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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
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第30話 村へ向けて出発

体が揺れている。

遠くの方から聞こえてくる声が、だんだんと大きく聞こえてくる。

「ダイク君、起きて!」

ルバークの声で目を覚ます。

ボーっとしながら辺りを見回すと、ロゼとシラクモはもう起きていた。

「・・・おはようございます。もう朝ですか?」

優しく光る魔石を見やりながら、問いかける。

「もう少しで日が昇るわ。早くに起こして悪いけど、準備をしてね。」

俺の頭を撫でて、ルバークは部屋を出ていった。


「ダイク兄、もう起きた?かお洗いにいこうよ!」

ロゼはいつもより早起きで、元気だ。

部屋を出て階段を下ると、ヴィドとアルが準備万端でこちらを見ている。

「おはようございます。ヴィドさん、アルさん。」

二人が見えるとロゼは俺の後ろにサッと隠れる。

「おはよう。二人とも。朝早くからおいらたちに付き合わせて悪いね。」

アルが返事をくれる。

ヴィドは軽く手を挙げて応えている。

「いえ、俺たちも楽しみなので、気にしないでください。急いで準備するので、もう少し待ってください。」

アルは「はいよ。」と笑顔で手をひらひらと振っている。


ヴィドとアル越しに、窓が見えた。

ルバークの言う通り、まだ真っ暗だった。


急いで準備を進める。

洗面所で顔を洗って、装備品をつけていく。

今日は久しぶりに、肩掛けの小さな鞄も持っていく。

準備を終えると、ルバークが階段を下ってくる。

久しぶりにヘアバンドをしている姿を見た。


「二人とも、これを着ていきなさい。」

ルバークは手に持っているローブを差し出してくる。

受け取り、鞄を掛けたまま着て、首元のボタンを留める。

ロゼは着方に苦戦しているので、着せてあげた。

シラクモは俺の体を登って、フードの中に姿を隠した。


壁にかかったローブを着ながら、「行くわよ!」と裏庭へと靴を持って進んでいく。

俺たち四人も靴を持ってルバークを追いかける。

裏庭に出ると、すでにロデオが荷車を装着していた。

ロゼは駆け出して、ロデオを撫でながら何か話しかけている。

ロデオはちらりとロゼを見て、撫でられながらも正面の一点を見つめている。

塩対応が過ぎないか・・・ロデオよ。


「さぁ、乗って二人とも。出発するわよ。」

荷車の御者台からルバークが声をかけてくる。

すでに獣人の二人も乗り込んでいる。

ロゼを持ち上げて乗せようとすると、ヴィドが荷車の上から引き上げてくれる。

「ヴィドさん、ありがとう!」

ロゼが感謝の気持ちを伝えると、俺の手も取り、荷車に引っ張り上げてくれた。

「ありがとうございます、ヴィドさん。」

ヴィドは「ウム」と小さく返事をしてくれた。


ルバークは笑いながら、全員が乗り込んだのを確認すると、ロデオを走らせる。

年に何度か乗るだけだと言っていたが、荷車道がロデオの先に続いている。

道はあるが、整備されているわけではないので、揺れが激しく、お尻が痛い。

ロゼも早々に痛みに耐えきれずに、俺の胡坐あぐらの上に乗ってくる。

こんなことなら荷車の車輪をゴムで覆ったり、クッションを作ったりしておくんだったと後悔した。


「二人はこれに乗るのは初めてなのかな?」

アルが少し笑いながら話しかけてくる。

「はい・・・こんなに激しく揺れるんですね。お二人は大丈夫なんですか?」

ヴィドは何も言わずに、コクリと頷いている。

「おいらは尻にこぶがあるから、大丈夫。ヴィドは尾っぽを丸めてそこに座るんだ。」

アルはヴィドのズボンを捲り、尻尾を引っ張り出して見せてくれる。

ヴィドの反応はないが、少しムッとした顔をしているかもしれない。


「へ~、ヴィドさんはしっぽがあるんだ!」

ロゼは驚きながらも尻尾を凝視している。

ヴィドはフサフサとして触り心地よさそうな尻尾を、ズボンの中に収めてしまう。

「なんでズボンの中にしまっているんですか?」

そう聞くと、アルが再び、ヴィドのズボンを捲った。

「こいつはここが弱いんだ。」

そう言って、尻尾をギュッと握った。


ヴィドは「ウグッ」と小さな声をあげ、全身の毛が逆立たせながらアルの手首を掴む。

「いたたた、わ、悪かったよ。」

狭い荷車の上で、転がりながら痛がり謝っている。

握られていた手首を擦りながら座り直し、こちらにニコッと笑いかける。

「ロゼ君、俺の上に来るかい?」

胡坐の上をたたきながらアルがそう言う。

「ボクにはダイク兄がいるから大丈夫。」と素っ気ない返事があった。

アルはあからさまに悲しそうな顔をしているので、俺たちは笑った。


「あなた達、楽しそうなところ悪いけど、朝食にしましょう。」

ルバークも話を聞いていたのか、笑顔でそう言った。

気がつけば、すっかりと日が昇って明るく温かい日差しが降り注いでいる。

ルバークのマジックバックから取り出される唐揚げサンドとコップがヴィド経由で配られる。

「ダイク君は水筒をお願いね。」

そう言われ、鞄の中から水筒を取り出し、コップに水を注ぐ。


実際には鞄は空っぽで、アイテムボックスから取り出している。

昨晩の風呂で、ルバークと約束をした。

ルバーク以外、魔法はなるべく使わないと。

不用意に二人の前で唐揚げを取り出してしまったが、俺がキッチンの方を向いていて、獣人たちには背中しか見えてないだろうとルバークは言っていた。

信用はしていても、手の内は隠しておくようにと。


ヴィドとアルを見ると、美味しそうに唐揚げサンドを頬張っている。

悪い人じゃないのは、間違いないなさそうだ。

俺たちにも、明るく接してくれている。

ロゼも少しずつではあるが、獣人たちに慣れつつある。

マザーの縄張りを出るまで、二人の村の話を聞いて過ごした。


ゆっくりとロデオは走り、進んでいく。


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