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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
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第25話 絶体絶命

ルバークは、走りながら風の刃を放って多くのウルフを屍にした。

しかし、倒しても倒しても、ウルフが集まってくる。

俺とロゼも、近づいてくるウルフをそれぞれ倒しながら走った。


ルバークが走るのをやめた時には、すでに二十匹近いウルフが俺たちを囲んでいた。

囲まれた時の対処法も、ルバークから聞いていたので実践する。

それは三人が背中合わせになって、目の前の敵を倒すというシンプルなものだった。


走ったからなのか、心臓の音がとても速いのがわかる。

「二人とも、持ちこたえてちょうだい。こっちが終わり次第、すぐに行くわ。」

ルバークがそう言うと、ウルフたちが一斉に襲いかかってきた。


俺の目の前には十匹近くのウルフがいる。

俺が一番多いのか・・・と思いつつ、魔法を発動した。

前方の土がメリメリと音を立てて、なくなって大きく深い穴ができる。

目の前にいたウルフたちは為す術なく転がりながら落ちていく。

そこにアイテムボックスから、元々露天風呂にあった岩をこれでもかと積み上げる。

岩を避けて、穴を這い出てくるウルフもいたが、風の刃で止めをさした。


ちらりと二人の方を見ると、ルバークはすでに倒し終わっていて、周囲を警戒しながらロゼの訓練のようになっていた。

辺りにはウルフだったものが沢山転がっている。

ウルフはロゼに噛みついたり、爪で引っ掻いたりしているが、ロゼは小さく躱しながら最後の一撃食らわせてた。


「二人とも、よかったわ。怪我はないかしら?」

早々にウルフを倒して、俺たちのことを見ていたかの口ぶりだった。

「だいじょうぶだよ!」

「大丈夫です。ウルフの回収をするので、二人は休憩していてください。」

そう言って、ルバークとロゼが倒したウルフを回収しに向かう。


ロゼが戦っていたウルフは、体の一部が別の場所にある個体が多かった。

剣の扱いがそれほど上手いし、毎日の訓練でメキメキと成長を続けている。

ルバークの倒したウルフは、傷のない個体が多い。

なんでだろう・・・窒息でもしたのかな?

後で、ルバークに聞いてみよう。


最後に、俺が戦っていた場所に行き、岩を回収しようとする。

その時、岩の陰から物凄い形相のウルフが涎を垂らしながら、大きく口を開けて俺の向かって跳びかかってきた。

「あっ・・・やばい・・・・・・。」

瞬間、世界がゆっくり動き出した。

そう感じでいるだけかもしれないが、すべてがスローモーションのようだった。


「ダ イ ク く ん ! !」「ダ イ ク 兄 ぃ ぃ ぃ ! ! !」

ルバークとロゼの叫び声が聞こえるが、スローで聞こえるので少し可笑しい。

ドクンドクンと心臓の鼓動がようやくゆっくりになっている。

いや、スローに聞こえているとすれば、変わらないのかもしれない。


その間も、ウルフはゆっくりと近づいてきている。

殺意のこもったウルフの目を見ていると、目の前が真っ白になった。

頭の中で、初めてウルフに襲われた時の記憶が走馬灯のようにフラッシュバックする。

毛穴から大量の汗が出て、たらりと背中に流れているのを感じた。

ウルフの攻撃を防ごうと、盾を前に出そうとするが、腕が動かない。

体が自分の体じゃないみたいにピクリとも動かない。

魔法も発動しないみたいだ。

そうか・・・・・・俺は死を覚悟して、目を閉じた。


すると、瞼の裏に差し込む光に影ができる。

なんだ?と思って目を開けると、頭の上にいたシラクモが顔の位置に下りてきていた。

シラクモはウルフの方に跳ねて、前足を大きくあげていた。

前足を素早く一振りすると、ウルフの頭がポーンと飛んでいった。

頭を失ったウルフの体は、勢い余って俺の方に飛んでくる。


体が動かないので、受け止めることも避けることもできずに、ぶつかるとボウリングのピンのようにパタリと後ろに倒れた。

倒れたのをきっかけになのか、時間の感覚は元に戻っていた。

心臓がバクバクと音を立てて早く動いている。


「ダイク君、大丈夫!?」「大丈夫、ダイク兄!?」

ルバークとロゼが駆け寄ってきてくれる。

二人とも、顔色が悪い。

「ハハハ、死ぬかと思った・・・。」

乾いた笑いがこみ上げてきた。

目元は涙なのか汗なのかは分からないが、濡れていた。


起き上がろうと手を動かすと、動けるようになっていた。

「痛っっっ。」

体を起こすと右肘にズキンと痛みが走り、顔をしかめながら見てみると切れて血が流れていた。

「怪我をしているわね。今洗い流すわ。」と水魔法を使って、きれいにしてくれる。

ロゼの方を向くと、心配そうな顔でこちらを見ている。

「大丈夫だよ。ロゼ。」

ロゼの頭を撫でる手の震えは、まだ止まっていなかった。


ロゼの頭を撫でていると、シラクモが怪我をしている手の近くに歩いてきた。

胴体がモゾモゾと動いているなと思うと、足が二本増えていた。

六本足だと思っていたが、八本足だったのだ。

増えたのは前から二列目の足で、その足を高くあげている。

猫耳のようだと思っていたものの先端が広がり、四本の角になっている。

俺はそんなシラクモの変化に目が離せなかった。


すると、シラクモが一瞬淡く光った。


驚きのあまり、痛みはすでにどこかへいってしまった。

「ありがとう、シラクモ君。ダイク君、痛みはどうかしら?」

「シラクモの新事実で痛みは忘れてました。・・・あれ、痛くない。」

怪我をしてる肘を見ると、きれいに治っていた。

ルバークもシラクモにお礼を言っていたし、シラクモが回復魔法を使ってくれたのだろう。


「シラクモ、ありがとう。さっきのウルフも、回復魔法も。本当にありがとう。」

怪我をしていた手で、元の姿に戻ったシラクモを撫でた。


起き上がろうとすると、背中に柔らかいものが当たる。

ルバークが背後から抱きしめてきた。

「ごめんなさい、ダイク君。危険な目に合わせてしまって。」

少し泣きそうな声で謝罪されると、ロゼも前から抱きついてくる。

「ダイク兄、ぶじでよかった・・・。」

ロゼは泣きながらそう言った。

俺も泣きそうだったが、上を向いて耐えた。

今は、ここを離れることが優先だ。


「ルバークさん、ロゼも泣き止んで。今は湖へ急ぎましょう。また囲まれると面倒ですしね。」

少し嫌な言い方だっただろうか。

だが、正直に言うと今日はもうウルフの顔を見たくなかった。

ルバークとロゼが離れると、ササっと岩と残りのウルフを回収した。

両脇には、ロゼとシラクモが警戒しながらついてきてくれた。


「ルバークさん、回収し終わりました。湖まで先導お願いします。」

ルバークは頷くと、走り出し、俺とロゼも続いた。


それからはウルフに出会うことなく、湖に辿り着いた。

先を行ってたルバークがマジックバックから取り出した小さな船に乗り込み、逃げるように湖の上にでる。


「ふぅー、今日は疲れたわね。急いで帰りましょう。」

明るい感じで言っているが、何だかぎこちない。

「ルバークさん、ロゼとシラクモも。今日は色々とすいませんでした。」

ルバークとロゼが何か言おうとしたが、手で遮って続ける。

「詰めの甘さがでましたね・・・。気を付けるので、これからもお願いします。」

前世でも上司に散々言われてきた。

お前は詰めが甘いと。


ダメだ、これ以上考えると自分が嫌いになりそうだ。


隣のロゼがギュッと手を握ってくれた。

手の震えは止まっていた。


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