第60話 ルバークとの再会
「そういうことみたいだ。悪いが、今日はルバークに会えないみたいだな。」
リンデンはそう言って、歩き出す。
「ほら、ついて来い!宿に行くぞ!」
立ち止まっている俺とロゼを、手招きしていた。
ロゼの手を取って、リンデンについていく。
「お前たちが言ってた宿でいいよな?前もあそこに泊ってたんだろ?」
「はい、そこでお願いします!」
宿は冒険者ギルドからすぐのところにあるので、あっという間に着く。
夜も更けてきたので、酒場が賑わっていた。
「いらっしゃい!あ~、あんた達かい!久しぶりだね!」
宿屋のおばさんは俺たちを覚えていたみたいで、元気に挨拶してくれる。
「お久しぶりです、おばさん!」
「ひさしぶり、おばさん!」
リンデンはニヤニヤしながらやり取りを見ていた。
「部屋に空きはあるか?この二人を泊めてほしいんだ。金はギルドで持つからよ。」
ジャラッと金貨をカウンターの上に並べて言う。
「ルバークちゃんの部屋じゃ、ダメなのかい?」
「俺たち、今日この街に着いたところで、ルバークさんにまだ会えていないんです。ルバークさんのいないうちに勝手に入るのは気が引けるので、別の部屋でお願いできますか?」
「そうだったのかい。じゃあ、隣の部屋を使いなよ!」
カウンターの下から鍵を取り出して、俺たちにくれる。
「ありがとうございます!」
「じゃ、女将、二人のことを頼むぜ!俺はギルドに戻るからよ!」
「あいよ、任せておきな!」
「はい、リンデンさんもありがとうございました!」
「ありがとう!」
リンデンは手をあげて、ギルドへと戻っていった。
「夕飯はまだだろ?すぐ用意するから、先に荷物を部屋に置いておいで!」
おばさんにペコリと頭を下げて、部屋へと階段を登る。
たいした荷物もないので、置くものもないが部屋に向かう。
鍵に書かれた部屋番号は以前泊った部屋だった。
鍵を開けると、以前と変わらず懐かしさすら感じる。
扉も窓も修理されて、綺麗になっているが窓から見える景色は変わらない。
街灯の魔石が煌々と大通りを照らしていた。
「ダイク兄、お腹すいたよ。早く下に行こう!」
ロゼのお腹からも音が聞こえてきた。
「酒場にお客さんが沢山いたから、ローブは脱いでいこう。シラクモとクガネは戻ってきてからご飯でいいか?」
部屋に入るなり、ベッドに跳びこんだシラクモとクガネに聞く。
二匹は前足をあげながら、頷いてくれる。
「ごめんな。すぐに戻ってくるから、待っててな!」
ロゼと一緒に部屋を後にする。
「遅かったね!準備できてるよ!」
階段を下りると、おばさんの元気な声が俺たちに届く。
「ありがとうございます。」
「あ~、お腹すいたねぇ。ダイク兄、早く食べよ!」
「「いただきます!」」
おばさんはやり取りを微笑ましく見守り、酒場のお客さんの相手をしに行った。
久しぶりにここで食べるが、もちろんいつもの味で、実家のような安心感がある。
酒場が混みあって騒がしいが、この喧騒も悪くない。
食事を美味しくいただいて、部屋へと戻る。
魔法で体をきれいにすると、ロゼはすぐに寝てしまった。
ほとんど走り通しで疲れがあったんだろう。
シラクモとクガネの食事を済ませると、俺もすぐに寝てしまった。
息苦しさを感じて、目を覚ます。
顔の上にシラクモが乗っかっていた。
「シラクモ、苦しいんだけど・・・。」
シラクモは顔からベッドに下りて、何かを伝えようとしている。
「ん~、何?よく分からないよ・・・。」
目を擦ってシラクモを観察するが、よく分からない。
窓からは暖かい日差しが入ってきている。
階下にある調理場からの料理をする音も聞こえてくる。
「ロゼ、起きて。朝だよ。」
ベッドから起き上がり、ローブを羽織りながらロゼに声をかける。
「うん、起きるよ・・・。」
ロゼの準備を手伝って、朝食を食べに部屋を出る。
階段を下ると、おばさんと知っている女性の声が聞こえてくる。
「ほら、下りてきたよ!二人とも、おはよう!」
宿のおばさんの元気な声が響く。
「おはよう、ダイク君、ロゼ君。帰りが遅くなってごめんなさい。」
ルバークがカウンターで俺たちを待っていた。
「ルバークさん!!」
ロゼはルバークを見ると、階段を駆け下りてルバークに抱きつく。
「おはようございます。ルバークさん、おばさん。」
ルバークは俺を手招いている。
近くに行くと、頭を撫でられた。
「ギルドマスターから簡単にだけど、話を聞いたわ。二人とも大活躍したみたいじゃない。」
「ボクにも従魔ができたんだよ!後で見せてあげるね!」
ロゼは嬉しそうにルバークに話をしている。
「さぁ、朝食にしましょうか。おばちゃん、そっちのテーブルでお願いね!」
ルバークは立ち上がると、すぐ後ろのテーブル席に移動する。
俺とロゼも同じテーブルに座る。
「ルバークさんも冒険者になったんですよね?」
「そうなのよ。橋が壊れちゃって、帰れなくなったときにたまたまマスターに捕まっちゃってね。やることも無いし、仕方なく始めたけど、なかなか楽しかったわ。ダイク君とロゼ君は森でどう過ごしてたの?」
俺たちの話は食事を食べ終わっても、部屋に戻っても続いた。
「じゃあ、今日はその魔獣木をマスターに見せに行くのね!もちろん、わたしも行くわ。わたしへのお土産なんでしょう?マスターが取り上げないように見張ってないとね!」
冒険者ギルドにルバークもついて来てくれることになった。
「お願いします。ここでは何の魔獣が生まれるのか分からないので、ルバークさんがいてくれれば心強いです。」
「そうだね、ここでは何が生まれるんだろうね!」
ロゼの目はキラキラと輝いている。
「ロゼも待ちきれないみたいだし、もう行きましょうか。ルバークさん、体は大丈夫ですか?」
「大丈夫よ。さっきも言ったけど、しっかり交代しながら休んだからね!」
ルバークの話を聞く限りでは、誰かと組んで依頼をこなしていたみたいだ。
「わかりました。じゃあ、冒険者ギルドに行きますか!」
「うん!」
ロゼは勢いよく立ち上がり、俺とルバークの手を引いて走り出す。
宿を出たところにビクターと弧人族のヴィド、猿人族のアルがいた。
「おはよう、お前たち。久しぶりだな!」
ビクターが代表するように挨拶して、ヴィドとアルは片手をあげている。
「お、おはようございます。なんでビクターさんとヴィドさん、アルさんがここにいるんですか?」
「ヴィドさん、アルさん!久しぶり!」
ロゼは俺たちの手を放して、ヴィドとアルのところへ行ってしまう。
「昨日の依頼をルバークと俺たちで一緒に受けていたんだ。これから、報告に行くところだが遅いぞ。ルバーク。」
「ごめんなさいね。久しぶりに二人に会えて、話が止まらなくてね。」
ビクター達も怒っている感じではなかった。
「ヴィドさんとアルさんはなんでサンテネラにいるんですか?村はいいんですか?」
「大きくなったな、ダイク。おいらたちの村にも魔獣が出るようになっちまってな。今は一時的にサンテネラに村人全員で避難してきてるんだ。することも無いから、戦える村人は冒険者登録をしたんだ。少しでも魔獣を減らして、早く村に帰りたいからな。」
アルが丁寧に事の経緯を教えてくれた。
「そうでしたか・・・。」
「ダイクが気にすることじゃない。」
ヴィドは俺の頭を撫でながら、ポツリとつぶやく。
「さぁ、感動の再会も果たしたことだし、冒険者ギルドに行きましょうか!」
ルバークは冒険者ギルドを指差しながらそう言った。
「お前がそれを言うのか?まぁ、違いない。行くか!」
ビクターはつっこみながらも、納得して歩き出す。
俺たちをぞろぞろと引き連れて。
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