第4話 冬を前にして 2
倒木に辿り着いた。
目の前にすると、大きさがよくわかる。
直径二メートルはあるだろう、立派な大木が木々を縫うように倒れている。
獣のこともあるので、分担して素早く終わらせることにしよう。
ロゼには木の上面を、俺は周囲を見て回る。
こそこそとロゼに伝え、登るのを補助してやる。
「なにかあれば呼ぶんだよ。」と送り出す。
きのこが落ちてきた洞のあたりを捜索するが、何にもなかった。
きのこが生えていた痕跡すらない気がする。
ん~、と顎に手を当てて難しい顔をしていると、ロゼから小さな声でお呼びがかかった。
洞に足をかけ、勢いをつけて登り、ロゼの元へ急ぐ。
「あそこ見て!なにかあるよ~!」
きのこが落ちてきた洞とは別の大きな洞を指差し、小さい声で教えてくれる。
蜂の巣かな?飛んでいる蜂は見当たらない。
巣に顔を近づけ、耳を澄ますが羽音も聞こえてこない。
短剣で突いても蜂は出てこなかった。
「これは蜂っていう虫の巣だね。よく見つけたなぁ。」
頭をワシワシ撫でながら、褒めてやった。
洞に体を落とし、蜂の巣を支えながら短剣で接着面をザクザクと剝がしていく。
剥がれた部分からは蜂蜜の甘い匂いが漂い、完全に木から離れるとなかなかの重量があった。
巣を先に持ち上げ洞から出て、ロゼに渡す。
先に地面へ飛び下り、巣を受け取る。その巣を床に置いて、ロゼを受け止める。
木の解体をして、薪として利用したいが今はどうすることもできない。
他には何もなかったことをロゼに伝え、巣を持って獣の元へ急ぐ。
獣は相も変わらずそこにあった。
巣をロゼに渡し、持って帰れるか聞いてみる。
ロゼは満面の笑顔で頷いてくれる。
獣を吊り上げていた蔓を短剣で引きちぎり、背中に抱えて家路を急ぐ。
なかなかの重さに苦戦しながら、休憩を挟みつつ家に帰ってきた。
「ロゼ、お疲れ様。コッソリできて偉いぞ!!」
「でしょ、ただいま~。あれっ、クモさんかえってきてるよ!」
ただいまと家に入ると、天井に蜘蛛がいた。
あれっ、記憶にあるのは黒っぽい小さい蜘蛛なんだけど・・・
見るからに大きいし、白銀のフサフサの毛が体と六本の足に生えている。
蜘蛛って六本足なんだっけ?
目は顔の真ん中に一つ大きいものがあり、その左右に三つずつあるのがわかる。
何より特徴的なのは猫耳のようなものがあるのだ。
なかなかに可愛らしい見た目をしている。少なくとも嫌悪感はない。
「ほら見て、せいちょうしたあのクモさんだよ~!」
ロゼが手を上げ下げすると、蜘蛛も前足を上げ、同じ動きをする。
確かに、以前からそうやって遊んでいたっけ・・・
まぁ、細かいことを気にしたらキリがないもんね。
「ロゼ、蜘蛛さんに名前をつけてやれば?」
ん~、ん~、とロゼが頭を抱え始めた。
ロゼが頭を働かせている隙に、獣の解体を試みる。
が、毛皮が短剣を通さない。
短剣の錆をどうにかしないと厳しいか、と考えているとロゼがムスっとしながら言う。
「ダイク兄もかんがえて!」
「ごめんごめん、何かいい名前は浮かんだ?」
「ぜんぜん浮かばないよ~。なまえってどうやってつけるの?」
「例えば・・・白っぽい蜘蛛だから白蜘蛛はどうかな?」
というと体から何か抜けるような感覚に襲われる。
フラリとして膝をつく。
心配そうにロゼが見てきたが、何でもないと立ち上がる。
「ならきまりね、このクモさんはシラクモだよ!シラクモ~、これからなかよくしてね!」
ロゼがそう告げると、シラクモが俺の方に向かって飛んできた。
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