光の玉を先に飛ばすと、ドーム状の空間で壁にはいくつもの穴があちこちに開いている。

ビクターは近くに転がる石を拾い、ドームの中央に投げた。

石が転がる音が響くが、サラマンダーが出てくる気配はない。

「どうなってるんだ・・・。」

ビクターがぼそりとつぶやいた。

「前に来たときは、巣穴もこんなに大きくなかったんだ。サラマンダーも入ってすぐのところにいたしな。何だかおかしいぞ。」

ビクターが普通にしゃべっても、音は響くが魔獣の気配はない。

「とりあえず、進んでみませんか?上の方に開いてる穴は、シラクモたちに見てきてもらいます。俺たちは地上の穴を調べてみましょう。」

俺は何だか嫌な予感がしていた。

鬼蜘蛛の森の奥にある遺跡に行った時とほとんど同じ状況だ。

あの時も遺跡の地下に落ちるまで、ウルフは姿を見せなかった。

もしかしたら・・・ここにも魔獣木があるのだろうか。


手分けをして、横穴の確認をしていく。

ほとんどは寝床のようになっていて、行き止まりになっていた。

俺たちが来た道のほかに、進める道はいくつかあった。

しかし、風が流れてきている穴は一つだけだった。

「この穴から風が流れてきてます。ほかはおそらく崖から見えた穴に繋がってるんだと思います。」

普通にしゃべっても、魔獣の気配はない。

「遺跡の時と似ているね!」

「遺跡の時って・・・まさか、魔獣木を見つけた時のことかしら?」

「そうです。あの時も俺たちが地下道に落ちるまで、ウルフは姿を見せませんでした。」

「ここも同じだって言いたいのか?」

「同じかはわかりません。でも、可能性はあります。シラクモ、クガネ、壁や床に脆そうな場所があれば教えてくれるか?」

シラクモとクガネは前足をあげて応えてくれる。

「とにかく、先に進んでみましょうか。進んで何もないようなら、戻ってそう報告すればいいでしょ。それでどう、ビクター君?」

「あぁ、それしかないな。とにかく、進んでみるか。警戒は忘れるなよ!」


ビクターを先頭に、風の吹く横穴へと進んでいく。


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