第62話 Bランク冒険者
「ダイク兄、これからどうする?」
「せっかく冒険者ギルドに来たし、何か依頼受けていこうか。」
「うん、ボクもそれがいいと思うよ!」
試験場を出て、階段を下りながらロゼと話す。
「ルバークさんたちはどうしますか?」
「わたしは今日は宿に戻るわね。魔獣木について、もう少し考えたいの。」
「おいらたちも今日は休みだな。報告だけで元々帰るつもりだったしな。」
「そうでしたか。付き合わせてしまってすいません。ゆっくり休んでください。」
「お前たちが付き合わせた訳じゃない。気にするな。」
ヴィドが俺の頭を乱暴に撫でながら言う。
出口まで見送ると、三人はそれぞれの宿に戻っていった。
まずはロゼを連れて解体部屋に行く。
アイテムボックスには魔獣がたんまりと入っている。
「リンデンさん、解体をお願いしたいんですけど・・・。」
部屋の奥で解体に精をだしているリンデンに声をかける。
「おう、お前たちか!マスターとの用事は終わったのか?」
「もう終わったよ!」
「そうか。マスター、驚いてただろ!俺も見に行きたかったが、魔獣が溜まっててな。」
解体部屋には魔獣が山のように積まれている。
「俺も解体をお願いしようかと思ったんですけど、今度の方がいいですか?」
「いや、構わないぜ。この量ならあっという間に片付くぜ!」
リンデンの指示するスペースに魔獣の山を作る。
「では、お願いします!」
「明日にでも精算できるからな!」
「じゃあね、リンデンさん!お願いね!」
忙しそうなので、そそくさと退室する。
俺とロゼは久々の依頼を受けようと、掲示板を見ていた。
時間が遅いからなのか、掲示板には低ランクの依頼はほとんど残っていなかった。
「ダイク兄、これはどうかな?」
ロゼの聞いてくる依頼は、魔獣討伐系で高ランクのものばかりだった。
「ロゼ、俺たちのEランクじゃDランクまでしか受けられないよ。」
不満そうな顔を浮かべているが、俺にはどうしようもない。
「今日は時間もないから、これにしよ。」
ロゼに一枚の依頼書を手渡す。
「そっか・・・、しょうがないね。明日は魔獣をやっつける依頼にしようね!」
ロゼは俺の手を引っ張って、カウンターまで歩き出す。
ロゼはそう言うが、俺たちはいつまでサンテネラにいるんだろう。
魔獣木の報告も終わったし、もう帰ってもいいのだろうか。
宿に戻ったらルバークに聞いてみよう。
「これをお願いします!」
ロゼが依頼書をカウンターのお姉さんに渡す。
キャサリンは報告書を作成しているのか、姿は無い。
「はい、受け付けました。こちらの薬草の説明はいりますか?」
「いえ、大丈夫です。以前、教えてもらいました。」
「そうでしたか。街の外では魔獣が増えているので、気をつけてくださいね。」
「「はい!」」
ランタン草とツユ草の採取の依頼を受けた。
これは俺たちが冒険者登録をして、初めて受けた依頼と同じものだ。
「ロゼ、どこで取れる薬草か覚えているか?」
「うん、ダイク兄!ボクに任せて!」
依頼を受けると、ロゼは討伐への未練は無くなっていた。
冒険者ギルドを出て、大通りに面する門まで歩いていく。
顔見知りの門番さんは、この日もいなかった。
冒険者のタグを見せると、すんなりと街の外へと出られる。
仮設の橋を渡って来ているのか、門の外には馬車が数台並んでいた。
唐揚げパンを食べながら、薬草の生えている森へと向かう。
森につくまでに何人かの冒険者とすれ違った。
俺たちと同年代はさすがにいないが、十代くらいの冒険者も多く見かけた。
「シラクモ、クガネ。ごめんな、人が多くて外に出れないかもな。」
シラクモがフードの中から背中を叩いてくる。
「そうだね。なんだか、人が多いね。」
森の中でも冒険者の何人かとすれ違った。
薬草自体はすぐに見つかり、必要な本数を集めることができた。
「今日はもう、帰ろうか。」
「そうだね、ダイク兄。」
人の多さに落ち着かずに、ギルドへ戻ることにした。
カウンターで依頼の報告をしていると、ジョセフに呼び止められる。
「いいところにいたな!これから少し、時間あるか?」
「別にいいよ!」
ロゼは何も考えずに、簡単に返事をした。
「ロゼ、今は依頼の報告をしてるんだよ。ジョセフさん、終わってからでいいですか?」
「おう、終わったら上に来てくれ。」
ジョセフはそう言って、階段の方へと行ってしまう。
「薬草も問題なく採取されています。これで依頼は完了です。こちらが報酬です。マスターが待ってますので、どうぞ行ってあげてください。」
受付のお姉さんがそう言って、俺の手に報酬の銀貨二枚をのせる。
「ありがとうございます。」
「ありがとう、お姉さん!」
お礼を言って、ジョセフを追いかけて階段を上がる。
「来たな。」
試験場の扉を開けると、ジョセフとフードを被った女性が待っていた。
「お待たせしました。初めまして、ダイクです。」
「ボクはロゼだよ!」
初めて見る女性に挨拶をする。
「初めまして。私はブレア。よろしくね!」
フードを脱ぐと、そこにはスラっとしたエルフが立っていた。
「こいつはBランク冒険者だ。この街にいる冒険者の中では最高ランクだ。・・・っておい、聞いているか、お前たち!」
あまりの美しさに目を奪われていた。
初めてエルフを見たが、金髪、碧眼、長い耳とイメージしていたエルフのすべてが詰まった姿をしている。
「君たち、大丈夫?」
ブレアが俺たちに近づいて、顔を覗き込んでくる。
「だ、大丈夫です!初めてエルフの人を見たので、驚いただけです。」
「お姉さん、きれいな顔だね!」
ロゼのストレートな物言いにブレアは吹き出して笑った。
「アハハハ、ありがとう。でも、マスターの話を聞いてあげてね。」
そう言われて、ジョセフを見ると不機嫌そうな顔を浮かべていた。
「すいません、もう一度お願いできますか?」
頭を下げて、ジョセフに詫びる。
「しょうがねぇな。いいか?こいつはこの街にいる冒険者の中で最高ランクのBランクだ。」
「ブレアさん、すごいね!」
ロゼがそう言うと、ブレアは人差し指を口元に持っていき、静かにとジェスチャーで伝えてくる。
俺もロゼの口を手で塞ぎ、ジョセフに話を続けてもらう。
「・・・魔獣木の処分方法を検討したいんだ。もし、どこかで見つかったとして、処理できなきゃ意味がねぇ。悪いが、お前たちの持つ魔獣木を壊しちゃダメか?」
「ダメだよ!これはルバークさんへのお土産なんだよ!」
ロゼは俺の手を外して、発言する。
確かに、魔獣木はルバークへのお土産として持ってきた。
しかし、話はどんどんと大きくなってしまっている。
「ルバークさんを呼んでもいいですか?俺たちでは決められません。」
「いいんじゃない?マスター。」
「わかった。すぐに呼んできてくれ。」
ジョセフの言葉を聞いて、ロゼを連れて部屋を飛び出す。
冒険者ギルドを出て、泊っている宿へと急ぐ。
「あら、お帰り!どうしたんだい、そんなに急いで。」
「おばさん、戻りました!でも、ルバークさんを連れて、また出かけますね!」
おばさんの返事も聞かずに、ルバークのいる部屋を目指す。
ノックをすると、ルバークはすぐに扉を開けてくれた。
「ルバークさん、休んでいるところすいません。ジョセフさんに呼び出されまして・・・。出かける準備をしてもらえますか?」
「どうしたの、そんなに急いで。よく分からないけど、分かったわ。少し待っててね!」
俺たちを部屋に招き入れ、ローブを被った。
評価とブックマーク、ありがとうございます!
まだの方は是非、お願いします!
モチベーションになります!