第5話 シラクモ
シラクモは俺の手に飛び乗り、前足を交互に上下運動している。
何故、こんなに大きくなったのかはわからない。
考えても分からないことはいったん置いておこう。
シラクモの背中を撫でながら、思った。
害をなさないなら、今まで通り家族だ、と。
まずは、食料の確保が優先だ。
獣の解体をしないことには食べることができない。
短剣を毛皮にあててみるが、傷一つつかない。
ん~、と顎を触り険しい顔を浮かべて獣とにらめっこしていると、シラクモが手から獣に乗り移った。
なんだと思い、見ていると、前足を器用に使って毛皮を剝ぎだしたのだ。
錆びた短剣で傷つけられなかった毛皮を・・・
「シラクモ・・・お前、そんなことできるのか!?」
シラクモの手捌きを感動しながら見ていると、ロゼもすごいねーなんて言いながら俺の手を取った。
「ダイク兄、水汲みに行こう!」
「体調は大丈夫か?疲れたなら待っててもいいぞ。」
「だいじょうぶだよ~。ダイク兄、しんぱいしすぎィ~。」
膨らんだロゼの頬を指でつつきながら、謝り、笑った。
「シラクモ、水汲みに行ってくるよ。解体をお願いしてもいいかな?」
毛皮を剥いでいた白銀の毛に包まれた手が丸を作る。
背中を撫でて、川へ向かった。
川までは大体三十分位のところにある。
ロゼと手を繋ぎ、木の実や果物、きのこを探しながら川へ向かう。
「ロゼはシラクモが大きくなってて、驚いた?」
「おどろいたけど、すぐにクモさんだってわかったよ!」
いつもと同じ場所にいて、手を挙げて挨拶してたことなんかを教えてくれる。
脱皮とかのレベルじゃなく大きくなってるんだよなぁ。
進化と言われれば、しっくりくる変わりようなのだ。
しかも、普通にコミュニケーション取れてたよね。
知能も高い特別な蜘蛛だったのかなぁ、なんて考えているうちに川に着いた。
ちなみに食べ物は見当たらなかった。
川幅は一メートルもない川底も十センチ程の小さなものだった。
石や岩で歩きづらいが、苔が生い茂る綺麗な川だった。
小魚が群れを成して泳いでいるので、上流や川幅の広いところに行けば魚が手に入るかもしれない。
ロゼと水筒に水を入れ、のどを潤す。
冷たい水が体にしみこんでいく。
本来なら煮沸してから飲んだ方が安全なのだろうが、今まで散々飲んできたのだ。
「ロゼ、短剣は持ってきてる?」
「もってるよー。」と腰から取り出し天高く掲げるように見せてくれる。
せっかく水辺で様々な石があるのだ。
研いでおいた方が、今後の役にもたつだろう。
手触りを確かめながらきめの細かい石とざらざらな石を川縁に置く。
ざらざらな石に水をかけながら短剣を研いでいく。
「こうやって錆を落とすんだ。ロゼもやってみる?」
背中から見ていたロゼに声をかけると、キラキラした目で激しく頭を上下に振っていた。
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