第43話 これからの予定
宿に戻るとおばちゃんは元気に働いている。
一体いつ休んでいるのだろうか。
「おばちゃん、お疲れ様。今、戻ったわ。」
ルバークが声をかけると、元気な声が返ってくる。
「おかえり!ご飯の用意は、もうできてるよ。すぐに食べるかい?」
「えぇ、お願いするわ。」
空いている席に移動し、食事を楽しんだ。
「おばちゃん、美味しかったわ。ごちそう様。部屋はどうなったかしら?」
ルバークは部屋の修理状況を聞いていた。
「ごめんよ、あの部屋は当分ダメだね。今日は隣の部屋が空いたから、そっちに移ってくれるかい?」
「わかったわ。ありがとう!」
「「ごちそう様でした!」」
おばさんに挨拶をして、いつもの部屋の隣の部屋に入る。
すでに荷物が部屋に移動されていた。
荷物といっても大したものは無いが、ありがたい。
部屋で一息つくと、ルバークに褒賞金の話をした。
「ギルドのカウンターで褒賞金をもらいました。金貨五枚を。」
アイテムボックスから金貨五枚を取り出し、ルバークに見せる。
「あら、よかったわね!」
「ルバークさんがメインで活躍したので、これはもらってください。」
ルバークの手の上に載せて、包み込むように握らせる。
「そう・・・わかったわ。じゃあ、こっちはダイク君たちがメインだったわよね!」
オークとウルフの清算金が、俺の手に渡される。
「ウルフの分はいいんですか?ってか、ウルフをヴィドさんたちに置いてくるの忘れてますよ!」
俺も一度は思い出したが、後の祭りだ。
もうすでにお金に変わってしまった。
「あら、そうだったわね、すっかり忘れてたわ。食べられるものでも買って、帰りに寄りましょうか。」
ルバークもすっかりと忘れていたようだ。
「いつかえるの?」
ロゼがルバークの目を見つめて質問する。
「そうねぇ・・・ロゼ君はいつ帰りたい?」
ルバークもロゼの目を見つめ返している。
「ボクはもう少しギルドでいらいをやりたいな。」
「ダイク君は?」
俺の目をルバークは見つめてくる。
「俺ももう少し市場や、いろいろな店を見て回りたいです。あと、冒険者の活動も。」
「じゃあ、あと一日いましょうか。明日のうちに二人は全力で街を楽しみなさい。明後日の朝に出発することにしましょう。」
優しい笑顔でルバークがそう言うと、ロゼは大喜びだった。
ロゼの側にいるシラクモも嬉しそうだ。
これ以上、お金のやり取りは無粋な気がして、大人しくアイテムボックスに収納した。
寝る時間になると、ルバークは窓とドアを土魔法で覆った。
昨晩のようなことが無いようにだろうが、厳重に塞がれている。
「これで安心して眠れるわ。二人ともお休みなさい。」
「「おやすみなさい。」」
朝早くに、ロゼに起こされた。
「ダイク兄、もうあさだよ!ギルドにいくよ!」
まだ早いが、ロゼを一人で行かせる訳にもいかず、急いで準備する。
寝ぼけているルバークに小さく声をかける。
「ルバークさん、俺たちは先に出ますね。」
「そう・・・気を付けてね。・・・いってらっしゃい。」
ルバークは半分眠りながら、送り出してくれた。
「シラクモもいくよ!」
シラクモにフードに入ってもらって、早速部屋を出る。
「おや、早いね。おはよう!今、用意するよ。少し待ってて。」
おばさんは朝から元気に働いている。
「おはようございます!朝早くからすいません。お願いします!」
「おはよう!」
挨拶を交わし、カウンターに腰掛ける。
「まだ、パンと煮込みしかないけど、これでいいかい?」
「いいです!」
ロゼが元気に答える。
そんなに早くギルドに行きたいのか。
俺たちは急いでご飯を食べて、冒険者ギルドへ向かった。
冒険者ギルドに入って、掲示板を確認する。
早すぎるためか、人がほとんどいない。
Eランクでも受けられる依頼を探すが、面白そうなものは無かった。
「おはようございます。依頼をお探しですか?」
受付のお姉さんが背後から声をかけてくる。
振り向くと、手には羊皮紙の束を持っている。
「おはようございます!そうなんですけど・・・あまりいいのが無くて。」
「おはよう!」
「それでしたら、こちらはいかがですか?」
お姉さんが、これから貼ろうとしていたであろう依頼を渡してくる。
羊皮紙を確認すると、魔獣の討伐依頼だった。
「ボクにもみせて!」
ロゼに見せると、「はちみつとれるかな?」と目を輝かせている。
ロゼが言う通り、蜂の魔獣の討伐依頼だ。
「これでいいの?」
ロゼに聞くと、「いい!これがいい!」と乗り気だ。
依頼を貼っているお姉さんを待って、カウンターへと移動する。
「こちらの依頼ですね。こちらをご覧ください。」
蜂の魔獣の書かれた図鑑を見せてくれる。
「以前、お二人が薬草採取された森で見つかったようです。尾の針には毒がありますので、お気を付けください。毒消しの薬はお持ちですか?」
「持ってないです。」
「では、買っていかれた方がいいかと思います。二本で銀貨一枚です。いかがでしょう?」
鞄から銀貨五枚を取り出し、カウンターに置く。
「これで、十本お願いします。」
「かしこまりました。」
お姉さんがカウンターの脇の棚から、小さな瓶を十本置く。
「お買い上げありがとうございます。討伐証明として、尾の針をお持ちください。討伐数に応じて報酬も増えますが、危なくない範囲で構いません。無事にお戻りください。」
お姉さんは丁寧に頭を下げて、見送ってくれる。
鞄に毒消しの薬を、十本収納する。
「「行ってきます!」」
ロゼの手を引いて、冒険者ギルドを飛び出した。
門に着くと、顔なじみの門番に話しかけられる。
「おお、お前たち。先日はご苦労さんだったな。今日も冒険者の仕事か?」
「うん、もりでハチたいじだよ!」
ロゼが元気に討伐対象まで教えている。
「いいか、油断するなよ。森にいるのは蜂だけじゃないからな。危ないと思ったら、すぐに帰ってこい!」
「「はい!いってきます!」」
門番の忠告をありがたく受け取り、森へと走る。
「シラクモ、出ておいで。今から手分けしてハニービーを探すよ。」
フードから跳び出て、地面でピョンピョン跳ねている。
「何がいるか分からないから、声は出さないようにね。」
ロゼに注意すると、森の中へと入っていく。
シラクモを中心に、俺とロゼが五メートルほど離れて脇を固める。
ハニービーが飛ぶことを考えると、上空にも気を使いながらゆっくりと進んだ。
時折、角兎を見つけるが、シラクモを見ると脱兎のごとく逃げていった。
しばらく歩くと、シラクモが何かに反応を示した。
シラクモが見つめる方向を見ると、ずんぐりした体にフカフカの体毛に覆われた蜂がいた。
シラクモくらいの大きさがあるだろうか。
どこかに向かって飛んでいる。
ロゼとシラクモの側にいき、蜂を追いかけることを伝える。
蜂はフラフラとしながら、ゆっくりと進んでいく。
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