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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第56話 約束

「今、ここら一帯で魔物が増えていてな。冒険者ギルドも大忙しだ。」

リンデンは深刻そうな顔を浮かべてそう言った。

「そうですか・・・。」

「出来ることなら、お前たちをサンテネラに連れていって、手伝ってくれねぇかなとの淡い期待もあったんだ。この森でもそうだったのか・・・。まぁ、そうだよな・・・。」

リンデンの大きな声がどんどんと小さくなった。

温かいお茶でも飲んで落ち着いてもらおうと、お茶を淹れ直す。

「おう、すまねぇな。」


「ダイク兄、あれのこと聞いてみたら?」

いつの間にかロゼが背後に立っていた。

話に集中していたため、家の中に入ってきたことすら分からないかった。

「ろ、ロゼ、いつの間に!今、お茶淹れるよ。」

ロゼの分もお茶を淹れることになった。

キッチンでお湯を沸かしながら、一息つく。


「で、あれって何のことだ?」

お茶を淹れ終わると、リンデンは暑苦しい顔を近寄せてくる。

俺はリンデンよりも前に、マザーかルバークに相談したかった。

遺跡にあった魔獣木は回収したが、他にもあるかもしれない。

「その話は明日じゃダメですか?夜も遅いですし、今日はもう休みましょうよ。」

リンデンは腕を組んで考え込む。

「わかった。明日には教えてもらえるんだな。」

「はい、約束します。」

「ボクも約束するよ!」

「そうか、約束だぞ!」

約束を交わすと、俺は一人で裏庭へ行って風呂の準備をする。

リンデンにはロゼが飲み終えるまで、一緒に待っていてもらった。


ロゼはお茶を飲み終えるとリンデンを連れて裏庭へ来て、みんなで風呂に入った。

リンデンは風呂に驚いていたが、入ってしまえば気持ちよさそうに疲れを癒していた。

風呂の後はヴィドとアルが泊った部屋に案内して、俺たちも部屋に戻る。

ベッドに入るとすぐに眠気に襲われて、あっという間に寝た。


起きると、下の階から物音が聞こえてくる。

部屋を出て階段を下りると、リンデンが朝食を作っていた。

「おはようございます、リンデンさん。」

「おう、おはよう。悪いが使わせてもらってるぜ!」

「どうぞ、好きに使ってください。」

そう言い残して、洗面所へと向かう。

顔を洗っていると、キッチンが騒がしくなる。

「おはよう、ダイク兄!」

扉を開けてロゼが入ってくる。

「おはよう、ロゼ。朝食を食べたら、マザーのところに行くよ。」

「うん、わかった!」

ロゼが顔を洗うのを待って、一緒にキッチンへ戻る。


「もう出来てるぞ。リンデンスペシャルだ!」

テーブルの上には、ホットケーキがそれぞれ二枚ずつ焼き立てが置かれていた。

「美味しそうですね。ありがとうございます。」

「ほんとに美味しそうだね、ありがとう。リンデンさん!」

「いいってことよ。世話になったお礼だ。」

一枚をシラクモに分けて、いただくことにする。

「「いただきます!」」

リンデンは何か言いたそうだったが、飲み込んで食事を始めた。

ホットケーキは塩味だった。

甘いものを想像して口に入れたからか、頭の中が混乱したが意外といける。

「リンデンさん、あとで作り方を聞いてもいいですか?」

生地がしっかりと膨らんでいる。

恐らく重曹のような膨らませる何かを入れているはずだ。

それが何なのか、知りたかった。

「いいぜ。簡単だし、すぐに覚えられるぜ。」

「俺たちは食後に少し出かけるので、その後にお願いします!」

「おう。」


塩味のホットケーキをペロリと食べ終えると、俺とロゼは家を出た。

リンデンには鬼蜘蛛たちの作業場と、それぞれの個室以外は好きにしていいと言っておいた。

「ダイク兄、行く前に畑に水をあげたいんだけど・・・いい?」

ロゼがそう言って、じょうろを持ってくる。

「いいよ。畑のお世話してから行こうか。」

水の玉から少しずつ水を、ロゼの持つじょうろの中に入れてやる。

昨年はじゃが芋を収穫し、形は歪なものが多かったが味は美味しかった。

今年はじゃが芋とサツマイモの苗を植えている。

畑の大きさは倍の広さとなっていた。

何度か水を補充して、ロゼは水を撒き、俺は雑草を毟った。


作業が終わると、マザーの元へと向かった。


「そういえばロゼ、鬼蜘蛛の様子はどうだった?」

もう少しでマザーの大木というところで、突然思い出した。

「まだ寝てるみたいだったよ。」

「そうか、マザーにそれも報告しなくちゃな。」

「うん、そうだね!」

そんな話をして階段を登ると、マザーが見えてくる。


「おはようございます!」

「おはよう!」

マザーと挨拶を交わして、昨日の報告をする。

遺跡の地下道で魔獣木を見つけて持って帰ってきたこと。

ロゼと鬼蜘蛛が血の契約を結んで、鬼蜘蛛が進化の眠りについたこと。

リンデンが俺たちの家に泊っていること。

サンテネラに向かう途中の橋が壊れて、ルバークが帰ってこれないこと。

マザーは、俺たちが話し終えるのを黙って見守っていた。

「マザーは魔獣木について何か知っていますか?」


(魔獣木とは魔王領で管理されている木だ。わたしが魔王領で見た魔獣木は、魔石が取れる木で、見た目は普通の果樹のような木だったはずだ。)


マザーの言う魔獣木とはかけ離れた見た目だった。

見てもらった方が早いだろうと、アイテムボックスから取り出す。

「これが取ってきた魔獣木です。マザーの言う姿とはだいぶ違いますが・・・。」


(わたしの知る魔獣木ではないな。魔獣が生まれるという話も聞いたことはない。)


マザーも知らないのか・・・。

魔獣木を仕舞おうとした瞬間、水晶が一つ落ちて転がる。

それはみるみるうちに大きく膨らみ、中から鬼蜘蛛が生まれ出る。

その鬼蜘蛛は一直線にマザーの元へと走り出す。

すると、マザーの前足が素早く動き、鬼蜘蛛の腹を貫く。

俺とロゼはその光景を見ていることしかできなかった。


(その木を早く仕舞ってくれ。)


マザーに言われた通り、アイテムボックスに戻す。


(魔獣木から生まれる魔獣は、空気中の魔素を吸収して大きくなるようだ。)


遺跡でウルフが誕生するまでは、結構な時間がかかっていた。

さっきは本当にあっという間だった。

ウルフと鬼蜘蛛の大きさの違いはあるが、鬼蜘蛛の森は魔素が濃いということだろう。

「でも、なんで遺跡ではウルフが生まれて、ここでは鬼蜘蛛なんでしょう。」


(ここが私の縄張りだからだろう。縄張りの中はわたしの魔素で満たされている。)


魔獣木を植える場所によって、生まれてくる姿が違うということだろうか。

「なんだか、ルバークさんの好きそうな話だね。」

ロゼは大人しく話を聞いていたが、ポツリとつぶやいた。

「そうだね。少しタイミングが悪かったね。こんな時にいないなんて・・・。」


(ルバークを迎えにいくのか?)


「明日と明後日まで、ウルフたちの動きを見てから行く予定です。原因の一つは取り除いたと思うので、襲撃が無ければ橋を直せるか見に行ってきますね!」


(そうか。お前たちの思うままに行動するがいい。)


「はい、今日はこれで失礼しますね!」

「バイバイ、マザー!」

約束を果たすべく、リンデンの待つ家へと帰る。


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