第3話 冬を前にして
間もなく季節が冬へと移り行く。
何とかダイクとロゼの二人で生きていかなくてはならない。
ここは森の中。
家の小さな出入口から森へ出て、辺りを見回す。
すごく綺麗な光景だ。
背の高い木は適度な間隔で生えていて、葉や枝の隙間から木漏れ日が差し込んでいる。
所々苔生していて植生も豊かだ。
様々な植物が生えている。
木の実や果実、きのこはある日を境に無くなったみたいだが、食べられるものはありそうだ。
間借りしている木は、中でも一番の大きさだった。
太さもそうだが、ほかの木々の頭一つ上に枝葉を茂らせていた。
その根元にある小さな隙間に、落葉を敷き詰め暮らしていた。
ペットの小さい蜘蛛はお出かけ中みたいだ。
持ち物も大したものはない。
服は七分丈の上着と長ズボンがそれぞれ一着ずつ。
短剣、竹でできた水筒もそれぞれ一つずつ持っている。
あとは火おこしの魔石と小さな肩掛けの鞄。
まずは、寒さをしのぐ家と食べ物が優先にだろう。
「ロゼ、聞いてくれるか?だんだん寒くなってきたよね。これから冬って季節になるんだ。冬に向けて食べ物とか薪とか色々と準備しないと生きていけないかもしれないんだ。」
「うん、わかるよ。またうごけなくなるのはこまるもんね!」
「そう。それでね・・・」
食べ物が沢山いること、家の補強がいることなどを伝える。
「色々と森を探さないといけないんだけど、ロゼの体調が心配なんだ。」
「もうだいじょうぶだよ!ダイク兄といっしょにがんばるよ!」
「わかった。辛くなったら言うんだよ。」
ロゼの体調を気遣いつつ、採集が始まった。
まずは倒木を見に行くことにする。
もしかしたらきのこなんかが見つかるかもしれない。
獣がどうなったのかも、ついでに見に行くことにしよう。
「この先に木が倒れててね、それを見に行こう。」
ロゼに余計な心配をさせないように、魔獣のことは避けて行き先を告げた。
ロゼは体が動くようになったことが嬉しいのか、俺の手を引いて走り出した。
十分ほどで獣のもとにたどり着いた。
獣自体は死んでいるのだろうが、後ろ足がつるに絡まり逆さ吊りになっていた。
見つけたときは思わず声が出そうになり、口元を手で押さえ耐えた。
ロゼも同じように口元を押さえていた。
記憶にあるのは必死で抵抗し、おそらく絶命したとは思うが、そのまま放置したと思う。
痛みでそれどころではなかったし、朧げな記憶ではあるが・・・。
「ロゼ、これは帰りに持って帰ろう。まずはもう少し先にある倒木を確認しよう。何がいるかわからないから、コッソリ行くよ。家に帰るまではコッソリだよ。」
ロゼの耳元で囁くように言うと、ロゼもコクリと頭を縦に振った。
誰が獣を処理したのか・・・まるで血抜きをしているようだった。
考えてもわからないことはいったん置いておこう。
倒木を素早く確認してここを去ることにしよう。
獣の死体から五分ほどで倒木に辿り着いた。
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