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転生したら森の中でした。  作者: コウ
第二章 ダイク 六歳
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第22話 森の探索と前の家

数日経つと、雪も融けてドアが開くようになった。

靴を履いて森に出てみると、ところどころ雪は残っているが、泥濘ぬかるみを避ければ十分に出歩けそうだ。

「やっと外にでられたね。ボクたちの家はどうなっちゃったかな?」

「そうだね、一度見に行っていいかルバークさんに聞いてみよっか。」

ロゼの頭を撫でながら、ルバークに聞くと「いいわよ。」と返事があった。


朝食を食べて、家を出る準備をする。

水筒に温かいお茶を詰めて、短剣をズボンの後ろに差して左腕に丸盾を装着する。


この盾はシラクモと作ったものだ。

水に溶かす糸の量を多くすることで、プラスチックのような硬さになることがわかった。

ゴムとプラスチックの間くらいの配合で中華鍋に流し込み、作ったのが丸盾だ。

裏側にはゴムを二本接着して、腕に固定できるようにした。

硬さがありつつ、ゴムの柔らかさもあるので衝撃を吸収してくれる。

メキメキと剣の腕をあげているロゼの一撃をも吸収してくれるので、愛用していた。


「ダイク兄、じゅんびできたよ!」

ロゼも同じような格好をしていた。

違いは腰にベルトで木刀を差しているくらいかな。

「よし、行こうか。ルバークさんは本当にいいんですか?」

「今日は止めておくわ。シラクモ君、二人のことをお願いね。」

シラクモが前足をあげて、激しくうなずいている。


ルバークは夜遅くまで魔道具を作っているみたいで、くまができていた。

何を作っているのかは教えてくれなかったが、今日も忙しいみたいだ。


「じゃあ、ルバークさん、行ってきます。少しは休んでくださいね。」

「いってきます!!」

元気な返事にルバークはひらひらと手を振って答えた。


ドアを閉め、二人でマザーの鎮座する木に向かって歩き出す。

泥濘を避けながら、雪の重みで折れた枝をアイテムボックスに回収しながら向かった。

シラクモもロゼの頭を離れて、枝の回収を手伝ってくれている。

雪が融けたばっかりなのに、花はすでにつぼみを膨らませていた。


足元が悪いので、思った以上に時間がかかって家に辿り着いた。

入口に作った屋根は、雪の重みに耐えられなかったのか、崩れてしまっていた。

家と呼んでいた隙間にも雪が、まだ残っていた。


屋根の残骸をアイテムボックスにしまって、ロゼに声をかける。

「ロゼ、少し休憩しようか。」

張り出た木の根に腰をかけて、ロゼを隣に座らせる。

アイテムボックスから水筒を取り出し、ロゼに渡す。

「熱いかもしれないから気をつけて飲むんだよ。」

コクリと頷いで、ちょびちょび飲みだした。

ひまわりの種がのったクッキーも取り出し、ロゼとシラクモに手渡すと、黙って食べだした。


ロゼは今の家を出てからずっと黙っていた。

初めての安心できる居場所がどうなっているのか心配もあったのかな。

家の現状に何か思うところがあったのかもしれない。


「ダイク兄、家にありがとうしたいんだけど・・・。」

ロゼが沈黙を破って、言葉を口にした。

「じゃあ、家の中の雪を外に出してもらえる?俺は裏のトイレを埋めてくるよ。」

ロゼは笑顔で「うん!」と答えてくれる。

俺は、家の裏側の木の隙間に、穴を掘って使ってたトイレに向かう。

雪は入り込んでおらず、穴が開いていた。

浄化クリーンを使って内部をきれいに清掃して、土魔法で穴を埋めた。


ロゼの元に戻ると、ちょうど作業を終えたようだ。

「終わったみたいだね。手を洗おうか。」

魔法で空中に水の玉を浮かばせる。

ロゼの手が冷たいだろうと、温度もお風呂くらいに温めてやる。

俺が手を入れると、ロゼもならって手を洗いだした。


「ロゼ、葉っぱを一枚取ってきてくれるかな?」

ロゼは頷くと、近くの木に向かって走り出した。

俺はアイテムボックスから岩を取り出す。

腰くらいの高さがあり、上面は平らでちょうどよかった。

「これでいい?」とロゼが葉っぱをくれるので、その上にクッキーをのせて、岩の上に置く。

「これはなんなの、ダイク兄?」

「お供え物だよ。この木の上にはシラクモのお母さんがいるって、ルバークさんが言ってたのを覚えてる?」

「覚えてるよ!ここからは見えないけど、おっきいクモだって言ってたね。」

「うん。だから、この木に住ませてくれてありがとうっていうのと、この木にもありがとうって気持ちを込めて、食べ物やお水をあげるんだ。」

そう言って、土魔法でコップを作って、水筒から水を注ぎ、クッキーの隣に置く。


「こうやって、手を合わせて目を瞑って心の中で感謝の気持ちを伝えるんだ。」

実際にやってみせてやる。

ロゼもそれに倣ってやってくれた。

目を開けたロゼは、少し晴れやかな顔をしていた。


「また来て、お供え物をしよう。」とロゼの頭を撫でた。

ロゼの頭を撫でるとき、シラクモは肩に移動している。

そのシラクモが、岩の上に飛んでクッキーを前足で抱えて木を登って行ってしまった。

あまりの素早い行動に、はじめはポカンとした顔でシラクモを目で追った。

姿が見えなくなるとロゼと目が合って、笑った。

マザーの元に届けてくれたんだろう。


しばらく待っていると、シラクモが木の上から飛んできた。

呆気にとられて眺めていると、俺の顔の上にシュパッと重みもなく降り立った。

ロゼはそれを見て、大爆笑していた。

シラクモに思うところはあったが、ロゼが笑ってくれるならいいか。


シラクモがロゼの頭の上という定位置に戻ったところで、俺たちはルバークの待つ家に向かって歩き始めた。

来た道とは少し離れた道を選んで、落ちている枝を拾いながら帰った。


思った以上に時間はかかったが、夕方には家に着いた。

「おかえりなさい、二人とも。」

優しい声でルバークが迎えてくれた。


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