第39話 はじめての依頼
俺たちがルバークの元へと戻ると、厳ついおじさんは席から立ちあがった。
「じゃあ、またな!」
ルバークに向かってそう言い、冒険者ギルドを出ていった。
「二人とも、お疲れ様。その顔は、無事に合格できたみたいね。よかったわ!」
俺たちの頭を撫でながら、ルバークも嬉しそうな顔を浮かべている。
「ありがとうございます。合格することができました!」
「ありがとう、ルバークさん!」
ルバークが撫で終わるのを待って、席に着く。
「さっきの人はいいんですか?」
厳ついおじさんのことを、それとなく聞いてみる。
「別にいいの。さっきまで少し混んでいて相席しただけだから。」
なんだかはぐらかされている気がするが、ルバークに話す気がないなら仕方ない。
「そうですか。証明書発行されるまで、待ってくださいって言ってました。」
「そう、じゃあもう少し待ちましょうか。」
ルバークと試験での話をして待った。
「お待たせしました。よろしいでしょうか?」
受付のお姉さんが何かを持って、笑顔で声をかけてくる。
ルバークが「どうぞ。」と空いている席を勧める。
一礼して同じテーブルの席に着く。
「これから、冒険者についての説明をさせていただきます。」
木製のボードをテーブルに広げて、説明を始めた。
冒険者のランクがS、A、B、C、D、E、Fの七段階に分かれていること。
オークとウルフの戦歴が認められて、Eランクからスタートすること。
国の法律に基づいて行動すること。
依頼の受注方法など多岐に渡っての説明を受けた。
ロゼは途中から話を聞くのを諦めている。
「以上となります。難しい話が多かったかもしれませんね。まずは簡単な依頼を受けてみませんか?」
ルバークの顔をチラッと見ると、頷いている。
「お願いします!」
「します!」
「では、こちらにいらしてください。」
受付のお姉さんは立ち上がり、ついてくるように促す。
俺たちも立ち上がってお姉さんについていく。
冒険者ギルドの入り口すぐにある掲示板の前で止まる。
「こちらにランク別に依頼が貼ってあります。Eランクですと、一つ上のDランクまでの依頼を受けられます。今回はこちらの依頼でいかがでしょうか?」
お姉さんが指す依頼はFランクの薬草採取の依頼だった。
「俺はいいと思います。ロゼはどう?」
「それでいいよ!」
「では、こちらの依頼を剥がして、カウンターまで持ってお越しください。」
お姉さんはカウンターへと戻っていった。
依頼の羊皮紙を剥がして、カウンターにいるお姉さんの元へと持っていく。
「ほら、ロゼ。お姉さんに渡して!」
飽きてきているロゼに羊皮紙を持たせ、お姉さんに渡してもらう。
「おねがいします!」
ロゼは元気にお姉さんに羊皮紙を差しだす。
「お受けします。こちらの依頼は、ランタン草を五本とツユ草を五本、採取していただきます。」
お姉さんは図鑑を取り出し、丁寧にそれぞれの特徴を教えてくれる。
「近くの門を出て、右手の森で採取できます。なにか質問はありますか?」
「いえ、大丈夫です!」
お姉さんはタグの付いた首飾りを渡してくる。
「こちらが冒険者の証です。首にかけておいてください。」
首からかけて、タグを見ると名前とランクが彫られている。
「ありがとうございます!」
「ありがとう!」
ロゼも元気にお礼を伝えたところで、カウンターを離れた。
ルバークの元へと戻ると、ロゼはタグを自慢している。
「よかったわね!」
ロゼの頭を撫でながら話を続ける。
「まずは中途半端になったオークの解体をお願いしに行きましょうか。」
そういえば、オークを数体置いてきたままで出てきてしまった。
ルバークの言葉に頷いて、カウンターの脇にある扉を開く。
「こんにちは!」
タンクトップのおじさんを見つけ、挨拶をする。
「おうっ、お前たちか!オークの解体は済んでるぜ。」
おじさんは台車に元オークであったものを載せて持ってくる。
「冒険者の登録は済んだのか?」
俺とロゼは、首元のタグをおじさんに見せる。
「そうか、ダイクとロゼか。俺はリンデンだ。よろしくな!」
「よろしくお願いします!」
「します!」
「わたしはルバークよ。よろしく。」
それぞれに挨拶を交わすと、リンデンは小さな袋と羊皮紙を持ってくる。
「こいつが部位ごとの金額が書かれた紙だな。こっちが清算金だ。」
羊皮紙には細かい部位ごとに金額が書かれ、解体費用も引かれている。
ルバークは清算金の確認をしてくれている。
「リンデンさん、オークの食べられる部分だけは売らないことってできますか?」
鑑定で食べられることは知っていた。
豚肉に近いみたいで何としても欲しい。
「できるが、こいつらは無理だ。もう、売却先が決まっちまっててな。まだ持ってんだろ?その分に関しては別にしといてやるよ。」
リンデンは手を合わせて謝っている。
「わかりました。では、それでお願いします!」
「悪かったな。残ってるのをそこに出しておいてくれ。ルバークもな。」
指定された場所にオークとウルフを積み上げる。
ルバークの分もあるので、かなりの量がある。
「オークを優先にしとくから、夕方にでも取りに来てくれ。清算の準備もしとくからよ。」
リンデンはそう言うと、早速解体に励みだす。
俺たちはギルドを出て、門へと向かった。
どうやらルバークも門までついてきてくれるみたいだ。
「これは、お昼ご飯よ。門を出たところで食べるといいわ。」
マジックバックから小さな木箱をくれる。
「ありがとうございます。いただきます!」
「ます!」
「フフフ、いいの。頑張ってらっしゃい!宿で待ってるわ。」
気がつけば門までたどり着いていた。
「わかりました。行ってきます!」
「ます!」
ルバークに手を振り、門をくぐる。
「どこへ行くんだ?」
門番の兵士が声をかけてくる。
「あそこの森で、薬草採取です。」
冒険者タグを見せて、依頼だということを分かってもらう。
「そうか、頑張ってこいよ!暗くなるまでには戻るように!」
「「はい!」」
ロゼはやる気がでたのか、俺の手を引いて走りだす。
森まであとすこしというところで、お昼ご飯を食べた。
パンに昨日食べた串焼きが挟まっている。
ルバークが作ってくれたんだろうか。
とても美味しくいただいた。
シラクモも頭の上で美味しそうに食べている。
「ロゼ、何を採るのか覚えてる?」
食後、ロゼと依頼内容の確認をする。
「おぼえてるよ、だいじょうぶ!こんなやつだよね?」
身振り手振りで覚えていることを教えてくれる。
笑いがこみ上げてくるが、我慢して手を繋いで森の中へと入っていく。
しばらく歩くと、ランタン草の群生地を見つける。
「根っこからは取らないで、こう五本採るんだよ。」
短剣でランタン草の生え際から切っていく。
「ボクもできるよ!」
依頼では五本だったが、倍の十本採取した。
五本ごとに蔓で結んでアイテムボックスに収納する。
「あとはツユ草だね。」
辺りを鑑定してみると、あちこちに一本ずつ生えている。
ロゼと手分けして、採取していく。
このツユ草も、気がつけば十本集まっていた。
こちらも同様に処理し、アイテムボックスに収めた。
「これで依頼のものは集まったね。街に帰ろっか。」
シラクモはフードの中に戻っていく。
ロゼと手を繋いで、街へと戻る。
「お前たち、もう終わったのか?お疲れさん。」
小一時間ほどで戻ってくる俺たちに驚きつつも、労ってくれた。
「簡単な依頼だったので・・・ありがとうございます!」
「ます!」
門番の兵士と手を振って別れ、冒険者ギルドへと向かった。
冒険者ギルドに着くと、まっすぐにカウンターへと向かう。
依頼を終えた冒険者たちが列を作り並んでいる。
最後尾に並び、しばらく待つことになる。
「ロゼ、疲れてるならあそこで座って待っててもいいよ。」
空いている椅子を指差すが、ロゼからは「大丈夫だよ!」と返ってくる。
「あら、あなたたちも冒険者なの?小さいのに偉いわね!」
前に並んでいる小柄なお姉さんが声をかけてくる。
「今日登録したばかりなんです。俺はダイクで、こっちは弟のロゼです。」
「私はアイリーン。困ったことがあれば何でも聞いてね!」
「ありがとうございます!よろしく願いしますね、アイリーンさん。」
「お願いします!」
そんなやり取りをしているうちに、アイリーンの番となった。
評価とブックマーク、ありがとうございます!
まだの方は是非、お願いします!
モチベーションになります!