第32話 初めての村
投稿予定を誤っており、中途半端な投稿になってしまったことをお詫びします。
2022/11/4 16:50に訂正、更新しました。
目を覚ますと、荷車は止まっていた。
ロゼはまだ、俺の腕の中で眠っている。
辺りを見回すと、街道から外れた場所にいるみたいだ。
ルバークたちがロデオの側で、何か作業をしていた。
ロゼを起こさないように、静かに寝かせて荷車から降りる。
まだ夕暮れ前くらいだろうか、と体を伸ばしながら空を見て思った。
「あら、ダイク君。起きた?今日はここで野営をするわよ。」
ルバークと獣人たちが、それぞれに長い棒を地面に突き刺している。
「すいません、寝ちゃって。手伝います。」
ルバークから棒を受け取り、指示された場所に突き刺していく。
先端をしならせて一か所にまとめ、アルがロープで縛ってテントの骨組みが完成した。
ルバークと布を骨組みに巻いているうちに、ヴィドがロゼを抱えてテントに寝かせてくれる。
「まずは、おいらとロゼ、ルバークが休ませてもらうよ。」
アルはそう言って、テントに入っていく。
もう既に、休む順番まで決まっていた。
「この中に食べ物が入っているわ。お腹がすいたら食べてね。」
マジックバックから木箱と薪を用意して、ルバークもいなくなる。
ヴィドがテントから一メートルほどの場所に、枯葉を敷いて薪を組み始めた。
鞄から火の魔石を取り出し、枯葉に火をつける。
じわじわと燃え広がり、薪にも火がつきはじめる。
ヴィドは寡黙な人である。
ずっとたき火を黙って見ている。
若干の気まずい空気を感じて、木箱を確認することにした。
中には、パンと鍋にスープ、食器が入っている。
「スープを温めてもいいですか?」
ヴィドは何も言わずに、たき火に鍋を置くスペースを作ってくれる。
スープが温まるまで、シラクモを呼び、撫でて過ごす。
お昼も食べていないので、お腹がすいている。
「お前たちのことはルバークから聞いた。大変だったな。」と、ヴィドがぼそりと言う。
何を聞いたのかが分からないので、曖昧な返事をした。
温まったスープを分けて、ヴィドにパンと一緒に渡す。
自分とシラクモの分も器に入れて、少し早いが夕食となった。
空はだんだんと日が落ち、暗くなっていく。
ボーっとたき火を見つめて、シラクモを撫でて過ごす。
ヴィドはずっとたき火の世話をしている。
ロデオもテントの脇で眠っている。
突然、ヴィドが短剣二本を俺に差し出してくる。
「助かった。」
ヴィドの表情が少し柔らかい気がした。
「ヴィドさんたちの村に帰るまで持っててください。これからも何があるかわかりませんからね。」
そう言うと、ヴィドが笑っているようにも見えた。
そこからは、ヴィドとの会話が増えた。
妹がいることや、妹が妊娠していること。
狩りは妹のためだったのかもしれない。
夜も更けて、ルバークたちと交代になる。
ロゼは結局あれからずっと寝ていたが、まだ眠そうにしている。
ロゼの頭を撫でてから、テントに入る。
中は広くはないが、ヴィドと並んで横になり、目を閉じた。
昼寝をしたのに、しっかりと休むことができた。
隣のヴィドの起き上がる気配で目を覚ます。
「おはようございます。ヴィドさん。」
「おはよう。」
挨拶を交わして、テントを出る。
まだ暗いが、向こうの空が白んできている。
「おはよう、休めたかしら?朝食を食べて出発するわよ。」
みんなと挨拶を交わして、朝食を食べた。
俺とロゼで、テントの片づけを。
ルバークは、ロデオの準備。
ヴィドとアルは、たき火の後始末。
それぞれに作業をして、終わると荷車に再び乗り込み、出発する。
出発するころには、辺りが見渡せるくらいに明るくなっていた。
「このまま何もなければ、昼過ぎには着けそうね。」
ルバークは俺たちに到着予定を伝えてくれる。
荷車が動き出し、少し進むと街道に戻る。
ロデオの進む足も早まる。
日が高く昇った頃、街道沿いに大きな川が見えてくる。
街道には支流もあるが、橋を架けられていて問題なく進んでいる。
「この先に、分帰路があるけど、どっちだったかしら?」
アルの方を見て、言う。
「おいら達の村はこっちだ。もう少しで村だぞ!」
右方向に指示を出し、進んでいく。
遠くの方に畑が見え始める。
「もう少しだ!」
アルが身を乗り出して、村の方角を見ている。
「変なにおいがするな・・・。」
ヴィドの鼻がクンクンと動いて、臭いをかいでいる。
警戒しながら、村へと進んでいく。
村に着くと、人はいなかった。
「この匂いは・・・オークだ。」とヴィドが言った。
村の至る所に、オークと思われるものの足跡があった。
足跡の脇には、何かを引きずった跡がどこかへ続いている。
手分けして家の中に残っている人がいないかを探す。
しかし、誰もいなかった。
ヴィドとアルは足跡を追って、村の奥の方へと進んでいく。
俺たちも、辺りを警戒しながら獣人たちを追っていく。
「向こうの林に続いているな・・・。」
アルが見つめる先に、森と呼ぶには小さな雑木林が広がっている。
「あそこにオークが住み着いているんですか?」
「いや、今までは何もいなかった。いないから、ダイクたちが住んでいる森まで狩りに出たんだ。もしかすると、おいらたちの臭いを追って、村まで来ちまったのかもしれないな・・・。」
アルが後悔するような顔で答えてくれる。
ヴィドの顔も、暗い。
「まだ、攫われて時間が経ってないと思います。」
俺たちが入った家の中に、まだ温かいスープが放置されていた。
そのことを丁寧に説明する。
ヴィドとアルも少しは希望が持てただろうか。
「わたしも手伝うわ。急ぎましょう!二人はどうする?」
ルバークにそう言われ、ロゼを見ると、「もちろん行くよ!」と返ってきた。
もちろん俺も行く。
ルバークの目を見て、コクリと頷いた。
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