第40話 依頼終了とお金
アイリーンは報告を終えると、俺たちにウインクして去っていった。
俺とロゼは手を振って見送った。
「お待たせしました。こちらへどうぞ。」
受付のお姉さんに、カウンターへと呼び寄せられる。
「依頼の報告で来ました。」
「では、首にかけているタグをこちらに載せてください。」
お姉さんが用意した魔石の上にタグをかざすと、依頼内容が浮かび上がる。
これも魔道具の一種なんだろうか。
「わぁ~。」とロゼも驚いている。
「では、採取したものをカウンターにお願いします。」
そう言われ、鞄に手を入れて、アイテムボックスから薬草の束を取り出す。
「確認しますので、少しお待ちください。」
お姉さんは、一本一本丁寧に確認してくれている。
「もう少しあるんですけど、それも出せば買い取ってもらえますか?」
「はい、買取はできますが、成果に上乗せはされません。それでもよろしければお出し下さい。」
お姉さんは丁寧に笑顔で答えてくれる。
薬草は必要ではないので、カウンターに全てを載せた。
「お待たせしました。問題なく、採取できています。こちらが今回の成功報酬です。こちらは買取金となります。一連の流れで、何か分からないことはありますか?」
お金を受け取りながら、考えたが特には思い浮かばない。
「特にないです。ありがとうございます!」
「ます!」
「分からないことがあれば、何でも聞いてくださいね!今日はお疲れさまでした。」
「「お疲れさまでした!」」
そう言って、カウンターを後にする。
手の中で銀貨四枚が音を立てている。
採取だけで、大体4,000円ほど稼いだことになる。
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金貨一枚 10,000円
銀貨一枚 1,000円
銅貨一枚 100円
鉄貨一枚 10円
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昨日食べた串焼きは四本で銅貨一枚だった。
円で考えると微妙だが、物価の安い世界では十分にもらえただろう。
冒険者とは稼げる仕事みたいだ。
銀貨を鞄経由でアイテムボックスに入れておく。
少し早いが、リンデンのいる解体部屋に行ってみることにした。
「おうっ、早いな。オークの解体はもう終わってるぜ!」
俺たちを見つけるなり、リンデンはそう言った。
「こっちに来てくれ。肉が待ってるぜ。」
リンデンについていくと、肉が山積みになっている。
「ありがとうございます!」
そう言って、アイテムボックスに収納していると、リンデンが口を開く。
「相談なんだが、もう少し肉を分けちゃくれないか?冬が明けたばかりで、食料が少ないんだ。少し色もつけるからよ、頼む!」
手を合わせてお願いされる。
「いいですよ!この量ですしね。」
アイテムボックスに入れておけば保存は効くが、街のために使われるなら別に構わない。
リンデンに教わりながら、美味しい部分を中心にもらうことにした。
「俺たちはこのくらいの肉があれば大丈夫です。」
大体100Kgくらいの肉を収納した。
これでもリンデンが言うには、オーク二体分もないらしい。
「ありがとよ。今からこの肉を足すとなると時間がかかる。残りのウルフと一緒に清算でいいか?」
「はい、問題ないです。いつ取りにくればいいですか?」
「そうだな。明日の昼過ぎには終わるだろうよ。それ以降で頼むぜ!」
「わかりました!では、また明日来ますね。」
「あしたきます!」
冒険者ギルドを出ると、空は夕焼けに染まっていた。
ロゼと手を繋いで、急いで宿へと帰った。
宿の扉を開けると、カウンターでルバークと宿のおばさんが談笑していた。
酒場のお客さんは、まだいないようだ。
「ルバークさん、戻りました!」
「ただいま、ルバークさん!」
「お帰りなさい。二人とも疲れてない?」
ルバークの元へと行くと、宿のおばさんが夕飯の準備を始める。
「大丈夫です!」
「げんきだよ!」
「二人が帰ってきて、一気に賑やかになったね!今、夕飯にするから手を洗って、座って待ってて!」
宿のおばさんは相変わらず、元気に働いている。
洗面所で手を洗って戻ると、ルバークはカウンターからテーブルへと移っていた。
ロゼが今日の出来事をルバークに報告していると、夕飯の準備が整う。
「「「いただきます!」」」
夕飯を食べながらもロゼの報告は続いた。
以前とは違い、ロゼの話は要点を掴み、わかりやすくなっていた。
成長を感じつつ、美味しく楽しい夕食となった。
食べ終わるころには、酒場が賑わいだした。
宿のおばさんに、美味しかったことを伝えて部屋へと戻る。
冒険者になったことが余程嬉しかったのか、ロゼの話は止まらない。
ベッドで眠りにつくまで話は続いた。
ロゼが眠りについてからは、二人で明日の予定について話した。
「リンデンさんのところでお肉を受け取りました。ギルドでもお肉が欲しいらしく、半分以上は売ることになります。オークとウルフの解体は明日の昼過ぎに終わるそうです。清算もその時にすることになってます。」
リンデンと話したことを伝える。
「そう、わかったわ。じゃあ、夕方ごろにでもギルドに行けば確実ね。」
「そうですね。あと、これは今日の依頼でもらったお金です。」
アイテムボックスに入れていた銀貨をルバークに手渡す。
「こんなにもらえたの!?頑張ったわね。」
俺と寝ているロゼを優しい笑顔で見つめてくる。
ルバークはマジックバックを漁って、小さな袋を取り出した。
その小さな袋に銀貨を入れて俺に差し出してくる。
「このお金は、あなたたち二人で使ってちょうだい。」
中を見ると、オークの解体で得たお金も入っているみたいだ。
「いいんですか?俺たちはお世話になってますし、今のところお金は必要としてませんし・・・。」
「当り前じゃない、いいに決まってるわ。これはあなたたちが稼いだお金よ。二人のために使ってちょうだい。」
ルバークはそう諭すと、ベッドに横になった。
ルバークからもらった小さな袋を見つめる。
俺としては、このお金をルバークにあげてしまっても問題なかった。
お金を稼ぐ手段も知ったし、何よりお世話になりっぱなしだ。
何らかの形でルバークに恩を返さなければならない、と思っていた。
ルバークは何を喜んでくれるだろうか・・・。
そんなことをベッドで考えていると、いつの間にか眠っていた。
まだ、夜中だろうか・・・目が覚めた。
ロゼは気持ちよさそうに眠っているが、ルバークはベッドで体を起こしている。
シラクモも起きて、部屋を見回している。
何かあったのだろうか・・・。
「ルバ・・・。」
ルバークに口元を押さえられ、言葉が止まる。
なんだ、とルバークを見ると口元で指を立てて、静かにというジェスチャーをしている。
耳を澄ますと、扉の向こうからミシミシという音が聞こえてくる。
人の足音だろうか。
静かにではあるが、確実にこの部屋へと近づいてきている。
窓の方からも、何かの音が鳴っている。
俺とルバーク、シラクモはベッドから出て、臨戦態勢をとった。
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