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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
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第29話 来訪者

家の中に入ると、すでにルバークは人数分のお茶を用意していた。

ルバークと一緒にやってきた二人は、落ち着かない様子で、家の中をキョロキョロと見ている。

ロゼは俺の後ろに隠れながら、二人の様子を伺っていた。


「あのー、そちらの椅子に座って待っていてください。ルバークさん、裏庭から椅子を持ってきてもいいですか?人数分ありません。」

ダイニングテーブルには椅子四脚しかなく、一つ足りない。

「ありがとう、ダイク君。椅子はあるわ。お昼ごはんはもう食べたの?」

マジックバックから椅子が取り出され、置かれた。

ルバークは二人を促して、椅子に座らせる。


「お昼はまだです。ルバークさんたちもまだですか?なら、パンとスープをお願いします。」

ルバークはキッチンで、パンとスープを出してくれる。

スープを温めている間に、パンに切り込みを入れて、揚げたての唐揚げを挟む。

ロゼも手伝ってくれて、すぐに昼食の用意が整った。


俺たちはいつもの席に着く。

向かいには、お客さんの二人が座って、ルバークは所謂いわゆる誕生日席に座っている。

シラクモには、俺とロゼの間に食事が用意されている。

「パンに・・・何が挟んであるのかしら?」

「ホロホロ鳥の唐揚げです。さっき作りました。」

「そう・・・二人ともありがとうね。まずは、温かいうちに食べましょう。紹介はあとね。」

サクッと名前だけでも紹介してくれれば・・・と思ったが、黙っておく。

俺自身、自己紹介するタイミングを逃したしね。


「「「いただきます!」」」

お客さんの二人は挨拶に面食らったような顔をしている。


そんな二人はさておき、パンに嚙り付く。

しっとりとした唐揚げから、肉汁があふれてくる。

ロゼとルバークも美味しそうな顔を浮かべて食べてくれている。

「これ、美味しいわね。二人も遠慮しないで食べてちょうだい。」

パンを食べたルバークが、二人にも「美味しいわよ。」と促すと、食べ始める。

一口食べて、美味しいのがわかったのか、がっつく様に食べている。


食後、テーブルの上はルバークの入れたお茶のみがそれぞれに置かれている。


ルバークは一口お茶を飲んで、話し出す。

「遅くなったわね、紹介するわ。こちらがダイク君と弟のロゼ君。こちらが・・・そういえば名前を聞いてなかったわね。二人とも聞いてもいいかしら。」

おそらく、この森に入れているので、悪い人じゃないんだろう。

そう思いながら、二人の自己紹介を待った。


「私はヴィド。こっちはアル。」

ヴィドと名乗る獣人が素っ気なく言う。

ヴィドはキツネのような顔立ちで、アルはサルだろうか?

鑑定してみると、種族名が狐人と猿人となっていた。

ヴィドは全身が長めの黄金色と白色の毛で覆われ、アルは顔以外が短い茶色い毛で覆われている。

アルは少し手が長い気もするが、毛が多い以外は人と変わりはあまりなさそうだ。


鑑定しながらいろいろと考えていると、アルがヴィドを小突いた。

「愛想悪いぞ、ヴィド。ダイクとロゼだったね?初めまして。おいらはアル。よろしく!」

「初めまして、ダイクです。こちらこそ、よろしくお願いします。」

モジモジしているロゼの背中をそっと触ると、ロゼも挨拶をする。

「はじめまして、ロゼです。」


挨拶が終わると、変な緊張感が漂って、みんなお茶を啜る。

お茶を飲み干すと、ルバークは二人を連れて階段を上がっていった。

今日は泊っていくんだろう。

「ロゼ、大丈夫?緊張でもした?」

隣に座って静かなロゼに声をかける。

「うん、だいじょうぶ。わるい人じゃないんでしょ。」

「大丈夫だよ、きっと。」

そう言って、ロゼの手を握った。


暫くすると、ルバークのみが階段を下りてきて、いつもの席に座った。

顔の前で手を合わせながら、ルバークが言う。

「突然、連れてきてビックリしたわよね。ごめんなさいね。」

「いえ、獣人の方を初めて見たので・・・。お二人はもう休んでいるんですか?」

ルバークはコクリと頷く。

「どこに行ってたの?ルバークさん。しんぱいしたんだからね!」

ロゼが少し怒った表情をしている。


「マザーから連絡があってね。こんなに時間がかかるなんて思わなかったの。ごめんなさい。」

二人は近くの村から狩りに出かけ、森の中を何日か彷徨っていたらしい。

そこにオークっていう魔獣に襲われ、鬼蜘蛛の森に逃げてきたみたいだ。

マザーから連絡でルバークが駆け付け、今日は泊っていくらしい。

「狩りをしていたなら、なんで何も持っていないんですか?」

ヴィドとアルは何も持っていなかった。

武器も、狩った獲物も。


「だから、この森に入ることができたんだと思うの。二人が言うには、オークと戦った時に倒せないこと判断をしたときに捨てたみたい。少しでも早く走るためにね。」

俺だったら、武器を捨てるだろうか。

獲物は理解できるが、武器を捨てて逃げ切れたとしても、逃げた先に魔獣がいないとも限らない。

考えれば考えるほどに、悪い方向に考えてしまう。


「どうしたの、ダイク君?そんなに考え込んで。大丈夫よ!マザーが許可したんだから。」

俺の顔を覗き込みながら、明るい声でルバークはそう言い切った。

武器を捨てるのは変だと口から出かけるが飲み込んだ。

自分の目で二人を見極めようと、心に誓った。

「わかりました。ルバークさんがそう言うなら、俺は構いません。」

「ボクも!」

ロゼの一声で少し気が抜けて、笑った。


「それでね、明日になったら二人を送っていこうと思うの。ロデオに乗ってね。」

どのくらいルバークがいないのかなぁと思っていると、ロゼが「ボクも!」と言い出した。

「そうよ、二人も一緒に行きましょう。」

そんな感じで、初めての外出が決まった。


明日は早くに出発するため、先に風呂にゆっくりと浸かった。

風呂から出ると、パンに唐揚げを挟んで、明日の移動中に食べられるように準備もした。

夕食の時間になっても、獣人の二人は下りてこなかった。

ルバークは「疲れているのよ。」と言って、呼ぶことなく三人と一匹で食べた。


食後、片づけをしてそれぞれの部屋に戻った。

いつもより早いが、ベッドに入ると眠気が襲ってくる。

獣人たちのことが気になりつつも、欲望のままに目を閉じた。


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