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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第三章 ダイク 七歳
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第51話 ルバークのいない森

昨年の夏を過ぎたころから、ウルフたちの襲撃回数が増えた。

二、三日に一回ほどのペースでマザーの縄張りに侵入してくる。

余りのペースにあれ以来、ヴィドの村にもサンテネラにも行けていない。

ストレスがたまる一方だが、ウルフ共を退治して発散している。


初めのうちはルバークの手伝いで縄張りを防衛していた。

何度か繰り返すうちに、俺とロゼも鬼蜘蛛の森の守護者の称号を得ていた。

今ではマザーから直接の指示が飛んできて、縄張りを守っている。


「ロゼ、マザーから連絡だ。行くよ!」

「うん、ボクも行くよ!」

シラクモを頭に乗せたまま、ロゼと家を飛び出した。

指示された方向に走りながら、装備を整える。

ルバークは、街に食料の買いだしに行っていて、今は不在だ。

本当は俺とロゼで行こうとしたが、ロデオが一歩も動いてくれなかった。

そのため仕方がなく、ルバーク一人で買いだしに行った。

称号を貰ったからには、鬼蜘蛛たちだけに任せるわけにはいかない。

俺たちがいなくても十分だとは思うが、何かあってからでは遅い。

俺たちも家を守らなければならないのだ。

ウルフ共の襲撃が続く間は、三人でのお出かけはお預けになった。


走る先からウルフの遠吠えが聞こえてくる。

遠吠えされると、周囲のウルフが集まってきてしまう。

「ダイク兄、あそこだ!」

ロゼが指差す方向には、鬼蜘蛛とウルフがすでに戦闘を繰り広げていた。

「急ごう、ロゼ!」

俺とロゼは体に薄い魔力を纏い、走るスピードを上げる。


サクラの『中二病魔導大全』のお陰で、身体強化を使えるようになった。

力が強くなるし、移動速度も上がる。

初めは感覚のズレに手こずったが、今となっては慣れたものだ。

あっという間にウルフとの距離を埋め、ロゼは剣を振るう。

俺も負けじと風の刃を飛ばしていく。

シラクモも俺の頭の上から離れて、鬼蜘蛛たちと共闘している。


ある程度倒すと、奥から一回りも二回りも大きなウルフが現れる。

赤い毛が所々混じったウルフで、火を吐く厄介者だ。

「ロゼ、レッドウルフだ!他はシラクモたちに任せて、俺たちはあいつだ!」

ロゼは頷き、レッドウルフ目掛けて走り出す。

レッドウルフは口から火を吐きながら、辺りの木々を燃やす。

俺はロゼの前方に結界を張り、水魔法で消火作業をする。

「分かってるだろうけど、一回切りだからな!」

俺がロゼに張る結界は、一度しか守ってくれない。

自分自身に張る結界はそんなことないのに、他の人に張る結界は攻撃を一度受けると割れて消えてしまう。

「大丈夫だよ、ダイク兄!」

走った勢いで跳び、体を小さくしてレッドウルフの吐く炎の中に突っ込んでいった。

俺は延焼を防ぐために消火作業に専念する。

懐に飛び込んだロゼは強い。

バターでも切るかのように、相手を一刀両断する様が煙越しに見えた。

断末魔を上げる暇もなく、レッドウルフの頭が転がった。


「終わったみたいだね。」

言葉にたどたどしさの無くなったロゼが言う。

「そうだな。ロゼ、怪我はないか?」

「うん、ダイク兄の結界のお陰だね!」

兄を立ててくれる、できた弟だ。

シラクモたちの方を確認すると、すでにウルフの亡骸を積み上げてくれていた。

レッドウルフを回収して、シラクモの元に戻る。

「ありがとう。シラクモたちは怪我しなかったか?」

シラクモが前足をあげると、周りの鬼蜘蛛たちも真似て前足をあげる。

無事に怪我無く、討伐が完了したみたいだ。

積み上げられたウルフを回収し、近くの鬼蜘蛛を撫でてやる。

一匹撫でると、列を作って撫でられに来る。

撫でられた鬼蜘蛛は、それぞれの警備する場所へと戻っていく。

最後にシラクモを撫でて、ロゼの頭も撫でる。


「俺たちも行こうか。」

俺たちからはメッセージを送れないため、討伐後はマザーに報告に行っていた。

急ぐことは無いので、ゆっくりと木の実や果物を回収しながら向かった。

「本当に最近、多いね。ウルフたち。」

「そうだな。マザーに聞いてみようか。あの先に何があるのか。」

「それいいね!」

ウルフたちが襲撃してくる場所は、ある程度同じところだった。

襲撃を止められるなら、その先に行って何かしらの対処ができるかもしれない。


マザーの元に辿り着くと、早速ロゼが質問をぶつけた。

「マザー、ウルフたちは倒してきたよ!あそこの先って何があるの?」


(ありがとう。あの方角には・・・遺跡がある。)


「遺跡ですか。そこをウルフたちが根城にしてるんですかね?」


(可能性はある。行ってみるのか?)


「はい。何としてもこの状況を改善しないといけません。今は怪我無くやれてますけど、この先はわかりませんからね。それに、毎回それなりの数を倒しているのに、おかしいですよ。どうやってウルフは数を維持してるんですか?」


(そうだな。行ってみる価値はありそうだ。気を付けていきなさい。)


「「はい!」」

そう元気に答え、マザーの元を離れる。

「ダイク兄、いせきって何なの?」

ロゼが頭を傾けながら聞いてくる。

「ん~、ずっと昔の人たちの生活の痕跡かなぁ。建物だったり、洞窟に絵が描いてあったり昔の人たちが生きていた跡のことだよ。」

頭の中から捻り出したが、ロゼに伝わるだろうか。

「ふ~ん、そうなんだ。楽しみだね!」

「もう少しで暗くなるから、明日の朝早くに出発な。」

「うん、わかってるよ。ダイク兄!」

ロゼとそんな話をしながら、家に帰った。


明日に備えて、風呂で疲れを取って早く寝ることにする。

俺たちがいない間にルバークが帰ってきても心配しないように、置手紙も書いた。

移動しながら食事できるように、唐揚げパンの準備もした。

準備万端でベッドに入るが、なかなか寝付けなかった。

左腕はロゼが抱き着くように寝ているので動くことができない。

右手でシラクモを撫でながら、目をつぶる。

どんな遺跡なんだろう・・・そんなことを考えているうちに眠りについた。


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