表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
54/136

第50話 サクラの遺産

ついに50話です!

ここまで続けて読んでくれた方、ありがとうございます!

マザーの元に戻ると、マザーの方から声をかけてくる。


(サクラの望みを継いでくれ。ダイク、頼んだぞ。)


「今は正直、自信がありません。でも、サクラさんの思いは受け取りました。また、地下の本を読みに来ますね!」


(そうか、今はそれでいい。ここにはいつでも来るがよい。)


「ありがとうございます。今日はもう帰りますね!」

マザーの側にいたシラクモが、俺の頭の上に戻ってくる。

マザーからの返事は無かったが、いつでも来てもいいと言われた。

ここには知りたい知識が詰まっている。

ちょくちょく来て、サクラの話を聞くのもいいだろう。

ルバークは水晶を貰えたみたいで、機嫌がいい。

俺たちはマザーに挨拶をして、家へと帰った。


あの部屋で何があったのか、ロゼとルバークから質問されることはなかった。

マザーから何か聞いているのかもしれないが、俺からはまだ話せなかった。

一旦、心の整理が必要だった。

会話も少なく、家路を急いだ。


家に着く頃には、空が夕日に照らされて真っ赤になっていた。

日に日に、日が伸びているのを感じる。

家に入るとすぐに夕飯となり、食べ終えたルバークは部屋に籠ってしまった。

よっぽど水晶のことが気になっていたんだろう。

「ロゼ、二人でお風呂に入ろうか?」

ルバークは魔法で済ませるつもりだろうから、誘わない。

「うん、いいね!」

ロゼと頭にシラクモを乗せ、裏庭の風呂に向かう。


お湯を張っている間に、ロゼはロデオと遊んでいた。

ロゼからの一方的なちょっかいだが、ロデオも嫌がる素振りは見せない。

何だかんだ、ロデオは俺たちに冷たいが嫌いではないんだろう。

「ロゼ、準備できたよ!」

湯の温かさを確認しながら、ロゼに声をかける。

「ありがとう!いま行くよ、ダイク兄!」

ロゼは服を脱ぎながら走ってきて、魔法できれいにしてくれる。


湯に浸かりながらも、今日の出来事を考えてしまう。

「ダイク兄、どうかした?」

俺の上に乗っているロゼが、顔を覗き込んでいた。

「なぁ・・・、ロゼは勇者になりたいと思うか?」

軽い気持ちで聞いてみた。

これからどんな心境の変化があるのかは分からないが、今のロゼの意思を知っておきたい。

「ゆうしゃってなんなんだっけ?」

「ルバークさんは、魔王を倒すことができる人って言ってたよね。」

「まおうはわるい人じゃないって言ってなかったっけ?だから、なりたくないな。」

そうなんだよなぁ。

何のために、ロゼにそんな役割が降りかかろうとしているのかがわからない。

魔王が暴走した時のための制御機能のようなものなのだろうか。

「ごめん、そうだよな。」


シラクモはプカプカと気持ちよさそうに湯に浮いている。

ルバークのいない風呂を、ゆっくりと浸かり満喫した。


部屋に戻り、ベッドに入るとロゼはすぐに寝てしまった。

一人でアイテムボックスのウィンドウを見ながら考え込む。

サクラの遺産には、『中二病魔導大全』なる魔導書が入っていた。

ロゼの睡眠の邪魔にならない程度の光の玉で読んでみるが、サクラの使うことができた魔法が書かれていた。

サクラもアイテムボックスを使えたみたいで、あとは結界魔法の使い方が書かれている。

裏庭の結界はサクラの魔法によるものなのかな。

これは、魔法の勉強の時間に役に立ってもらうことにする。


他には、料理のレシピに醤油や味噌が大量に入っている。

レシピには醤油と味噌の作り方まで書かれていた。

試行錯誤した跡が読み取れ、それほどまでに故郷の味を求めていたんだろう。

ありがたく使わせてもらうことにする。


問題はここからだ。

大量の武器が送り込まれていて、その中に聖剣や魔剣が含まれていたのだ。

なんでこんなものをサクラが持っていたのかは分からない。

当面は俺だけの秘密にしておこう。

これを持ったことで、ロゼが候補生から正式に勇者になってしまうかもしれない。

平穏な日々に、必要のないものだ。

使うことなく、次代に引き継ごうと心に誓う。


一息つくと、眠気が襲ってくる。

隣のロゼとシラクモを見ると、寝息を立てて幸せそうな顔をしている。

重くなる瞼に逆らうことなく閉じると、夢の世界に旅立った。



夢の中で、大人の女性が笑っていた。

とても幸福感に満ちた笑顔だ。

俺の想像が作り出したサクラだと思う。

夢の中でも、はっきりと意識があった。

口元が動いている。

声は聞こえてこないが、俺には伝わった。


遠くの方で、ロゼの声が聞こえてくる。



「ダイク兄、あさだよ!」

ロゼが俺の体を揺らして起こしてくれていた。

「おはよう、ロゼ。もう起きたよ。」

「おはよう、ダイク兄。なみだがでてるよ。わるいゆめでもみたの?」

目元を拭うと、確かに濡れていた。

「そんなことは無かったと思うんだけど・・・。もう覚えてないな。」

辛い夢ではなかったが、もう思い出せない。

「そう?ならいいんだ!かお洗いにいこう!」

ロゼは朝から元気だ。


ルバークは部屋からまだ出てきていなかった。

顔を洗って、味噌汁を作った。

出汁がないので、代わりに野菜をたっぷり入れて。

「もう少しで出来るから、ルバークさん起こしてきて!」

それを聞いたロゼは、階段を駆け上がっていく。

味噌をスープに溶かすと、懐かしい匂いが部屋に漂う。


「いい匂いね。楽しみだわ!おはよう、ダイク君。」

ルバークの顔色は悪いが、元気そうだ。

「おはようございます。これは、昨日サクラさんから頂いたものの一部です。」

ルバークには何のことかが、すぐに分かったみたいだった。

「俺の故郷の味です。完璧に再現はできてませんが、美味しいですよ。」

深めの皿に分けて、配りながら言う。

「いいにおいだね。おいしそう!」

テーブルの上は食事の用意が整った。

「じゃあ、食べましょうか!」

「「「いただきます!」」」


故郷の味は好評で、二人とシラクモは何度もお代わりをしていた。

俺も久しぶりの味に涙が流れそうになるが、上を向いて堪える。


魔法の練習、体力づくり、この世界の勉強、料理・・・。

魔王を倒す暇もないほどに、忙しい日々が始まった。


評価とブックマーク、ありがとうございます!

まだの方は是非、お願いします!


モチベーションになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ