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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
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第33話 対オーク

足跡を追って、雑木林まで走った。


走りながら、ルバークにオークの説明をしてもらった。

二足歩行の魔獣で、口には鋭い牙が生えており、武器を扱うことができるらしい。

個体により異なるが、基本は体格が大きくて力が強いみたいだ。

足を攻撃して膝をつかせてから、頭を攻撃するのがセオリーらしい。


雑木林の入り口に着くと、草木に隠れるように内部の様子を伺った。

オークとは、茶色の体毛が生えた猪のような魔物だった。

棍棒を持って、林をうろうろしている。

十体ほど見えるが、村人は見当たらない。


ヴィドとアルは、憤怒して震えている。

今にも中へ、飛び出してしまいそうなくらいに。

「ヴィド君、アル君、落ち着いて、冷静になりなさい。心配なのはわかるけど、助けるために聞いてちょうだい。」

ルバークは小さな声でそう言うと、俺の魔法について話し出す。

「ダイク君は色々な魔法が使えるわ。きっと役に立つはずよ。」


ルバークの一言で、俺の魔法が解禁となった。

ロゼの火魔法は燃え広がるの恐れがあるので、今まで通り禁止だ。

ルバークはどの程度魔法が使えるのか獣人たちに教えているが、アイテムボックスのことは言わなかった。

「それを踏まえて、作戦を立てるわよ。」

ルバークは俺たち一人一人の顔を見回し、作戦を考えているようだった。


「あの・・・いいですか?」

俺が考えた作戦を伝えると、あっさりと了承された。

「二人とも、武器はそれでいいのかしら?」

ヴィドとアルを見ながら、言う。

ヴィドは俺が預けた短剣二本、アルは俺の弓を持っている。

「ロゼと同じくらいの剣はないか?」

ヴィドがぼそりとつぶやく。

「おいらも、矢があれば補充しておきたいな。」


二人の意見を聞き、ルバークはマジックバックからそれぞれに剣と矢を渡す。

「ありがとう、ルバーク。」

アルは頭を下げながら言い、矢を収めた。

ヴィドは短剣をズボンに差し込み、長剣を装着する。

短剣一本は俺に返してくれる。

「ダイク君は武器はそれでいいのかしら?」

受け取った短剣ズボンの後ろに差し、「はい!」と返事をする。


こんなことになるなら、もう少し盾を作っておくんだったな。

自分の盾を見ながら後悔した。


「じゃあ、作戦通りにお願いね。」

そう言って、ルバークとアルが移動を始める。

残ったのは、俺とロゼ、シラクモとヴィドだ。

このメンバーで、雑木林にいるのオークたちの相手をする。

ルバークたちは、村人たちの捜索と救出の役目を負ってくれている。

緊張でミスをしないように、深呼吸をした。

すると、背中に手が添えられているのを感じる。

「大丈夫だ。」とヴィドが声をかけてくれた。


「ダイク兄、ルバークさんたちあいずしてるよ!」

ロゼにそう言われ、ルバークの方を確認すると、合図していた。

「じゃあ、始めます。シラクモは合図するまでフードの中で隠れてて。」

ロゼの手を握って、もう一度深呼吸をする。


バッと立ち上がり、オークたちに向けて俺とロゼで声を出す。

「「おーーーい!」」

オークが俺たちに気がつき、重たい足取りで向かってくる。

ロゼを背中に隠し、オークたちが近づくのを待つ。

「ヴィドさん、いいですか?」

ヴィドが目を伏せたのを確認して、ローブの端で顔を隠し魔法を放つ。


辺りに鋭い閃光が放たれた。

ローブ越しにも眩しさを感じる。

「ブフォォオオー!!」とオークたちの叫び声が聞こえてくる。

光が止んだのを確認して、顔を出す。

オークたちが立ち止まって、声をあげながら手で顔を覆っていた。


「ヴィドさん、ロゼ、シラクモ、行くよ!」

シラクモが頭の上に出てきたのを感じ、オークたちに向かって走り出す。

顔をおさえて棍棒を振り回しているオークもいるが、当たらない距離にまで近づいて次々に魔法を放っていく。

オークは為す術なく、俺の土魔法が作る穴へと落ちていく。

体が半分ほど埋まるくらいに穴を掘っている。

後ろから来る、ヴィドとロゼが止めを刺してくれる。


オークの目が回復するまでに、見える範囲にいたオークを穴に落とすことができた。

シラクモも俺の頭から跳んで、オークを始末してくれている。

ヴィドは怒りを込めて、力尽くで頭に剣を振るっている。

ロゼはオークに近づいて素早く剣をいだ。

すると、オークの頭がコロンと転がった。


ロゼの剣の上達があまりにも・・・。

いや、今は止めておこう。

俺も風魔法を使って、オークに止めを刺していく。


オークを倒し終えたころ、「キャーッ!」と悲鳴が聞こえてきた。

ヴィドはそれを聞いて、走り出してしまった。

もしかしたら、ヴィドの妹の声だったのかもしれない。

声がした方を見てみるが、オークの姿は見えない。

あちらにも、俺たちが見えていない可能性がある。

そう考えてヴィドを追わずに、別の方向から回り込むようにロゼとシラクモを連れて、隠れながらも素早く向かった。


声がした辺りに着いて、隠れて状況を見てみるが、困惑した。


ルバークとアルが捕らわれた村人を守りながら、複数体のオークと戦っている。

ヴィドは、黒い毛並みの大きなオークの上位個体と対峙している。

鑑定してみると、ジェネラルオークとなっていた。

そのジェネラルオークは左手に棍棒、右手で女性の髪の毛をつかんでいる。

狐の獣人かはわからないが、獣人の女性だった。

別の方向には農具を持った村人が十数人いて、オークと対峙している。


「ロゼ、まずは髪の毛をつかまれている女性を助けるよ。」

隠れながら、ジェネラルオークの背中側の死角に移動する。

ロゼに作戦を伝えて、覚悟を決めた。

「シラクモ、何かあったときはサポート頼むよ。」

ロゼとシラクモを撫でる。

一発勝負だが、やるしかない。


「行こう!」

ロゼと足音に気をつけながら、ジェネラルオークの背中に向けて走る。

ヴィドは気がついてくれて、今までにない雄叫びをあげる。

ジェネラルオークの背中までもう少しというところで、ロゼがこちらを向いて合図した。


高く飛んだロゼの下に入り込み、踏ん張って盾でロゼの足場となる。

重みを感じると、ジェネラルオークの右腕目掛けて、両手で力いっぱい押し出してやった。

クルクルと回転しながらロゼは、一直線に飛んでいく。

回転しながらも、右腕付近で剣を振っているのを確認する。

ジェネラルオークの悲鳴が、雑木林に響き渡る。

あまりの音量に耳を押さえながら、土魔法を発動させる。


ジェネラルオークの左足の下に、大きな穴が開く。

突然、空いた穴に踏ん張りがきかなくなり、バランスを崩して後ろに倒れてくる。

危うく潰されそうになるが、何とか避けられた。

それと同時に、俺を掠めるように棍棒が飛んでいく。

風圧で少しよろめいたが、何とか堪えた。


「ヴィドさん、女性を!!」

ジェネラルオークの体でヴィドは見えないが、声をかける。

右腕は付け根からなくなっている。

ロゼは上手くやったみたいだ。


俺は、ジェネラルに止めを刺すために、頭部付近へ急ぐ。

立ち上がろうとしているが、右腕がなくなったことで手こずっている。

いつもより強いイメージで、風の刃を飛ばす。

地面を抉りながら、大きな風の刃がジェネラルの首をはねる。


それからはあっという間だった。


ジェネラルを失ったオークたちは、統率が取れなくなり、逃げだそうとする個体もあった。

逃げる個体に魔法を飛ばし、倒す。

ルバークの元へ走ると、ロゼが農具を持つ村人たちに加勢しているのが見えた。

ヴィドは女性を抱えている。

ルバークたちに集っているオークも挟み込んで処理する。


こうして、オークの討伐は完了した。


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