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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第55話 侵入者

マザーの指示に従って、裏庭から森へと入っていく。

「ロゼ、暗いから気を付けていこう。」

光の玉を浮かべて、小走りで森を進む。

「こんな時間に何しに来たんだろうね。ダイク兄。」

マザーから暗くなってから呼び出されるのは初めてのことだった。

侵入者は、いつもなら鬼蜘蛛たちが追い返して終わるはずだ。

俺たちを呼び出す理由が、何かあるのだろうか。


ロデオの通る荷車道を進んでいくが、荷車の轍で足元は悪い。

光の玉で足元を照らしていても、転びそうになる。

「ダイク兄、ほら!」

ロゼが手を差し出してくる。

ロゼの手を取り、繋いでゆっくりと進んでいく。


そろそろ到着するというところで、人の声が聞こえてきた。

「ダイクー、ロゼー、助けてくれ~!」

このセリフを繰り返し、叫んでいる。

俺たちの名前を知る人で、この森にいることを知る人はヴィドとアルくらいしか思い浮かばない。

「誰だろう・・・。なんだか聞いたことのある声だね。」

ロゼの感じからいうと、ヴィドとアルではなさそうだ。

「急ごうか、ロゼ!」

ロゼの手を引いて、叫んでいる人の元へと走る。


「ダイクー、ロゼー、あっ、やっぱりいたな!」

叫んでいた人は鬼蜘蛛たちによって、糸でぐるぐる巻きにされていた。

シラクモよりも大きな鬼蜘蛛が、木の上から糸にぶら下がって監視してくれていた。

「リンデンさん、なんでここにいるんですか?」

サンテネラの冒険者ギルドでお世話になった、魔獣の解体をしてくれたリンデンだった。

彼のトレードマークのタンクトップは糸で見えない。

「別の街に解体の手伝いに行ってたんだが、サンテネラに帰れなくなっちまってな。」

「帰れないってどういうことですか?なんで俺たちがここにいることを知ってるんですか?」

「おいおい、まずはこれをどうにかしてくれよ?」

リンデンの言う通りだが、少し考え込んでしまった。

「ねぇ、ダイク兄。解いてあげてもいいんじゃない?」

ロゼが心配とも可哀そうともとれる顔を、俺に向けて言う。

ロゼには敵わないなぁ。

「シラクモ、糸を解いてもらえるか?」

シラクモはリンデンに跳び移り、糸を切っていく。

「鬼蜘蛛もありがとう。あとはこっちで対応するよ!」

監視していた鬼蜘蛛は、木の上へと戻っていく。


「いや~、参ったぜ。すまないな。」

リンデンはタンクトップを掃いながらそう言った。

「シラクモ、ありがとうな。」

切り終えると、頭の上に戻ってきたシラクモの体を撫でる。

「リンデンさんは、なんでここにいるの?なんか悪いことをしに来たの?」

ロゼがリンデンに尋ねる。

「そんな訳ねぇだろ。途中の橋が崩れちまったんだ。ここからサンテネラに行くときに通っただろ?しょうがなく、修理が終えるまでどこかで待つ必要があるよな?」

「橋が・・・そうでしたか。」

リンデンよりもルバークのことが頭を過る。

ルバークも橋を渡れないために、帰ってこられないんだろうか。

ルバーク一人だけならまだしも、ロデオと荷車があっては難しい。

「それでな、思い出したんだ。ギルドマスターが、お前らの家は鬼蜘蛛の森にあるんじゃないかと言っていたのを。」

ギルドマスターがどんな人かは知らないが、そんな不確定情報だけでここに来たのか。

鬼蜘蛛やほかの魔獣だっているかもしれないのに、怖くないのだろうか。

「・・・そうですか。疑問はまだ多いです。でも、今日はうちに泊まりますか?」

「そうしてくれると、ありがたい。」

リンデンを連れて、家に戻ることにする。


「ちょっと待ってくれ。馬もいるんだ。」

リンデンは森を、マザーの縄張りから離れるように走っていく。

「すまんな。こいつも一緒に頼むぜ!」

ロデオとあまり変わらないサイズだが、リンデンが一緒だと小さく見える。

毛並みのきれいな白馬で少し笑ってしまった。

「リンデンさん、名前はなんて言うの?」

「名前はわからんな。サンテネラで借りてきた馬だ。」

「そっか。名前はないのか・・・。」

ロゼは少し残念そうにしている。

「じゃあ、行きますよ!」

リンデンと白馬を連れて、家へと帰る。

マザーも捕らえておくくらいだし、連れて帰っても問題ないだろう。


「なんだ、これ・・・。」

リンデンがあと少しで裏庭ってところで立ち止まる。

「俺たちの家ですよ。」

俺にはリンデンの驚いている理由が分からなかった。

「いや、そっちじゃない。もしかして、結界か!?」

そういえば、リンデンはアイテムボックスを見破ったときに魔力が見えるとか言ってたっけ。

「そうだよ。早く中に入ろうよ!」

ロゼが白馬の手綱をにぎり、馬小屋へと連れていく。

「行きますよ、リンデンさん。」

「あぁ、俺も行くよ・・・。」

おっかなびっくり結界をくぐっている姿も面白かった。


「リンデンさん、ご飯は食べましたか?残り物でもよければ食べますか?」

お腹がすいていては話に集中できないかもしれない。

「まだなんだ。すまないな。ありがたくいただくよ!」

スープを温めて、ロゼが焼いてくれたホロホロ鳥の焼き物とパンをテーブルにのせる。

「どうぞ、食べてください。俺は馬に餌をあげてきます。」

「おう、ありがとよ!」

リンデンが食事に手を出すのを見届けてから、裏庭へと向かう。

「ロゼ、白馬に餌をあげてくれるか?」

馬小屋の前で白馬を観察していたロゼに声をかける。

「うん、いいよ!」

ロデオ用にカットしていた野菜をロゼに渡すと、餌箱に入れずに一つ一つ餌をあげていた。

ロゼは本当に馬が好きだな。

白馬はすでにロデオよりも懐いているように見えた。

空っぽの水桶に水を補充し、先に家の中に戻ることにする。

「ロゼ、先に戻ってるよ。」

「うん、わかった!」

おざなりな返事を聞いて、ドアを閉める。


リンデンの元に戻ると、すでに食事を終えていた。

食器を片付けて、お茶を淹れる。

ルバーク程ではないが、なかなか美味しいお茶を淹れられるようになった。

「食事だけじゃなく、茶まで悪いな。」

リンデンはニカッと顔を崩して言う。

「いいんです。・・・で、どうしてここに来たんですか?」

馬がいるのなら、わざわざ危険を冒してまで鬼蜘蛛の森に来る必要はない。

「・・・そうだな。一つはお前たちが街に来ないから、ギルドマスターが心配しててな。」

「話の途中ですいません。俺たち、ギルドマスターにお会いしたことないんですけど・・・。」

俺の言葉を聞いて、リンデンはガハガハと笑った。

少し下品な笑い方だが、リンデンに似合うワイルドな笑い方だ。

「マスターはお前たちが優秀なことを知っているぞ。悪いが、アイテムボックスのこともな。」

「そうですか・・・。」

「心配するな。別に広めようって訳じゃない。で、二つ目は橋を何とかしてほしいと思ったんだ。頼む、見てできないならいいんだ。ダイクの魔力量は普通じゃない。もしかしたら、何とかなるかも知れねぇと思ったんだ。」

何とかしてあげたいのは山々だが、ウルフの襲撃を考えると簡単には返事ができなかった。

「二、三日待ってもらってもいいですか?」

「二、三日の理由を聞いてもいいか?」

「この森はウルフの襲撃が増えています。ルバークさんが出かけていて、俺たちが残っているのもそれが理由です。だいたい、二、三日に一度のペースで襲ってきてます。」

リンデンは、腕を組んで何かを考えているようだった。

「そうか・・・、ここもそうなのか。」

「ここもって、どういう意味ですか?」


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