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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第63話 ブレアと魔獣木

「で、何があったのかしら?」

冒険者ギルドに向かいながら、ルバークに起こった出来事を説明する。

「ルバークさんのために、取ってきたんだよ!なのに、マスターは壊すって言うんだよ!」

ロゼは頬っぺたを膨らませて、憤慨している。

「ありがとう、ロゼ君。わたしのために怒ってくれて。でもね、マスターの言うことも分かるの。」

ルバークは、ロゼの頭を撫でながら諭す。

「何がわかるの?」

「もし、本当に魔獣木が原因で魔獣が増えているなら、魔獣木をどうにかしなきゃいけないわよね?それが、もし壊せなかったらロゼ君ならどうする?」

ロゼは考え込んで、話し出す。

「ダイク兄のアイテムボックスに入れればいいんじゃん!」

「そうね。ダイク君がいれば、それでいいと思うわ。でも、ダイク君がいないとどうかしら?」

ロゼは再び、考え込んでしまう。

「ロゼ、俺はルバークさんが壊してもいいって言うなら、それでいいと思ってるよ。それに、他にも生えてる可能性もあるんだ。壊れた時はジョセフさんと交渉して、見つかったものを譲ってもらうことだってできるかもしれないよ。」

「そうなの?じゃあ、いいよ・・・。」

不服そうではあるが、納得はしてくれた。

ロゼの頭を撫でて、冒険者ギルドへと入っていく。


「おう、何度も呼び出して悪いな。」

ジョセフは片手をあげながら言った。

「だいたいは二人から聞いてます。初めまして、ルバークです。」

ルバークはブレアに向かって軽く頭を下げる。

「初めまして、ブレアよ。」

ブレアも軽く頭を下げ、にこやかな雰囲気で自己紹介が終わる。

「で、ルバーク。早速だが、いいのか?」

「もちろん、わたしも協力したいと思ってます。・・・が、条件次第ですね。」

「何が望みだ?」

「この木は、二人が危険を冒して持ってきてくれたものです。わたしには情報提供だけでも、ものすごい価値があると思っています。ギルドでは何か対価を二人に支払ったんですか?」

ルバークが冷たい笑顔で、ジョセフを問い詰める。

「・・・いや、まだだ。」

「その上で、魔獣木を壊したいとおっしゃるんですね。」

ルバークの言葉遣いが丁寧になる。

「・・・そ、それはこの街の・・・ひいてはここら一帯の地域のためだろ。」

「フフフ、そうですね。ここら一帯の問題を解決する可能性のある情報を、こんなに小さな二人が持ってきたんですよ。マスターには、それがわからないのかしら?」

「わ、わかった。すまなかったな、ダイク、ロゼ。だが、対価については待ってくれ。領主に相談しなければならん。ギルドだけでは相応の対価は払えんからな。」


「そう、ならいいわ。ダイク君、ロゼ君、これでいいかしら?」

ルバークが笑顔をこちらに向けるが、凄みを感じる笑みだった。

「は、はい。十分です。」

「ぼ、ボクもそれでいいよ!」

「マスター、それでいいみたい。ブレアさん、待たせてしまってごめんなさいね。」

ルバークはブレアに向かって再び、軽く頭を下げる。

「アハハハ、別にいいの。面白いものを見せてもらったしね。」

ブレアはチラチラとジョセフを見ながら笑っている。


「それでは、始めましょうか。ジョセフさん、いいですか?」

部屋の中央に行き、ジョセフに確認をとる。

「あぁ、頼む。」

それを聞き、アイテムボックスから魔獣木を取り出す。

「へぇ、本当に聞いてた通りの形ね。魔王領で栽培されているのとはまるで違うわね。」

「ブレアさんは魔王領に行ったことあるんですか?」

「あるも何も、エルフのほとんどは魔王領出身なの。小さいころから魔石の栽培を手伝ってたけど、こんな宝石みたいな木の魔獣木は知らないわね。」

「ブレアさん、どうやって魔石を栽培しているのか教えてもらえますか?」

ルバークは冷静を装って聞いているが、俺には研究モードに入ったように見えた。

「ゴメンね。栽培方法は言えないの。本来、魔獣木は持ち出し厳禁なのよ。」

「じゃあ、これはなんであるの?」

「それは私にも分からないわ。さぁ、マスターが怒り出す前に、始めましょうか。」

ブレアはパチンと両手を叩いて、話に区切りをつけた。


ブレアは腰に着けていた短剣を逆手に構える。

「マスター、いいわね。」

「あぁ。」

ジョセフの言葉数が極端に少なくなってしまった。

ブレアはふらりと揺れ動いたかと思うと、その場から消える。

消えた瞬間、魔獣木の方からキンッと音が聞こえてきた。

ブレアは魔獣木の向こう側に、背を向けて立っていた。

何度か同じ攻撃をブレアは繰り返すが、魔獣木に変化は見られない。

「全然ダメね。手応えなしよ、マスター。」

「そうか・・・魔法はどうだ?」

ブレアはいくつかの魔法を飛ばすが、結果は変わらなかった。

「ダメか・・・。」

ジョセフがそう言うと、魔獣の実が落ちて鈴の音が響いた。

魔獣に成長させるわけにはいかないので、即座にアイテムボックスに収納する。

「もう魔獣木も片付けていいですか?」

「傷の確認だけさせてくれ。」

ジョセフとブレア、ルバークは魔獣木を隅々まで見ているが、傷は確認できなかったようだ。

ジョセフがこちらを見て頷くので、魔獣木をしまう。


「マスター、私は行くわね。」

ブレアはそう言って、部屋を出て行ってしまう。

「悪かったな。領主に相談するから、報酬は待ってくれ。」

そう言い残して、ジョセフは肩を落として部屋を出ていった。

「少しやりすぎたかしら?でも、正当な評価を下さないマスターが悪いわよね?」

ルバークが笑顔でこちらを向く。

「は、はい。そうですね・・・。」

ジョセフに少し同情しながらも、同意する。

「ルバークさん、ボクたちはいつになったら帰るの?」

「ロゼ君はいつ帰りたいの?」

「もう少しいてもいいと思うけど、鬼蜘蛛の森も心配だよね!」

「そうね・・・。あと数日、様子を見て帰りましょうか!」

「ルバークさん、いいんですか?」

「いいって、もしかして魔獣木のことかしら?」

「それもあります。破壊できないとなると、俺かルバークさんのマジックバックが必要になるんじゃないですか?」

「ダイク君。それはマスターが考えることよ。でもね、依頼として受ける分にはいいわよ。」

ルバークに言われて、ハッとした。

いつの間にか、魔獣木が見つかったら俺が出向いてアイテムボックスに入れてくるものだと思っていた。

魔獣木の破壊はできなかったが、”Bランクのブレアには出来なかった”が正しい認識だ。

ジョセフが領主に相談して、SかAランクの冒険者を呼ぶのも一つの手だろう。


「ダイク兄、また難しい顔してるよ!」

ロゼは背伸びして、俺の顔を両手で押しつぶしてくる。

「そうだね、ロゼ。依頼があった時は、受けるかどうか考えることにします。」

「そう、それでいいの。」

ルバークは優しいほほえみを浮かべていた。

「じゃあ、今日は帰りましょうか。」

「そうだね。お腹すいたね!」

「そうですね。帰りましょう。」

試験場を出て、宿へと向かって歩き出す。


「すいません!」

冒険者ギルドを出たところで、キャサリンに呼び止められた。

「どうしたんですか?」

あまりの慌てように驚いてしまった。

「ダイクさん、ロゼさん、申し訳ありませんでした。くだんの情報報酬の話をマスターから聞きました。」

それを聞いて、ルバークが俺たちの一歩前に出た。

「キャサリンさんだったかしら?それについてはもういいの。わたしも少し言い過ぎたかもしれないわね。明日にでもマスターに謝りに行くわ。そう伝えておいてくれるかしら?」

「畏まりました。伝えておきます。」

申し訳なさそうな顔を浮かべてキャサリンが言った。

「キャサリンさん、俺たちもその情報がお金になるとは思ってなかったので、気にしないでください。明日もギルドに来ると思うので、普通に接してください!」

「それはもちろんです。気兼ねなくいらっしゃってください。」

キャサリンに笑顔が戻ったところで、別れて宿に戻った。


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