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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第59話 ギルドマスター

厳つい顔のおじさんは俺たちを見つけると、鋭い眼光でリンデンを睨む。

「お前、まさかあそこに行ったわけじゃないよな?そこの二人とはたまたまどこかで会ったんだよな?なぁ、そうだよな?」

厳つい顔のおじさんは、扉を離れてリンデンに詰め寄る。

「おいおい、マスター。落ち着いてくれよ。」

リンデンがマスターと言った。

この厳つい顔のおじさんがギルドマスターなのか。

「どうなんだ、この解体バカッ!」

ついにはリンデンの胸倉を掴んでいる。

「行ったが、大丈夫だ。この通り生きてるじゃねぇか!まずは落ち着いて、じっくりと話す場を作ってくれ。この二人も含めてな。」

ギルドマスターを落ち着かせるように、両手をあげて言う。

「キャサリン、悪いが解体部屋にいるぞ。こいつを絞めねぇといけないようだ。二人もついて来い。」

いつの間にか席に戻っていたキャサリンも、驚いて何度も顔を上下していた。

ギルドマスターがリンデンの胸倉を掴んだまま、解体部屋へと入っていく。

俺とロゼもキャサリンにペコリと頭を下げて、二人を追いかけて解体部屋に入った。


「こっちだ。ついて来い。」

ギルドマスターはリンデンを引っ張り、更に奥の小さな部屋に入っていく。

部屋の中には長方形のローテーブルと一人掛けのソファが四つあり、まるで応接室のようだった。

「座ってくれ。俺は、サンテネラの冒険者ギルドマスターのジョセフだ。」

ジョセフとリンデンが並んで座ったため、俺とロゼは向かいに隣り合って座る。

「初めまして・・・ではないんですかね?俺はダイクです。」

「こんばんわ、ロゼです!」

この厳つい顔には見覚えがあった。

冒険者になる試験の後に、ルバークと話をしていたおじさんだ。

「あぁ、以前二人の付き添いで来ていたルバークと話をした時にチラッと会ったな。で、何の話だ。リンデン。」

俺たちには普通の顔を向けるが、リンデンに向ける顔は厳しい。

「このダイクとロゼがあの森で、魔獣が増えている原因かもしれねぇもんを見つけたんだ!」

ジョセフがこちらにも鋭い眼光を向ける。

「リンデンさん、あの森じゃないよ!」

そんなのお構いなしに、ロゼがリンデンに指摘する。

「ジョセフさんも知ってるんですよね。俺たちが鬼蜘蛛の森に住んでいること。」

「あぁ、何となくそう思ってたんだ。鬼蜘蛛を連れているしな。この解体バカが二人と一緒に戻ってきて確信した。」

「そうですか。受付のところでは誤魔化した言い方をしてくれて、ありがとうございます。できれば他言無用でお願いします。」

「それは、分かっている。で、原因ってのは何なんだ?」

リンデンの顔を見ると、お前が話せと顎で合図している。


「まずは、現状の把握をさせてください。リンデンさんが言うには、ここら一帯で魔獣が増えていると聞いています。それは間違いないですか?」

ジョセフは腕を組んで、どっしりとソファに深く座り直す。

「間違いない。」

「それは、鬼蜘蛛の森でも同じでした。」

それを聞いて、ジョセフはリンデンの頭を引っ叩いた。

「マスター、殴るのは最後までダイクの話を聞いてからにしてくれ!」

ジョセフの目がこちらを向いたので、話を続ける。

「俺の従魔の親・・・マザーと呼んでいますが、その縄張りにウルフが二、三日に一度のペースで侵入を繰り返していました。それも、特定の方角から来るんです。その方角にウルフの巣があるんじゃないかと思いまして、調べに行ったんです。」

ジョセフは何も言わずに、話を聞いてくれる。

「その方角には遺跡があって、その地下に魔獣木っていう木が生えていたんです。」

「俺も見せてもらったが、マスター、驚くぜ!」

ジョセフは再び、リンデンの頭を引っ叩く。

「お前は黙ってろ!・・・魔獣木か。どこかで聞いたことがあるな。」

ジョセフは考え込んで、黙ってしまう。

「今は見せることができませんが、それを回収してます。その木は透明で、キラキラしたきれいな木だったんです。」

「ブラックウルフだっけ?それがその木を守ってたんだよ!」

ロゼが補足してくれる。

頭を撫でてやりながら、話を続ける。

「その木には水晶のような実がなっていて、実が地面に落ちると段々と大きくなって、ウルフになったんです。」

自分で話していても突拍子のない話だなと思った。

ジョセフはこんな話を信じてくれるのだろうか。


「ちょっと待ってくれ。ルバークはこの街にいたぞ。お前たち二人だけで巣に行ったのか?」

目を見開いたジョセフの顔は鬼のような形相だった。

「違うよ!シラクモとクガネが一緒だったよ!」

ロゼがそう言うと、フードからシラクモとクガネがテーブルの上に跳び出てくる。

「そうか、従魔がいたんだったな・・・。だが、登録はシラクモの方だけじゃなかったか?」

「クガネは遺跡に行ったときに、ロゼの従魔になりました。」

「そうか・・・。帰りか明日にでも登録してくれ。」

ジョセフはすっかりと頭を抱え込んでしまった。

「魔獣木を回収して、帰ってきた日にリンデンさんが森に来たんです。」

「鬼蜘蛛に捕まって、ぐるぐる巻きにされてたんだよ!」

ロゼが少し笑いながらジョセフに報告する。

「おい、ロゼ!そんなことはマスターにいう必要はねぇ!」

ジョセフはさらに二発続けて、リンデンを引っ叩く。

「お前たちは馬鹿なのか?リンデンもそうだが、お前たち二人もだぞ!もっと慎重に行動してくれ。そんなんじゃ、いつ死んだっておかしくないぞ!」

リンデンだけでなく、俺たちまで叱られてしまった。

「で、橋はどうしたんだ。リンデンが街を出た後に崩壊した報告が上がっているが。」

ジョセフが鋭い眼光を俺たち三人に向ける。

リンデンが話すのかと黙っているが、リンデンの顎は俺に話せと言っている。

「俺が仮設の橋を作って、通ってきました。」

「ボクはその時に、魔獣をやっつけたよ!」

ロゼにはジョセフの睨みが効いていないみたいだ。

「ふぅ~、そうか。それはご苦労だったな。」

ジョセフは大きなため息を吐いて、背もたれに体を預けて、体を伸ばした。


「今日はここまででいいだろう。明日は魔獣木を見せてもらうぞ。」

その言葉を聞き、リンデンが勢いよく立ち上がる。

「じゃあ、マスター。また明日な!俺は二人をルバークのところに連れて行かにゃならん。」

そういえば、ギルド職員の人にルバークを呼びに行ってもらってたんだっけ。

「また、明日来ます。失礼します!」

「来ます!」

シラクモとクガネはフードの中へと戻っていく。

ジョセフから返事は無かったが、部屋を出る。

受付まで戻るが、ルバークの姿は無く、呼びに行った職員はカウンターに戻っていた。


「ルバークはどうだった?」

リンデンが呼びに行ってくれた職員に聞く。

「まだ、戻られてないようです。」

「あの、私からよろしいでしょうか?」

キャサリンが言葉を挟む。

リンデンと俺たちがキャサリンの方を向くと、話し始めた。

「現在、ルバークさんには護衛の依頼に参加していただいてます。この街に避難してきた人たちの荷物を取りに、近くの村まで同行しているようです。この時間に戻られないのなら、帰りは明日の早朝になると思われます。」

キャサリンは丁寧に説明してくれる。

「でも、ルバークさんは冒険者ギルドに登録してないですよね?なんで依頼を受けているんですか?」

ロゼも隣で頷いている。

「俺が頼んだんだ。橋の崩落を聞いたころにたまたま会ったんだ。帰れないなら、手伝ってくれってな。思ってた以上に優秀だったがな。」

解体部屋から出てきたジョセフが教えてくれた。

そういえば、先ほどの話し合いの時にルバークがこの街にいることを知ってたな。


そうだったのか。

帰るに帰れず、ルバークも大変だったみたいだ。



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