第35話 別れ
ルーナの家に着くと、夕飯を作ってくれていた。
「もう少しでできるから、座って待っていてください。」
扉を開けてすぐのテーブルに案内され、俺とロゼはそれぞれ座る。
失礼かなと思いながらも、家の中を見回す。
見た感じ、魔道具は一切なかった。
家具も必要最低限なものしかない。
煉瓦でできた竈に薪をくべながら、スープを作っている。
ルバークの家では贅沢な暮らしを出来ていたんだと知った。
ルバークたちはもう少しかかるというので、先に夕飯をとることになった。
配膳の手伝いをして、三人と一匹で食卓を囲う。
「「いただきます!」」
ルーナは笑顔で「何です、それ?」といつものやり取りをした。
パンと野菜スープのみだったが、疲れた体に染み渡るような美味しさだった。
「とても美味しいです!」
「おいしいです!」
夕飯を食べて、寝室を借りて休むことになった。
ルバークは俺たちが眠りにつくまでに帰ってこなかった。
起きると、隣にルバーク、反対側にロゼが寝ている。
ルバークはいつの間にか帰ってきていたみたいだ。
起こさないように、静かにベッドを離れ、部屋を出る。
いつもはロゼの目覚めを待つシラクモもついてきてくれた。
まだ朝早いのか、ルーナは起きていない。
ドアを開けて、外に出て体を伸ばす。
向こうの空が白んできて、明るくなってきている。
やることもないので、ロデオの様子を見に行くことにする。
馬小屋に行くと、すでにロデオは起きてご飯を食べている。
「おはよう、ロデオ。」
そう声をかけて、ブラシ掛けをする。
「おはよう、早いな。」
ヴィドがやってきて、声をかけてくれる。
「おはようございます、ヴィドさん。」
ヴィドはロデオの世話が終わるのを馬小屋にもたれかかり、待っている様子だった。
ロデオの世話が終わると、ヴィドが「ついてこい。」と一言告げて歩き出す。
どこに行くんだろうと、ついていってみる。
まだ、寝静まっている村を、二人で黙々と歩いていく。
どうやら村の入り口の方へと歩いている。
「ここが、畑だ。」
一瞬、何のことだろうと思ったが、すぐに思い出した。
荷車の中で、農作物の話をしたときに、俺が見たいと言ったことを。
どちらかといえば、芋の方を見たかったのだが・・・。
冬が明けたばかりということもあり、畑には何も生えていなかった。
せっかくなので、畑の土を触らせてもらう。
「ヴィドさん、収穫した芋って残っていますか?それも見たいです!」
ヴィドは頷くと、再び村へと向かって歩き出す。
結局、泊めてもらっているルーナの家に戻ってきた。
家の中に入ると、みんな起きていて、アルまでいた。
「おはようございます。」
みんなに向けて挨拶をすると、全員から挨拶が返ってきた。
「ダイク兄、どこいってたの?」
ロゼから当然の質問が投げかけられた。
「ロデオの様子を見に行ったんだ。あとは、ヴィドさんに畑を見せてもらったんだ。」
ふーん、と畑にはあまり興味なさそうな顔をしている。
ヴィドはキッチンの棚を探って、芋をいくつか持ってきてくれる。
いくつかは知っている形をしているが、知らない芋もあった。
一応、鑑定で見てみる。
さつま芋とじゃが芋、山芋を作っているみたいだ。
「ヴィドさん、余裕があれば食べ物と交換できませんか?ルバークさん、いいですか?」
事後報告になってしまうが、元々はルバークが買っておいた食料だ。
ルバークの顔色を伺うが、「いいわよ。」と軽い返事がある。
ヴィドとルーナはそれぞれの芋を袋いっぱいに用意していてくれた。
「持って行ってくれ。今までのお礼だ。」
抱えきれないほどの量を渡してくる。
「ヴィド君、ただはダメよ。ダイク君、この前獲った肉を代わりに出してちょうだい。」
ルバークに言われて、ホロホロ鳥の肉を取り出す。
さすがに鞄から出すのはおかしいので、アイテムボックスから出した。
ヴィドとルーナはアイテムボックスよりも肉の量に驚いているようだった。
「こんなに・・・いいのか?」
量的には二羽分くらいだが、かなりの量だ。
芋と交換でつり合いは取れているだろう。
「これでお願いします。」
葉っぱに包んで、交換となった。
「ダイク君、オーク五体も村にあげることになったわ。」
ルバークから昨日の話し合いについて聞くことになった。
俺たちの魔法については秘密にしてもらう。
代わりに、オークを五体差しだすことになったみたいだ。
村人や、ヴィドとアルも協力してくれたのに五体のみでいいのだろうか。
「わかりました。決まったことに従います。どこに出しますか?」
ヴィドの方を見て、聞く。
「食後に家の前で頼む。」
そう言うと、ルバークが朝食をマジックバックから用意しだした。
「残り物で悪いけど、食べてちょうだい。」
パンとそれぞれに色々な味のスープが配られ、朝食を食べた。
「わたしはロデオの準備をしてくるわ。二人も準備してね。」
朝食をパパっと食べ終え、ルバークは家を出ていく。
俺とロゼもパンとスープをかきこみ、部屋に戻って装備を整える。
準備を終え、借りていた部屋全体に浄化をかけ、ベッドを整えた。
ヴィドたちは家の外で、待ってくれていた。
「オークはここでいいですか?」
オークの出す場所を確認すると、ヴィドが頷いてくれる。
できるだけ、きれいな個体を並べるように置いていく。
「じゃあ、行きますね。ヴィドさん、アルさん、ルーナさんもありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
俺とロゼは頭を下げてお礼を言う。
「おいおい、やめてくれよ。助かったのはこっちだぜ!また、この村に来いよ!」
アルはそう言うと、ヴィドも「ウム。」と頷いている。
「助けていただいただけでなく、お肉やオークまで・・・本当にありがとうございます。」
ルーナも感謝を伝えてくれる。
ルバークの元へと行くと、すでに準備は終えていて、ロデオを撫でて待っている。
「二人とも、行くわよ!」
俺たちに荷車に乗るように指示を出し、自らも御者台に乗り込んでいる。
ロゼを押し上げて乗せていると、ヴィドが俺のことを押し上げてくれる。
「ありがとうございます!」
ヴィドとのこのやり取りも最後だと思うと、少し悲しくなってくる。
「じゃあ、みんな、元気でね。また今度来るわ!」
ルバークが挨拶する先には、村の人が総出で見送りに来てくれていた。
ロデオが走り出すと、村人たちから「ありがとう」と口々に叫んでいる。
俺とロゼは村の人たちが見えなくなるまで、手を振った。
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