第2話 ダイクとロゼ
少年の名前はダイク。五歳。一つ年下の弟がいる。
親に二歳の時に弟と一緒に孤児院に捨てられ、四歳で森に捨てられたようだ。
親に捨てられた記憶はほとんど無いが、孤児院では散々な扱いだった。
一日中、掃除や洗濯、食事の用意などの雑用を押し付けられていた。
食事も僅かなものしか与えられずに、日に日に弱っていった。
使い物にならなくなったからか、荷車で森に運ばれ捨てられたのだ。
あまりのダイクの経験に涙が流れていた。
自分の中にダイクの記憶と感情が溶けて入ってくるようだった。
森での生活は楽しかった。
初めて見るもので溢れていた。
ひどいことをする大人がいない、二人だけの時間が。
木の根の隙間を家にして果物やきのこを採り、兎のような獣を狩り、川で遊んだ。
家の中には小さな蜘蛛がいて、ペットのように可愛がっていた。
暖かい気候のうちはよかった。
ひと月前くらいから風が冷たくなり、食べ物が見当たらなくなった。
少し歩けば何かしらの食べ物があったのに、見当たらなくなったのだ。
獣も見なくなり、保存していた食べ物もあっという間に無くなった。
元々痩せ細っていた体からさらに肉が失われ、弟が起き上がれなくなってしまったのだ。
食べ物を探して狼に・・・という数年間の記憶が流れ込んできた。
左手首を確認するが、傷はきれいに無くなっていて、握ったり捻ったりしても痛みはない。
弟も痩せてはいるが、顔もふっくらとして赤みを帯びている。
木の洞から出てきたきのこは特別なものだったのかもしれない。
「ダイク兄・・・」
フラッとよろめきながら起き上がるロゼを支えるように抱きしめた。
「ロゼッッッ!ロゼ、体は平気なのか?痛いところはないか?」
涙と鼻水でグシャグシャになりながら問いかける。
「うんっ、だいじょうぶだよ!もう起きてもへいきみたい!すごくげんきになったよ!」
「そうか・・・よかった・・・本当に良かった・・・」
大沢工治の中にダイクがちゃんといて、これらの行動は心からくるもので体が勝手に動いていた。
病み上がりのロゼを座らせ、これからのことを考える。
例え夢だったとしても、この兄弟には幸せになってほしい。
ダイクになったのだから、自身とロゼを幸せにしようと決心した。
「ロゼ、これから二人で幸せになろうな。」
「うん、ボクはダイク兄がいるだけでしあわせだよ!?」
「ありがとう。俺もだよ。でも、今まで以上にもっと幸せになるんだよ!」
「じゃあ、ボクがダイク兄をもっともっとも~~っとしあわせにしてあげるね!」
終わりのない会話を楽しんだ。
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